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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第2章
63/102

ミチルと柊也

 ミチルは生物室を出て数歩進んだ後、振り返った。


「ヒトミ、うまくいきますように‥‥‥‥。」


 ミチルは祈った。中村には全面協力だ。


 ミチルから見たら、既につきあっていると言ってもいいくらい中村とマナカは仲良しだったが、中村がはっきり心を打ち明けておかなければこの先どう進むかは運命が別れてしまうところだろう。




 中村はもとはリアスの友だちであったが、部活を通じてミチルとも仲よくなっていた。


 中村は一般人が思い浮かべるであろう男子高校生の姿をそのまま地で行ってるような青少年だった。


 嘆くほどの事もない自分の容姿を他人と比べ悩んでみたり、自分の噂を気にしてみたり、他人の噂話を楽しんだり、ちょっとかわいい女の子がいればぽーっとなってみたり、ネット世界にはまってみたり、テストの点数に一喜一憂したり。


 話好きで友好的、友だちも多い。二次元世界にもはまっているがボーダーラインを越えることはない常識人。世渡りもうまい。


 本人は自分のモブぶりを嘆いてはいるが、中村の価値は皆が認めていた。


 第一、中村がそこにいるのといないのとでは大違いだ。

 その場の雰囲気が全く違ってしまう。中村がいるだけでそこは明るく楽しい雰囲気になる。


 皆、中村のことが好きだった。


 ミチルもその1人だった。



「ヒトミが告白すれば池中さんだってきっと応えてくれるはずだよ。がんばって。」


 ミチルは生物室に向かってつぶやくと昇降口へ向かった。



 ミチルがローファーに履き替え外に出ると空は少し暗くなってきていた。


 ミチルはのばらのことを考えた。


 ーーー僕とのばらさん。釣り合わないのはわかってる。

 のばらさんはあんなに大人っぽくて素敵な人なのに‥‥‥‥‥僕ときたら。


 でも、僕だって身長は4月より4センチも伸びたし、そのうちのばらさんに追いつく‥‥‥‥はず。父さんだって高校生の時に急に伸びたって言ってたし。僕だって。



 ミチルが考え事をしながら歩いていると後ろで声がした。


「うわっ!しくったっ!やばっ。」


 ガサガサッ パラパラパラパラ‥‥‥



 ミチルは振り返った。


 誰かが何かを落としたようだ。


「大丈夫ですか?」


 ミチルが近づくと地面に袋から飛び出たお菓子がばらばらと散らばっていた。


「あうっ、僕の那津姫印のカリカリぴーあらあらあられがぁー!」


 前髪をダッカールで上に止めている男子が、地面を見て悲嘆していた。


「あっ、これは‥‥‥。」


 ミチルは地面に落ちたあられを袋に拾い集めてあげた。


「もう、これは食べられないけど。」


 そう言いながらミチルは手渡した。


「ううっ、僕、小腹がすいてさー。ちょっと食べようと思って袋を開けようとしたんだ。そしたら手がすべってさー。ていうかー、この袋開けにくくない?もうちょと消費者のこと考えて作って欲しいよねー、こーゆーのって。今日はさんざんだよ、全く。おまけにハーレム先輩の実力にはまいったなー、さすがだなー。ハーレムだけに。」



 ミチルに礼も言わずに愚痴を述べている。しかも最後の方は意味不だった。

 

