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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第1章
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配役決定

 木曜日の放課後、錦鯉研究部部室がわりの生物室にはまだ中村とマナカしか来ていなかった。


 中村が昨日から気になっていたマナカのイメチェンについて聞いた。


「ところでさー、なんでまた急にそうなったわけ?夏休みの間に何があったんだよマナカ?まさか‥‥‥‥お前!彼氏とか出来ちゃって、『彼の好みなのぉー』とかいいだすしたりすんのか?」


 中村がニヤニヤしながらマナカに言った。


「うっふっふ。気になるー?」


 マナカが意味深な笑いした。


「私、すっごく素敵な先輩に出会ってしまったのよー!夏休みに。ここの中庭で!」


「‥‥‥なんだよ、ここの生徒なのか?」


「そうよ、この錦鯉研究部の部長だった名波先輩よ。」


「そういえば結局俺見たことなかったな。中庭の鯉に一匹づつ名前つけてるっていう変人だろ?」


「えっ、マジ?それは知らなかったけど‥‥‥‥。私だって、その時一度しか見てないよ。だからもう顔も忘れちゃったんだけどー。」


「なんだよそれ?よくそれで素敵な先輩なんていえたな。」


 中村があきれて言った。


「だって、その時はそう思ったんだもん。でも、今思い出そうとしてもなーんも浮かんでこないのよねぇ‥‥‥‥。」


 マナカは少し上を向いて思案顔になった。再び、思い出そうと試みた。


「うーん、無理。なんも浮かんでこない。でさ、その時に、私は次回名波先輩に会った時はもっといけてる私を見せようって決心しちゃったわけよ。でもさ‥‥‥‥、それ以来全く見かけることもないし、先輩は部活も完全に引退だし、私の恋も始まることなく終わってしまったのよ!くぅー!」


 マナカは両手を握りしめ力んだ。


「なんだ、結局無駄だったのか、それ。」


 中村ははぁーとため息をついた。


「まーね。でもクラスの子たちは私を見て驚いちゃっておもしろかったよ。そのうち誰かにコクられちゃったりしたりしてー!ふっふっふ。」


 マナカはにやけながら結んだ髪をぱさんと手の甲で払った。


「‥‥‥‥ふーん。」



 生物室の後ろ側の戸が開いた。


「はやかったね。ヒトミ、池中さん。」


「こんにちは。中村くん、池中さん。」


 ミチルとミアが揃って現れた。


「きゃー!ミアさん、もうこれから文化祭まで毎日一緒だよー。うっふっふ。のばらさんも入ったし、ヒトミも土方くんもこんな美女が3人もいる部活でよかったねー。」


「はいはい、そうですね。」


 中村が棒読みで言った。




 再び生物室の戸が開いた。


「こんにちは。一年生のみなさん。」


 のばらが来た。



「のばらさんっ!どうぞっ。」


 中村が立ち上がってのばらが座るように座面をさっさと手のひらで払った。


「ヒトミ、ありがとう。あなた、なかなかいいわよ。」


 中村はさっとのばらの横の席をキープした。


「ミチルちゃん、私、シナリオの大まかなものは明日までに用意するわ。で、今日は配役を決めてしまいましょう。そうして衣装も用意できてしまえば予算の組み立てがしやすいわ。それに、私たちは5人しかいないから朗読劇にしようと思うの。だから衣装もセットも最低限で済ませられるわ。」



「はい、そうですね‥‥‥‥僕たちたった5人しかいないから。後、この人数では出演と舞台裏方とゲスコンはむずかしいですね。」



「そうね、やってみないとわからないけど、出演していない時は裏方をして、劇の第1シーンに出ない人がゲスコンすればいいわ。幕が降りたら全員で再びゲスコンするの。5人いれば何とかなるわ。でも忙しくて大変かもしれないわね。もし、誰か手伝ってくださる人が見つかるとそれが一番いいけど。」


 のばらが言った。


「僕、部活に入っていない友達に聞いてみます。」


 ミチルはリアスとルイマに聞いてみようと考えた。彼らはミチルとミアと同じ中学出身の仲のいい友達だ。


「とりあえず必要なキャラは、那津姫、黄金の鯉、蓮津姫、蓮津姫の恋人、後はオリジナルエピソードで付け加える救いの神様くらいでいいわ、ほとんど朗読でいくから。」


 皆の顔を見回して続けた。


「だから、那津姫と鯉の人は、、神様役と、朗読の中の会話シーンの声優もお願いするわ。」


「えっと、これは文化祭第1日目の内部公開の午前中の早めに一回と午後の遅めの時間に1回やろうと思うの。そうすれば真ん中の空いた時間に私たちも文化祭を回って楽しめるわ。2日目の一般公開では午前と午後に2回づつ上演します。」


