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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第3章
69/102

勝者 マナカ

 のばらはミアとマナカの着付けを終えて、はぁーっと大きく息を吐いた。


 とりあえず女子の用意はなんとか時間内に終わりそうだ。

 のばらは男子の方も確認に行った。


「座家くん、大丈夫?着られた?」


 のばらが声をかけた。


「のばらさーん!帯が‥‥‥帯が魔物になった‥‥‥俺を翻弄するんだ‥‥‥」


 リアスを手伝っていた中村が泣きついて来た。


「動画を見て練習した時はうまく出来たんだけどさー‥‥‥、何かの呪いを受けているらしいんだ!この帯やばい。ダークパワーを注入されたらしい。」


「もう、またそういう狂言は今は封印してちょうだい!」


 のばらには厨病は通じない。中村はあわれ一蹴された。


 のばらはさっさかとリアスの帯を結んだ。


「私、兄と父が着る時、母と一緒に何回か手伝ったことがあるの。」



 のばらは仕上がったリアスを見た。


「あら、座家くんすごくいけてる!ねえミアちゃん、マナカ来て!」


 のばらが呼んだ。


「私、今メイク中で、行けませーん!」


 マナカの大きな声した。




 のばらに呼ばれたミアが下手(しもて)から現れた。


「きゃー!ミアちゃん、なんてかわいいの!」


 支度の終えたミアを見たとたん、のばらがミアに抱きついた。


 ミアのストレートヘアのサイドの耳元で桃色の紐がリボン結びにされていた。マナカのアドバイスにより薄く施されたメイクがミアの美しさを際立たせた。普段のノーメイクと違い、艶やかな薄いピンクに染まるくちびるもキュートだった。




