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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第2章
65/102

リアスのチューター

昨日の分と合わせましてちょっと長くなってしまいました。


 月曜日から、木曜日までの四日間の中間テストは終わった。


 金曜日になると、早くも一部のクラスでは教科によりテスト返却も始まっていた。


 柊也は帰ろうと靴を履き替えていると、靴箱の向こうから柊也とは違うクラスの知らない女子がおしゃべりしている声が聞こえてきた。




「ねえ、聞いた?8組の背の高い人いるじゃん。」


「知ってる。座家くんでしょ。ちょっとかっこいいよねー。」


「あの人さ、数Aが5点だったんだって!同じ8組の女子が言ってたよ。」


「えー、まさかサービス問題の最初の1問しかできてなかったってこと?おもしろすぎじゃん、座家くん。」


「うん、うけるよねー。さすが8組だよねー。」




 ーーーマジかー?座家くん。ひと桁って。うふふー。僕も誰かに教えてあげようっと。


 柊也はさっそくスマホを取り出した。





 それから一週間後の金曜日。



 化学基礎、生物基礎、国語総合、英語表現、コミ英I、数A、数I、現代社会の8科目。すべてのテストが昨日までに返却された。


 そして1年8組の教室では、友を憂いている殊勝な1人の男子がいた。




「お前、このままでは留年も夢じゃねーな。」


 中村が真顔でリアスに言った。


 中村とリアスは窓際に並んで寄りかかり、一人また一人と登校してくるたびガヤガヤ度がまして行く教室内をなにげに眺めつつ話していた。




「お前、全っ然勉強してねーだろ?」


中村がジト目でリアスを見た。


「‥‥‥‥‥‥‥すっ、少しくらいは俺だって。」


 リアスがよそを向いて言った。


「おい、来週は追試だろ!マジでやれよ。リアルから逃げんなよ!」


「‥‥‥‥‥なんだよ。中村だって俺と同じ位ゲームやらアニメやら、2次オタも入ってるくせにさー、どうなってるんだよ?1人だけすっげえいい点取ってさ‥‥‥。」


 リアスが不満そうに言った。


「あのなー、だからってやらなきゃいけないことはやってるに決まってんだろ?それに授業中ちゃんと聞いてりゃほぼわかるだろ。座家、授業中ぼーっとしてるだろ?知ってんだぜ。どうせ真夏多さんのことでも考えてんだろ?」


 ズバリとまんま言われたリアスはしょぼんだ。


「いいか、今日昼休みは俺が数学を教える。部活の時間もお前は勉強だ!明日、明後日の土日もな。手の空いてる人に頼んで教えてもらうんだ。幸い錦鯉研究部は皆成績優秀者ばかりだし。いいな!俺がみんなに御触れを出しておく。」


「そんなっ!俺が赤点だって知れ渡っちまうじゃん。かっこわりーだろ!やめてくれよ。」


「座家にもうそんな選択の自由はない!赤点が3つもあるくせにっ!他のもギりだったんだろ?これは決定事項だっ!」


 中村はビシッとリアスに言い放った。


「はい‥‥‥‥。」





 中村は早速部活のラインで協力要請した。


『緊急プロブレム発生!座家 風前の(ともしび)!』


『チューター急募!至急  数A 及び コミ英 英語表現』


『本日部活中及び明日、明後日の土曜日、日曜日の部活中』


『募集人員無制限 あなたのご都合に合わせます。今、君のボランティア精神が座家を救う!未来は変えられる!Save Zaka's future !』



「よし、これでいいだろう。キャッチフレーズもバッチリだぜ!がんばれよ、座家!」


 中村はリアスの背中をばしっと叩いた。





 さっそくマナカから返事が来た。


『化学と生物なら私得意だよ!特に今までやってた細胞の微細構造は完璧だから。座家くんに教えてあげる。1時間につきドーナッツ1個でいいから。あ、今度はフレンチクルーラーのチョコがけがいいなー。後あの生クリーム入ってるやつ。』



