閑話 中村の悲劇
落花生高校の今年の第一学年は成績上位者から1組から始まり下位が8組となっております。
カースト厳しいです。
中間テストも終わり素点確認が始まった。授業ごと答案用紙が返却されてくる。
1年8組では数学のテストが返却された。
皆配られたテストを見てざわついていた。
「‥‥‥‥オワター。」
リアスが死んだ。
「そんなに悪かったのかよ?」
中村が口から魂が浮き出ている状態のリアスに言った。
「おい、座家。追試の効果発動だ!墓地から特殊召喚できる。勉強してフィールドに戻ってこい。まだ大丈夫だ。」
そう言いながらリアスの握っていた回答用紙を取り上げた中村の顔は青くなった。
「わお‥‥おぉ‥‥‥‥‥やべーな、これは。俺が解んないとこ教えてやるよ。」
「なんだよー。何か余裕の口ぶりじゃん。お前は何点だったんだよ?数A。」
リアスは机にだらんと突っ伏したまま、横に立っている中村に聞いた。
「俺、95点。」
中村がさらっと答えた。
リアスががばっと起き上がった。
「なっ、なっ、何で?まっ、まっまっ、まさかお前‥‥‥‥チートな悪行を!」
「あのなぁー‥‥‥。黙ってたけど、俺もともと成績優秀だからよ。わりーな。ふふん!」
「えっ!じゃあ何で底辺の8組なんかにいるんだよ?」
「‥‥‥‥‥おぅ、それはな‥‥‥あれは受験前夜の凄惨な事故のせいで俺は‥‥‥‥‥」
あの日のこと‥‥‥‥あれは俺の人生の3大悲劇の殿堂入りを果たすのは確実であろう出来事‥‥‥‥‥‥
受験前夜にそれは起きた。
夕食後、風呂から上がり俺は髪を乾かしていた。
「一深、今日は早く寝なさいね。もう明日なんだから。今さら勉強するよりリラックスしたほうがいいわよ。」
母さんが言った。
「わかってる。もう準備も万端だし、大丈夫だよ。」
夕食の後片付けを手伝っていた妹の二葉が言った。
「おにーちゃん、明日がんばってね!二葉、お兄ちゃんのためにいっぱいお祈りしてるからねっ!」
「ああ、サンキュー!二葉。」
俺のかわいい妹。当時中1。
小さな頃から俺の後をいつもちょこちょこついて来た。
今でも余り変わってないかもな。俺の部屋にしょっちゅう来るのでちょっとというか、かなりうざい時もある。
「父さんそろそろ帰ってくるかなー?」
「そうね、8時だからそろそろ帰ってくるんじゃない?」
「それじゃ、俺自分の部屋にいくよ。かなり早いけど。おやすみ、母さん。」
「明日のこと大丈夫?ちゃんと目覚まし早めにセットするのよ。おやすみ。」
俺は父さんが帰って来る前にさっさと自室にこもることにした。
なぜかって?
俺の親父は相当うざいからだ。もう、それは寒々しいオヤジギャグを連発する。よくもまああんなに10連ガチャのごとく次々と要らんもんがでてくるでてくること。
俺はその日の朝から一発かまされていた。
「一深、受験勉強は快調か?父さんは副会長だ!はっはっは!」
外はただでさえ寒いってのに登校直前の俺をエルザのごとくさらに凍らせた。受験当日だったなら手が凍えて字が書けなくなるところだった。
一企業の副会長ならまだしも、やり手がいなくて仕方なく引き受けたマンション自治会の副会長というところも寒々しい。
俺は自分の部屋で心を落ち着けて明日に備えなければならない。オヤジにかまっている暇などない。
俺の癒しといえば‥‥‥‥
俺は机の一番上の鍵がついた引き出しに入れてあるお宝を出した。
俺は椅子に座りそれを机の上に広げた。
俺の好きな女性アイドルの写真集。小遣いをはたいて買った。
大胆な水着姿まで披露している。
うっわー、こんな子が彼女だったらなー。高校生になったらもしかして‥‥‥などと妄想しながら見ていた。
俺はこの落花生高校には余裕で合格できる自信があった。普段の実力を出せばいいだけだ。
もっと上を目指してもよかったけど、トップ高のエリート然としたプライドの高そうな固い雰囲気は俺には向かない。そっちで底辺にいるより、少し実力よりは低めの高校でトップクラスにいた方がいい。
おう、俺のペットのハム次郎ががさごそ動き出したぞ。こいつは暗くなってからの方が元気なんだ。
俺は俺のペットのハム次郎のケージを机の上の写真集のわきに持ってきた。
俺はなすカンを外し扉を開き、ハム次郎にひまわりの種を一粒渡した。受けとる姿がかわいい。
俺のための二大癒しが机の上に揃った所でドアがノックされた。
ノックされたと思ったら、いきなりがちゃりと部屋の扉を開ける音がした。
「お兄ちゃん、ひどいよ!二葉におやすみ言わずに部屋にこもっちゃうなんて!」
二葉が来た!
