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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第2章
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のばら 暗中飛躍

『甲斐雅秋と座家くんたちを止めるために協力して。』


『4:15 中庭の樹の下 必ずひとりだけで来て。お願いね。』


 のばらからミアに来たメッセージではミアが一人だけで来るように指定されていた。


 ミアは即、必ず行きますと返信した。


「ひとりでって‥‥‥‥何でだろう?」


 柊也が首をかしげた。


「でも、のばらさんがそう言っているんだもの。私、ひとりで行くわ。柊也は帰っていいのよ。」


 ミアが言った。


「ミアをおいて帰れるわけないじゃん!こんな、おもし‥‥‥‥いや、おも‥‥‥‥思わぬことがおきてしまうかもなのに。」


 柊也は心配げにミアを見た。



「大丈夫よ、のばらさんもいるんだもの。ありがとう、柊也。」


「わかった。じゃあ、無理なことしないようにね。バイバイ、ミア。」


 柊也はそうは言ったがもちろんこのまま帰る気など毛頭ない。

 先回りして中庭が見渡せる場所へ行くだけだ。


「また、明日ね。柊也。」


 ミアは手を振った。


「‥‥‥‥でも、まだ約束の時間まで15分あるわ。すぐ行かないで止められるのかしら‥‥‥‥?」


 ミアは不安に思った。少し早すぎたが中庭に向かった。



 ミアは中庭に行った。


 テスト前週間ということもあり、放課後の中庭に用がある生徒はいないらしい。

 誰もいなかった。


 ーーー本当にここでよかったのかしら?


 ミアはスマホを見てもう一度確認した。

 間違いはない。

 他に行くあてもないので、時間までここで待つしかなさそうだった。



 ミアは池の鯉の様子を眺めた。


「今日の当番は誰かしら?ねえ鯉さんたち、ご飯はもらったの?お腹すいてない?」


 鯉たちはミアの顔を覚えているらしい。こちらに寄ってきたが餌をもらえないとわかるとまた散っていった。


「ごめんね。二重にあげてしまうといけないから。食べ過ぎもよくないのよ。」


 ミアは鯉にそう言ってから落ち着かない気持ちで樹の下の池の縁に腰掛けた。


 そして、リアスと雅秋のことに思いを巡らせた。



 ミアは全く気づかなかった。後ろの池で起こっていたことを。



 ミアの後側の池の表面から薄紫色の小さな光が数粒飛び出した。しかしそれはまだ明るい時間帯の今では目立つものではなかった。


 ふわふわと浮遊したその光は、やがて池に後ろをむいて座っているミアの左うなじについている名波索の婚約(いん)、黄金の鯉の鱗に吸い込まれるように消えた。




「やあ、ミアさん。」


 生徒会副会長の神谷神露(かんろ)がやって来た。


「あら、神谷先輩。」


「こんな所でひとり、何しているの?」



 神露はのばらから聞いていた。ミアを中庭に呼び出したことを。






 神露が中庭に来る前の出来事だ。


 放課後、のばらが慌てた様子で神露のクラスまで来た。


 のばらは神露を廊下の隅に引っ張って行った。


「よかったわ。間に合って。もう帰ってしまったかもと思ったけど。神谷くん、聞いた?ミアちゃんと甲斐雅秋の噂。」


「いや、聞いてないけど。」


「そう、ついに別れたっていう噂が流れてるのよ。ミアちゃんがあいつに愛想をつかしたらしいの。」


「‥‥‥ふうん。それで?」


「あら、ずいぶんのんびりしているのね?これを待っていた人は何人もいるんじゃないかしら。そんなんじゃライバルに遅れをとるわよ?」


「何を言いたいんだ?牧野さん。」


「私、今、ミアちゃんに用があって中庭に呼び出したの。4時15分に。来るって返事もきたわ。でも私、時間に遅れてしまいそうなのよね。」


「‥‥‥‥‥‥なんでそんなこと?僕に何をしろと?」


「さあ?どうするかは神谷くんの勝手だわ‥‥‥‥。」


 それだけ言うとのばらは戻って行った。





 のばらが昼休みに雅秋と会った時、雅秋はリアス呼び出しを目立たない場所に変更した。だが、時間が経つにつれのばらは一抹の不安を感じてきた。

 それで、帰りのSHRの最中にふと良い策を思いついた。


 ーーーそうよ、保険をかけておいた方がいい。

 今から仕掛けて間に合うかしら‥‥‥‥?やるだけはやっておいた方がいいわよね。運がよければ間に合うわ。



 のばらはミアにメッセージを送って呼び出してみることにした。


 ーーーさて、どうなる?