中村がリアスに自分のスマホのディスプレイを見せながら言った。


「マナカ、教科違うって!それにまた、ドーナッツかよ。マナカのやつ、この間の座家のドーナッツ3個ですっかり餌付けされてるぜ。」



「おぉ‥‥‥こういうのってさ、ちょっとずつだんだんとさ、グレードアップさせられてくパターンだよな‥‥‥‥この先‥‥‥女ってこえーよな、そういうとこ。」


 リアスが密かに中村の未来を憂えた。




『リアス、数Aが5点て本当なの?。私でよかったら何でも聞いてね。出来るだけ力になるわ。いつでもどうぞ。』



「おお、真夏多さんからも来たぞ。良かったな!座家。でも、本当は15点なのにな。何で10点減らされてんだろな?」


「ひでぇよな、5点と15点じゃ3倍ちがうぜ?‥‥‥‥‥ミアが優しく教えてくれるのはうれしいけどさー、辛いよなぁ。振られたばっかだし。」


 リアスが額をこすりながら言った。


「‥‥‥‥なんだよ、結局振られてたのか?応援してやってたのにな。まあ、相手が甲斐先輩じゃ仕方ないって。」




 中村は先々週のリアスと雅秋の対決が途中になって以来、どうなったのか知らない。


 リアスもあの対決後にドーナッツ店で見かけて以来雅秋とは接触はない。


 リアスはテスト明けからも部活には参加していなかった


 錦鯉研究部の文化祭の準備はほぼ終わっており、部員ではない雅秋とリアスはテストが終わったばかりの先週は部活には行っても行かなくとも問題はなかった。


 リアスの場合は単に雅秋に会いたくなかった為、行かないだけだったが。

 ミアと雅秋が仲良くしているところなどやはり見たくはない。




「ちげーぞ!確かに振られたけど、それは俺は甲斐先輩に負けた訳じゃないからなっ!振られたのは運命の神様のいたずらのせいだからな!」


 リアスは本心そう思っていた。


「ふーん、まあ、座家がそう言うんならそういうことにしとこうか。運命の神様かぁ‥‥‥‥。あぁ、俺もしくったしな‥‥‥あの日。何が悪かったんだろ?俺の分も占っておけばよかったなぁ、鯉占い。」


 中村もあの日、マナカに告白しそびれて以来、そのままだ。



「あれ、のばらさんからも来たぜ。」



『まったく座家くんはしょうがないわね。まさか赤点だったの?私レベルになるとね、そんなへまはしないのよ。私はいつも、最低でも赤点(30点)+5点はとれるのよ。今度コツを伝授してあげるわね。座家くんとは同志ですもの。』



「うっわー、のばらさんってサバイバーだなー。よくそんなギリギリラインで過ごしてるよなぁ。それって回答用紙戻って来るまでめっちゃスリリングじゃね?」


 中村が思いを馳せた。


「そりゃそうさ。俺はいつもテスト返しの時の胸騒ぎ?っていうかドキドキヒヤヒヤは10連ガチャ級だぜ!うぅ‥‥‥‥今回は俺の神様への祈りが通じなかったな‥‥‥‥‥。1学期は何とか通じたのにさー。何が悪かったんだろうな?俺にはさっぱり不明だっての。」


「‥‥‥‥‥座家、もしかして‥‥今時『鉛筆転がし』とか『かみさまのいうとおり』っとかで選択問題の答え選んでるだろ?」


「え?みんなそうじゃないのか?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥」




 中村が新たに来たメッセージに気づいた。


「おっ、ミチルからだぜ!」



『ザッカリーったら、大丈夫?5点なんだってね。ふふふ。土日に部活終わってから僕んちで勉強会してもいいよ。泊まってもいいし。よかったら。』



「おいおい、これって絶対お遊びになるパターンだよな。結局はしゃべってゲームしてビデオ見てだらだらして終わるってやつ。」



「俺、行きてー!ミッくんちってさ、庭が公園並だって聞いたぜ?やばくない?テント張ってさー、キャンプ出来ちゃうじゃん。BBQも楽しそうだよなー。」



「ほらな、やっぱりな!最初からやる気なしだよ、こいつ。ミチルんちは却下だ。」


 中村は即座に丁重に辞退する旨をミチルに送った。



「おっ、おい!甲斐先輩から来てるぜ!」


 中村があわててリアスに言った。


「はぁっ?マジかよ。甲斐先輩が俺の勉強のことで何の用だっつーの?」



『ほんと、マジ知ってたけど、座家って馬鹿だって。可哀想だから俺が優しく教えてやるよ。受験前だけど、俺は余裕だからな。ミアに頼るな!まず、俺に聞け!いいな!放課後必ず生物室に来い。中村、責任持って連れて来いよ!』