 リアスがミアを見て妙に照れた。


「ミア、かわいすぎ‥‥‥‥」


「ほんとう?ありがとう。」


 ミアはのばらに抱きつかれたまま恥ずかしそうに横を向いた。


 その、横顔にもリアスはくぎ付けになって見とれてしまった。



 隅っこで台本を見ながら音楽と効果音を出すタイミングをミチルと確認していた雅秋がこちらに振り向いた。



「おいおい、牧野さん!ミアから離れろ!」


 気づいた雅秋が寄って来た。


「うふふー。後で二人だけで写真とりましょうね!ミアちゃん。そろそろリハーサルよ、みんな。」


 のばらは雅秋を無視しながらも、ミアから離れた。




「ミア‥‥‥俺、ミアの浴衣姿初めて見た。」


 雅秋もミアに見とれながら言った。


「あれ?そうだったっけ?‥‥‥‥‥ああ、そうね、あれは‥‥‥ううん。何でもない。」


 ミアがふと考えてから誤魔化すように微笑んだ。

 雅秋の胸にまたズキッと痛みがつき抜けた。


「‥‥‥‥‥誰か他のやつと浴衣で出掛けたのか?」


 雅秋がチラリとリアスを見た。


「ううん、違うから。えっと、台本持ってくるわ。リハーサルだし。」


 ミアは逃げ出すように下手楽屋に行った。




 雅秋はリアスに近づき小声で言った。


「座家、演技だからってミアにあんまり触んなよ!」


「無理言うなよ、甲斐先輩。」


 リアスはそう言うと後は雅秋を無視してリハーサルに向かった。


 リアスは雅秋の視線が背中に刺さるのをビリビリ感じた。




「さあ、リハーサル始めるわよ!」のばらが手を叩いた。


 ミア、リアス、中村が集まったがマナカがまだメイク中のようだ。


「マナカ?まだ出来ないの?」


のばらが呼んだ。


「今、熱血になってるから待って下さい!シンメトリーって結構ムズいんです。」


マナカが大声で返してきた。


「仕方がないわ、先に始めましょう。」




「じゃ、僕と甲斐先輩はゲストコントロールにいくから。後はよろしく。」


 ミチルと雅秋は廊下に出た。






「‥‥‥‥‥で、だいたいこれで確認できたわね。後は何かあったらアドリブで誤魔化すのよ。」


 のばらは皆を見回した。


 シーンごとの立ち位置や動きだすタイミングなどを確認しリハーサルを終えた。



「ちょっと、マナカはまだメイクしているの?マナカ、どうかしたの?リハ終わっちゃたじゃないの!」


 のばらが眉を寄せ、マナカの様子を見に行った。




「きゃー!どっ、どっ、なっ、なっ!」


 のばらの悲鳴と狼狽の声が響いた。


 驚いたミア、リアス、中村が寄って行った。


 振り向いたのばらは大笑いしている。



「あははは!もう、マナカったらどうして‥‥‥くっ、くっ、あははは!」


 のばらの笑いは止まらない。


「だってー、男っぽくしようと思って‥‥‥‥‥」




 マナカは女の子のメイクは極めていたが侍のメイクなど考えたこともなかった。


「私の丸顔を侍にするにはさー、ひげを描けばいいと思ってさー。」



 マナカの口のまわりには黒い輪が描かれている。そして太く書かれた眉尻は3つに分かれている。


「ねえ、これではまるでコントじゃない。」


 のばらは笑いすぎて涙を流しながら言った。


「サムライってさぁ、武道やってるおじさん風でいいと思ったんだけど。」



 マナカにはまさか夏休みに一目ぼれした名波索が『牧野様』のモデルだとは想像出来るはずもなかった。

 索の顔を忘れてしまったとはいえ、知っていたらこんなメイクにはならなかったはずであった。



「どうしましょう。もうあと15分で開演だっていうのに!こんなに黒く塗ってしまっていたら落とすだけでも時間がかかってしまうわ。」


 のばらが笑いをこらえて言った。


「もういいよ。私これで。のばらさんにも喜んでもらえたし!やっふー!午後の部では直すから。」


 マナカはご機嫌で言った。



「マナカ。お前受け狙いでわざとやったんだろう?ふふん。俺にはお見通しだぜ!」


 中村がにやけて言った。


「ち、違うよー!私は真面目に考えてやったらこうなったんだってばぁー!」


 マナカがプンプンした。



「池中さんって、そういうキャラだったんだ。まあ、ちょっと変わってる人だとは思ってた。」


 リアスがマナカを見ながらヤバいものに触れたように引いた。


「変わってるって‥‥‥私は普通よ!何にでもマヨネーズかけたり、醤油かけたり、牛乳かけたりしないもん!」


 マナカが抗議した。



「まぁ‥‥‥‥池中さんったら。恥を忍んで劇を盛り上げようと自らを犠牲にしたのね‥‥‥‥。いいのよ、そんなことしなくたって。お客様がこないなら来ないで仕方がないんだから。」


 ミアがうるうるしながらマナカの捨て身の行為に感動していた。


「ミアさん‥‥‥。恥を忍んで犠牲って、そーいうわけでもないんだけど‥‥‥‥。私、全然恥ずかしくないし。むしろ受けていると思うと喜びを感じてるくらいですけど。」





 雅秋が戻って来た。


「おい、もうゲスト入れるぞ!第1幕最初に出ないやつはグリーティングしろ!」


 そう言ってからマナカをフッと見つけてびくった。


「‥‥‥‥‥池中?何が起こった?」


 マナカのメイクが雅秋を怯ませた。


「‥‥‥‥‥私に牧野様が降臨したんでーす。明日、甲斐先輩もこのメイクでどうですかぁ?いひひー。」


 マナカが無邪気に、熱血系10時10分3ベクトルアイブローand『あ、いっけね、俺もう、3日ひげそってねぇ男』風メイクの顔で笑った。



「うっ‥‥‥‥、池中‥‥‥お前のその覚悟はすげぇな。俺には‥‥俺には無理だ‥‥‥絶対!」



 マナカが雅秋に勝った。






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