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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第3章
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リアス&のばら&ミチル

 ミアと雅秋の後ろ姿を遣る瀬無く見つめるリアスに、後ろからのばらが声をかけた。


「‥‥‥座家くん。私、座家くんの気持ちはすごくわかっているわ。」


「のばらさん‥‥‥‥‥。」



 リアスにとってのばらはリアスの気持ちを理解してくれる救いの女神だ。

 リアスはリアスがミアへの想いを封じ込めたと同様に、のばらは雅秋への想いを秘め殺しているのだと勘違いしている。



「だからいいのよ、そのままで!!」


 のばらが後ろから力強くリアスの両肩をバシッと叩いた。


「そのままでいいって‥‥‥‥さっきの演技でOKってこと?」


 リアスがのばらを振り返った。


「そうよ、私は当初の目的はそのためにこの劇を作ったのだから!」


「えっ?そのためって?」


 リアスにはのばらの真意が理解出来ず聞き返した。  


「もち&ろん、思い切り想いを表現するためよ!」


 のばらの目が輝いている。


「ああ、私‥‥‥私だって明日は思い切りやるわよ!座家くんもこのチャンスに

 思いっ切り演じるがいいわ!演じている者以外はこの劇の中では無効無力なのよ。」


 何か、のばらから熱いエナジーが溢れている。


 リアスは、雅秋とのばらが共演する場面は無いのに、のばらが思い切り想いを表現する、というのはどういうことか?とは感じつつも深く考えることはなかった。


「私が甲斐雅秋には文句など言わせはしない。いくら彼氏だからってこのままのうのうとミアちゃんを独り占め出来ると思ったら大間違いだわ。ふふん。」


「ふふん!やっぱそうだよな!さっすがのばらさんだぜ!監督ののばらさんが言うことは絶対だしな!うんうん。」


 のばらの熱いエナジーが早速リアスにも感染し先ほどの切なさも遠ざかった。

 さすが、リアスの救いの女神だ。



 先程からのばらとリアスの様子を見ていた中村が言った。


「よかったな、座家。この『鯉伝説~いにしえの恋』といういわば刹那的パラレルワールドの中でだけは幸せになれるんだから。」


「ちっ、中村!空しいこと言いやがって!」


 リアスが中村の背中に飛びかかった。二人がじゃれているところに廊下のアンケート回収ボックスに紙を回収しに行っていたミチルがほほを蒸気させて戻って来た。



「見て!のばらさん。高評価を得ているよ!」


 嬉しそうにのばらに渡した。


「ほんと?」


 のばらはアンケート用紙を読みながら顔がにやけてしまう。


「きゃあ、ストーリーも、総合評価もほとんどの人が5段階の5に丸をつけてくれているわ!」


 のばらがミチル、リアス、中村を見て言った。


「あら、これには『ヒトミは至高のモブ(ハート)』って書いてあるわよ。こっちのは『ヒトミは8組の秘宝!(ハート)』『ヒトミ非公認かっけー、好きになりそう(ハート)』だって。誰かしらね?」