「‥‥‥‥‥だってさ、良かったな。みっちり見てくれそうで。」


 中村が哀れんだ目でリアスを見た。


「‥‥‥‥‥‥‥いやぁー!」


 リアスが中村に抱きついた。





 雅秋はあの中庭での時、自分が名波索に取り憑かれた異変によりミアの心は自分に向いたことをはっきりと感じ取っていた。

 それでもよかった。それでミアが自分を見ていてくれるなら。



 確かにミアが雅秋を特別視したのは名波索の影響力だった。

 雅秋もその時はそれはわかっていた。しかし、索が消えた故の摂理により雅秋の記憶からは名波索のことはまたもや消えつつあった。


 従い、索の手を借りたという引け目はあらかた感じてはいない。

 今となっては雅秋の脳内では(おおむ)ね自分の実力と自覚されている。



 自信は余裕につながった。


 ーーーやはり座家などは俺には及ばない。ミアにとっての一番は俺だ。


 座家は浅ましいまねをしたがミアにも隙があった。今回だけは特別中の特別で許しやる。だが今後ミアには必要最低限しか近づけさせはしない。


 ここは俺が座家の面倒を見る。ついでに座家のバカさかげんを叩き、俺の頭脳明晰を披露してお前と俺の雲泥の差を思い知らせてやろう。



 まったく‥‥‥‥座家のやつ、ミアにマンツーマンで勉強を見てもらおうだなんて図々しいにもほどがある。

 ミアもミアだ。いくら友達だと言ってももう普通の友達ではありえない。それなのにあんな返信メッセージを!





リアスが中村と共に生物室に行くとさっそく雅秋が待ち構えていた。


「よお!久々だな!座家。一発お見舞いはとりあえず無期延期してやるから安心しろ。ふふん‥‥‥‥‥いいか?今から俺はお前のチューターだ。俺に絶対服従だからな!しっかりついて来いよ!返事は?」


「なんだよ?いきなりさ。」


リアスがむくれた。


「‥‥‥‥ちげーだろ?」


雅秋からめらめらと(ほむら)がたっている。


「は‥‥‥‥はい。」






 こうしてその日の放課後から雅秋の指導の下リアスは鍛えられた。


  その日は生物室の片隅でバカ、アホ、タワケと罵られながら、みっちり英語を教わった。


 帰りには雅秋から理不尽にも宿題まで出された。


 明くる日土曜日、更に日曜日も部員たちが最終的仕上げの稽古をする片隅で、雅秋はリアスにビシバシと数Aと英語を教えた。


 リアスは以外と覚えが良く、単に今までサボっていただけだと雅秋は理解した。




「座家ぁ、いいか?俺が直々に教えてやったんだ。追試では3つとも90点以上とれよ?教えた俺に恥かかせんなよ。もし取れなかったら‥‥‥ふっ、例の無期延期は解除だ。」


 日曜日の帰り際に雅秋がリアスに言った。


「雅秋ったら。リアスは大丈夫よ。リアスは『古井戸』の台詞だって一回読んだだけですぐ覚えてしまったのよ。本当はすごいのよ!」


 ミアはにこやかにリアスを褒め称えた。


「なんだよ、その『古井戸』って?」


 雅秋が聞いた。


「わたしのクラスの文化祭の自主制作ムービーよ。リアスと私は恋人役なのよ。うふふ。ね?リアス。」


 ミアがリアスにほほえんだ。


「ふふ、まあな。」


 リアスが照れて言った。


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥おい、座家‥‥‥いつの間に?」


 雅秋の目がキラリんと光った。


「お、俺帰るわ!じゃあな、ミア。甲斐先輩、俺、絶対高得点でパスすっからさ。ありがとうございました!」


 リアスは頭を下げると、さささっと消えて行った。


「くっ!座家のやつ。逃げやがった!」


 そう言った雅秋の顔はムカついた様子だったが目は決してそうではなかった。






 結果、リアスは3教科とも無事追試をクリアした。


 しかも、雅秋との約束通り驚くべき高得点で。




 来週はいよいよ文化祭だ。





寄り道してしまいましたが次回から錦鯉研究部にやっともどります。

(´ー`A;)

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