 ミアからは行く、という返信が即刻返ってきた。


 ーーーよし、間に合った。


 それを見たのばらはすぐにミアに気のある神露の所に行った。神露にミアとふたりきりになるチャンスを作るのだ。

 神露が乗ってくれば、のばらの計画はほぼ大成功だ。



 もし、雅秋がリアスとマジでヤバそうになったら、神露のことを雅秋に知らせればいい。きっとリアスのことはさておき、こちらに飛んでくるにちがいない。



 神露が乗ってこなかったとしてもかまわない。ミアと神露のことで思わせ振りなメッセージを送って揺さぶり、雅秋がこちらにくればリアスと引き離せる。



 神露は落ち着いたスマートな身のこなしの男子だ。色で例えるならロイヤルブルー。頭もきれて気もきき、優しい。神露の隠れファンは多い。雅秋のイメージが派手な真っ赤とは対照的な男子だ。

 新たな強敵ができれば雅秋はリアスだけにかまってもいられないだろう。

 のばらはこれ以上自身がミアに接近するのはやめている。だからと言って雅秋がこのままミアと安泰なのも何か気に食わない。




 神露が中庭でミアと話し始めたのをこっそり確認したのばらは西の石垣まで雅秋とリアスの様子をうかがいに行った。

 石垣の校庭側から接近し、石垣の角から成り行きを見てみた。


 なぜか女子生徒になったミチルと雅秋が向かいあって硬直化していた。


 まさか雅秋が女子生徒に暴力を振るうことはないだろうが、ミチルを心配したのばらはすぐに錦鯉研究部のライングループにメッセージを送った。



『甲斐雅秋とミアちゃんが別れたという噂が広がっているでしょう。』


『早速なんだけど、今、中庭で、ミアちゃんが告白されているみたい。』


『私のよく知ってる人から。なかなかお似合いよ。私も応援しようかしら。』



 雅秋はあわてて中庭に走り去って行った。



 のばらはすぐにミアにメッセージを送った。

 気がついてくれるだろうか?


『甲斐雅秋がそちらに行ったわ。後1、2分でそちらに現れるから。よろしくね。』








 池の縁に座ったままミアは言った。


「私、のばらさんを待っているんです。ちょっと早く来てしまったんですけど。」


「そう、ならちょっと話してもいいかな?」


神露が微笑んだ。


「はい。」


 神露はミアの隣に座った。


「‥‥‥あー、そうだ、文化祭のミアさんの劇楽しみだな。」


唐突なチャンスだったので神露はミアと話すトピックを何も考えていなかった。


「ありがとうございます。」




 神露は更にとりとめのない話を少しして心を落ち着けた。


 決心してミアの横顔に向かって切り出した。


「あの、ミアさん。突然こんなこと言って驚いてしまうかもしれないけど、僕は初めてミアさんに会ったときから君のことが好‥‥‥‥」


 神露の言葉の途中でミアのスマホが鳴った。


「あら、ちょっとごめんなさい、今、とりこんでいてこれは大事な用件かもしれないの。」


 ミアが急いでスマホを見た。


「え?雅秋がここに来るの?」



 ミアがスマホから顔を上げ渡り通路の方を見ると雅秋がちょうど、校舎の角から現れた。



「ミア!」


 雅秋がハイスピードで池の縁に神露と並んで座っているミアのもとに駆け寄り、はあはあ息を切らしながら言った。


「何で‥‥‥こんな所にいるんだ!さっさと‥‥帰れって‥‥‥言っただろ!」



 上がった息を整えてから次に神露に向かって言った。


「神谷!ミアと何話してたんだ?まさかお前まで告ってたんじゃねーだろうな?」


 神露にいきなりガンをつけた。

 雅秋の態度にミアはすかさず言った。


「雅秋!やめて。そんなんじゃないのよ。偶然ここで会ったから少しおしゃべりしていただけなのよ。雅秋、神谷先輩に失礼なこと言わないで。」


「ごめんなさい、神谷先輩。」


 ミアが隣に座る神露の顔を見た。


 神露はミアと雅秋が別れたという噂はガセだと気づいた。不審に思いながらも、のばらに乗せられた自分に笑いが込み上げたが態度に表すことはなかった。


 間近でミアと目が合った神露はスマートに微笑んだ。


「いや、僕は気にしていないよ。じゃあね、ミアさん。また話そうね。」


 神露は立ち上がり雅秋に言った。


「甲斐先輩はもう少し落ち着いた方がいいですよ。では、失礼します。」


 雅秋はそれを無視してミアの隣に座った。






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