「ちっ、からかいやがって!きっと砂区グループの仕業だぜ。」


 中村が嫌そうな顔をした。



「ふうん。ヒトミって以外とモテたりするんだ?」


 いつの間にかメイクを落としたマナカが中村の後ろにいた。


「おう!マナカ、さっきの顔はやばかったなー。素顔はこんなにかわいいのに。」


 中村が何気無く言った。



 一拍おいてマナカの顔がみるみる赤く染まった。


「ばっ、ばか!ヒトミったら。そ、そ、そんなの当たり前じゃん。言わなくても知ってるからっ。さあ、行くわよ!2時間半で回れるだけいこうよ。」


 ブカブカの浴衣姿のまま中村を引っ張って連れ去った。


「マナカ、浴衣に染みつけないようにね。明日も使うんだから。」


 中村を後ろ襟でつかみ引きずりながら廊下を遠ざかっていくマナカに戸口からのばらが叫んだ。


 マナカは振り向かずに片手を上げた。



「さあ、私たちはどうしましょう?ミチル、座家くん私と一緒にどう?」


 のばらが二人を見た。


「俺がいたら邪魔だろ?いいよ、俺はその辺でダチ見つけてまざるから。」


 リアスが言った。


「そんなことないよ!ザッカリーがいた方が楽しいよ、僕。一緒に回ろうよ。」


 ミチルが言った。


「そうよ、私の誘いを断るなんておこがましいわよ、座家くん。それに放牧して時間を忘れて遊ばれても困るし。」


 のばらはさすがにのばら様だった。


 結局、リアスとミチルはのばらのしもべのように後ろから二人並んでついていった。


 今日は普段の制服一色とは違い、各クラスで揃えたお揃いのTシャツやらそれぞれの出し物に合わせたコスチュームに身を包んだ生徒がほとんどだったが、その中にいても艶やかな浴衣姿ののばらは目立っていた。


 のばらと共にいるだけで周りの生徒たちからは羨望の眼差しが注がれる。

 中には明らかに敵対視してこそこそ何か言っているグループもいたが、直接何かしてくることはなかったし、のばらも全く意にも介してはしなかった。


 途中で生徒会長の雪村煌とすれ違ったが、のばらはシカトしていた。そんなのばらの顔をちらりと見ながら煌はなぜか忍び笑いをしてすれ違った。


 煌は以前ミアを泣かせたことがある。ミアが言うには人格を貶めるような何かを言ってきたらしい。なので、リアスもミチルものばらと同じくシカトして通りすぎた。



「ねえ、1年1組のムービー見に行こうよ。ちょうど11時から始まるよ。後10分後だよ。ミアと、あとザッカリーも出演(でて)るんだよね?」


ミチルが言った。


「まあ、ミアちゃんがっ!もうっ、そんなのがあったなんて!ミチルったらもっと早くいいなさいよ!早く行くわよっ!」


のばらが焦ったように責め口調でミチルに言った。


「のばらさんがそんなに見たがるなんて思わなかったから。うふふ。」


そんなのばらのわがままぶりにもミチルは余裕の神対応でやり過ごした。


リアスはのばらとミチルの組み合わせには疑問を抱いていたが、意外と相性がよいことに気づいた。


「まあ、そうだよな。ミッくんは俺にとって天使だし、のばらさんは救いの女神だし、いい組み合わせかもな。うん。」


リアスは自分だけに聞こえるほどの声でもごもひとりごとを言った。




3人で新校舎4Fの1年1組まで急いで行った。


教室まで行くと呼び込みの女子が後『あと5人ですよー!』と叫んでいた。


教室に入ると薄暗くなっていたが人の顔は判るくらいだった。


「土方くーん!来てくれたんだー!」


一番後ろの席にのばらを挟んで3人並んで座っていると声をかけられた。


今日は仕事モードで顔を晒した柊也がミチルの後ろから肩を叩いた。


「うん、磯部くん。僕楽しみにしてたんだよ。」


相変わらずの微笑みを浮かべてミチルが言った。


「なんだよ?ミッくん、磯部と友だちだったのか?」


リアスが驚いて聞いた。


「あれ、ザッカリーも磯部くんの友だちだったんだ。」


ミチルも驚いて言った。


「うーん。僕、座家くんとは友だちとは言いかねるけどねー、あははー。」


柊也が振り返ったリアスを見た。


「ってか、この前はお前、散々俺をおちょくりやがって!」


リアスが睨んだ。


「ふふーん。面白かったでしょー?でもあれは門外不出だからー。もう聞かせてあげないよ。じゃあ、僕たちのクラスのムービー楽しんでいってねー!」


柊也は最後の部分はミチルだけに言ってから、スタートの待機をしているルイマのもとへ戻って行った。


「今の子は誰かしら?」


のばらが聞いた。


「僕も最近知り合ったばかりでよくは知らないけど、ちょっと面白そうな人だよ。」


ミチルが答えた。


「あいつ、ガチつむじ曲がりのカオス野郎だぜ。はんっ!」


リアスは先日、柊也にミアのボイスレコーダーの声を使って騙されかけたことを思い出して言った。




「‥‥‥‥そう。こちら側の匂いがするわ‥‥‥あの子。」


のばらがつぶやいた。








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