「さて、希望する役または推薦はあるかしら?」


「はーい!ミアさんは蓮津姫がいいと思いまーす。私はかわいい那津姫やりたーい。」


「いいわよ。じゃあ、私は蓮津姫の恋人役をやりたいわ。ミアちゃんはいいかしら?」


「あ、はい。」


「きゃー!のばらさんの男装見たーい。うっわー、超楽しみになってきた!」


 マナカがはしゃいだ。


「じゃ、朗読する人と鯉&神はヒトミとミチルちゃんね。どっちにするか二人で決めてくれる?」


「僕はどっちでもいいよ。ヒトミが選んでいいよ。」


「いいのか?じゃあ俺は面白い方がいいから鯉にするよ。マナカを食っちまう役。ふっふっふ。」


「‥‥‥‥何か、今、いやらしさを感じたー!ヒトミ、サイテー!」


 マナカが両手で自分の腕を抱いて冷たい目で中村を見た。


「言いがかりだぜ。ひでぇマナカ!ミチル助けてくれよー。」


 中村はミチルに抱きついた。


「‥‥‥‥‥あんたって、隙さえあれば土方君にくっつくよね?」


 マナカはじとっと中村を見た。


「だって、ミチルは俺の癒しだからな。お前らには渡さないぜ!」


 マナカに向かってあっかんべーした。


「‥‥‥だってさー、土方くん。」


 マナカがミチルを哀れんだ目で見た。


 ミチルはいつものように天使の微笑みをわずかにひきつらせつつヒトミの腕を外した。





 ミチルはミアの顔を見た。

 ミアは中村を見てクスクスしていた。




 ミチルは昨日の帰り道のことをまた思い出していた。

 昨日のミアとの会話。




『‥‥‥‥私ね、小さい頃からずっとミチルが大好きだったのよ。知ってた?』


『‥‥‥それなら僕だって。』


『そういうんじゃなくて‥‥‥‥‥。』


『‥‥‥‥‥えっ?』


『‥‥‥でも、これからは違うの。‥‥‥‥私、何があっても一生ミチルが大好きよ。いつか私が誰かと結ばれたとしても、ミチルが私の知らない誰かと結ばれたとしても。』





 ミチルは昨日ミアとこの会話をしてから、どこかふわふわした気分が続いていた。



 もしかして、僕とミアはずっと両思いだったんだ?

 僕のことちゃんと男子として見てくれていた?



 気がつけば同じ独り言が頭の中でぐるぐる堂々巡りしていた。



 でも‥‥‥‥‥それは、ミアが甲斐先輩に出会って変わってしまったんだね?



 ねぇ、ミア。僕だってミアが誰を好きになったとしてもミアが大好きだよ。



 でもミアが僕の事を思ってくれていたと知った今、僕に取り戻せないかって思たっておかしくないよね?





「ミチルちゃん、ぼんやりしてどうしたの?」


 のばらがミチルの顔を見ていた。


「す、すみません。」


「暗幕とライト2つは学校で貸してくれるそうよ。私もう、ここに来る前に生徒会に予約しておいたわ。」


 のばらが言った。


「衣装は、私たちは浴衣で済ませましょう。予算もほとんどつかないし。ミアちゃんとマナカは使えそうな浴衣は持ってる?」


「私、今年ピンク系の浴衣買ったんだー。それで行けそうな気がする。」


 マナカが言った


「私も‥‥‥、睡蓮の柄の浴衣を持っているからそれで。」


 それはミアと索との思い出の浴衣だった。


「まあ、二人ともなかなかいいわよ。私は、兄の浴衣を借りるわ。で、ミチルちゃんは、制服のままでいいし、問題は鯉よね‥‥‥。」


 みんなでいっせいに中村を見た。


「そうだー、ヒトミは体を金色に塗ればいいじゃん。」


 マナカが嬉しそうに言った。


「ひっでーな!マナカっ。あーっ、もしかして、お前俺の裸が見たいんだろー?」


 中村がマナカをニヤニヤして見た。


「ばっ、ばっかじゃん。ミアさんこの男NG登録してください!」


 マナカはミアに抱きついた。


「マナカだって隙さえあれば真夏多さんに抱きついてるよな?」


 中村が言った。


「いいのよ、ミアさんは私のオアシスなんだから。こうしていると潤うわー。」


 マナカは中村にあっかんべーをした。


「あ~あ‥‥‥。真夏多さん、こいつほっといていいのかぁ?」


 中村はミアを気の毒そうに見た。





      

      挿絵(By みてみん)



 イラスト、今回初めて自分で描いてみました。マジ小学3年以来?にイラスト描きました。線画のみですが。自分のイメージ通りに人に描いてもらうのはムズかったので。

 描き慣れてる人のように上手くは描けないけど雰囲気で。色は難しいので結局人に頼みました!


お話ももうちょい続きますので続きも読んでいただけたらうれしいです。

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