 ミチルから受け取った袋は無造作にリュックのポケットに突っ込んだ。



「そ、そうなんだ。袋の事は父さんに言っとくよ。でもこれを歩きながら食べようとするのはどうかな?じゃあ、僕はこれで。」


 ミチルが行こうとするとその男子生徒が言った。


「父さんって?君はお父さんっ子なの?学校での些細な出来事を話すなんて。高校生にもなって変わってるねー。ねぇ、君、2組の土方ミチルくんだろー?」


「あ、土方、そうですけど。」


 ミチルはその男子生徒は見たことがなかった。

 辺りは少し薄暗くなっているが顔ははっきりわかる。


「僕、1年1組の磯部柊也っていうんだー。」


「あれ、柊也って、ミアとキリルから時々聞く名前だけどその柊也くん?」


「あはっ、僕のこと何か言ってるの?ミアとキリル。‥‥‥‥‥ねぇ、土方くん一緒にかえろー。ミアが僕のこと何て話しているか教えてよー。」


「う‥‥うん、いいけど。」


 ミチルは押されぎみになりながら返事をした。


 松の石垣の通路を二人で歩きながら柊也が言った。


「ミアがね、この前の土曜日に僕の部屋に来た時にさー、君のこと話していたよー。」


 ミチルと並んで歩きながら柊也が言った。


「えっ?磯部くんの部屋に?ミアが?」


「うん、そーだよー。小さい頃の思い出話してさー。土方くんとお供えを持ち出してこっそり二人で食べたって。楽しそうに言ってたよー。」


 柊也はミアとミチルの間柄を探る気でいた。


「ああ、あれかぁ、ずいぶん前の出来事だなー。そういえばあれもカリカリピーあられだったなー。なつかしいなー。うん‥‥‥‥あの頃は無邪気で楽しかったな。」


 ミチルはにこりと柊也に笑顔を見せた。


 柊也は初めて見たミチルの天使の微笑にドキリとした。


「ふ、ふーん、今は何かすごく悩んでいるような言い方だねー?」


「‥‥‥‥うん、まあ、僕の悩みは磯部くんのように年相応に見えて、しかも容姿端麗な人には無縁なんだけど。」


 ミチルは恥ずかしそうに目をそらして言った。


「え?‥‥‥‥あっ、いっけね。前髪下ろすの忘れてた。さっき4Fで見てた時、邪魔だったから上げてたんだっけ。」


 柊也はダッカールをはずして前髪をバサバサ崩した。


「‥‥‥‥あれ、僕、磯部くんのこと知ってた。何回も見かけたことあるよ。」


 前髪で目が隠れた柊也を見てミチルが驚いて言った。


「あははー。僕の晒し見たことなかったんだー。クラス違うもんねー。で、何そんなに悩んでるのー?」


「はぁー、こんな悩み人に言えやしないよ‥‥‥‥。」


 ため息をついたミチルは磯部の顔を見てからまた前を向いた。


「あー、それってきっと恋の悩みじゃん?ミアのこと?」


 柊也はチャンスとばかりにあつかましくもダイレクトに聞いた。


「え?ミアは関係ないよ。でも恋の悩みか‥‥‥そうかもっていうか関連してそうなるね。えへへ。」


 ミチルは照れながらも素直に答えた。


 ミチルは、高校生になってもいまだに大人っぽい所がないことに悩んでいただけだ。

 そして周りとの成長の差がうらめしかった。それは時間が解決してくれるのかも知れないが、今こそが問題なのだ。


 柊也はこの素直で毒気の全く感じられない、しかも超笑顔が尊いミチルが気に入った。

 ミアと同じ匂いがする。美形で素直で親切。黒さを感じない。ごまかしがない。操りやすい。


「ねえ、土方くん。僕、クラスでもキリルやミアと仲よくしてるじゃん。土方くんとも仲よくなりたいなー。僕と友だちになってよー。」


 柊也は前髪をかきあげながらミチルに言った。


「うん、もちろんだよ。僕も新しい友だちが出来てうれしいよ。よろしくね。」


 ミチルは無邪気な笑みを柊也に向けた。



 ーーーうわぁ!僕に向けた微笑み、すっごく良くない?土方くんまるで天使の尊さ!

 何で今まで気づかなかったんだろう?こんなにかかわいい子がこんなに近くにいたのに。うふふーん。


 こんな子も1人くらい僕のコレクションに入れてもいいよねー?うん。

 男の子攻略は初めてだけど。

 楽しみーっ。僕の娯楽みーつけたっ!きゃっはっー!



 あー、今日は座家くんとハーレム先輩の対決ではとんだ期待はずれだったー。

 しかも、かわりにミアとハーレム先輩のイチャイチャを見せられただけで帰りが遅くなってしまったなんて、とんだ災害だったけど。


 でも、おかげで最後はこんなにラッキーじゃん。土方くんを知った。


 やっぱ、僕って神に愛されてるよねー。さすが僕。




 柊也はミチルの後ろにはミチルの彼女、というよりほぼ保護者と化した牧野のばらがついていることを知らなかった。



 この、えげつない柊也VS狡猾なのばらの攻防は‥‥‥‥‥物語が長くなってしまうので、ここでは割愛する。きゃっはっー。







ミチルのお父さんはカリカリピーあられの製菓会社の創業者で代表取締役。

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