うわっ!写真集が机の上に広げたままじゃん。しかも、大胆ポーズの水着姿のページ‥‥‥!
俺はあわてて一番上の引きだしを全開にし、開いていた写真集のページをばたんと閉じて引きだしの中に滑り込ませた。
俺は椅子から立ち上がり、ドアを開いた二葉の方を見た。
そのまま後ろ手で引きだしをおもいっきり押して閉じた。
ふにゃん‥‥‥‥
おかしな感触だ。ここは、『ばたんっ』とか『ばしっ』とか『ピシャッ』とかいうところじゃないか?
妹は扉を少しだけ開けて顔を覗かせただけだった。
「お兄ちゃん、おやすみ。ゆっくり休んで明日がんばってね!」
俺とは似てもにつかないかわいらしい顔でにこっと笑った。
「お、おう。サンキュー。おやすみ。」
二葉はドアを閉めて戻って行った。
そして俺が振り返るとそこには‥‥‥‥‥‥‥!!!!!
「うわ〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️!」
俺のかわいいハム次郎がいきなり天に召されていた。
まだ1才だったのに。俺が殺した。この俺の手が。
次の日の俺の受験は悲惨だった。
腫れて充血した目で受験に臨んだ俺は前夜も焦って必死で徹夜して勉強していた人と思われたようだ。
監督の先生方が憐憫の眼差しで俺を見ていた。妙に俺と目が合った。
同じ中学の受験者の中には俺の不様な様をこそこそ嘲笑しているやつらもいた。
大事な試験だってのに、頭に浮かぶのはハム次郎の種を受けとるかわいい姿。
俺は涙をこらえて5教科のテストを終えた。
自己採点でも400点取れてはいなかった。
次の日の面接は何とかその時だけはと気力を振り絞ったがうまくはいかなかった。
私立の滑り止めはとうに受かっていたけど、本命はこっちだというのに。
俺は合格発表までどんよりと過ごした。ほぼほぼもうだめだと思っていたけど、何とか合格していた。きっと内申点がよかったせいかもしれない。
合格発表の日の夜、二葉がちいさなジャンガリアンハムスターを持ってきた。
それが今飼っているハム三郎だ。こいつは夜中になるとハム次郎よりさらにハイテンションになる。走りすぎて回し車からぶっ飛んでいることしばしばだが、それも楽しいらしい。ハム次郎の分もうーんと長生きしろよ。
俺はこの惨劇の後、部屋に内鍵をつけた。
二葉はかわいいが、しょっちゅう来て突然ドアを開けられたらたまらない。
リアスが中村に呆れた顔で言った。
「なんだよ、中村、男の部屋に内鍵なんて基本中の基本だぜ?ばっかだなぁー。」
「うっわー!15点のやつにバカって言われると気に触るなぁー。マジで。」
「ばっ、声に出して言うんじゃねー!あいつに聞かれたらあっという間に‥‥‥。」
「‥‥‥‥‥うふふ。」
今日もリアスと中村をしっかりウォッチしていた砂区であった。




