メタモルフォーゼ
ミアはのばらからメッセージを受け取っていた。
『甲斐雅秋と座家くんとヒトミで一騒動あるそうなの。ミアちゃんは知っているかしら?』
『甲斐雅秋と座家くんたちを止めるために協力して。』
『4:15 中庭の樹の下 必ずひとりだけで来て。お願いね。』
俺は切取ルイマのミアに似合う彼氏像についての個人的見解を聞き流し、西側松の石垣9本目の松の下に向かった。
遠目で、既に誰かふたりそこに来ていることがわかった。何でふたり?近づいて行くと、座家の横におまけの中村がくっついているのがわかった。
「よお?ちゃんと来てたな、座家。まあ、それはほめてやろうか。」
俺は上着も脱ぎ、ネクタイまで緩めて既に臨戦態勢になっている。
「でもな‥‥‥‥‥何で中村までいるんだよ?え?座家、お前、びびって中村連れて来たのか?ひとりじゃ来れねーってか?情けねーやつだな。」
俺は鼻で笑ってやった。
「ええっ!甲斐先輩は俺も呼んでんじゃなかったのか?だってのばらさんが俺もだって‥‥‥‥‥?」
中村がおたおたして俺と座家を交互に見た。
あのでしゃばり女が中村にデマを言ったらしい。うざいやつだぜ。
「んなわけねーだろ!中村はかんけーねぇじゃん。」
俺は言った。
「ええええー!俺もボコられるんじゃあなかったのか?」
「いつ俺が中村をボコるなんて言った?さっさと消えろ!俺は座家に用がある。」
「でっ、でも‥‥‥俺は‥‥‥‥。」
中村はおろおろと座家を見た。
おやおや?美しき友情ってやつか?だがここではそれは不要だ。
「これはな、俺と座家の問題だ。俺だって座家だってこれからする話をお前に聞かれたかねーよ。さっさと消えとけ。」
中村は邪魔だ。
「中村、ありがとな。‥‥‥‥行け!」
座家が中村の背中を押した。
「‥‥‥‥‥‥わ、わかった。座家‥‥‥‥俺あっちで待ってっから。」
中村は校舎の方へ向かって歩いて行った。そして、石垣に沿って、俺と座家の姿は見えるが話声は聞こえないくらいの位置まで、だいぶ離れた所まで下がって行った。
「座家、お前ミアに何をした?」
俺は座家の目を睨んだ。
「‥‥‥‥‥‥‥もう知ってんだろ?ミアに聞いて。」
「‥‥‥‥‥俺はな、知らなかった‥‥‥‥お前がミアに告ったこと。それはお前が、俺がミアから聞かされて知っていると勘違いして俺に口をすべらせた。そしてミアは、俺がお前からすべて聞かされたと勘違いして座家とキスしたと口をすべらせた。‥‥‥‥‥それで知ったんだ。お前ら二人の勘違いがなければミアと座家ふたりだけの秘密になるところだったんだろう?‥‥‥‥座家、お前俺をバカにしてんのか?ミアは俺の彼女なんだぞ?お前、本気で俺からミアを奪おうとしてたのか?」
俺は座家から一瞬も目をそらすことなく言った。
俺が昨日、学校を抜け出しミアを説得しなかったら‥‥‥?
ミアは気が弱く優柔不断だ。俺があの時ミアと話さなければ今頃は座家がアドバンテージを握っていただろう。
「‥‥‥当たり前じゃん。本気に決まってるだろ?」
座家も俺から視線を外すことはなかった。こいつの強気な目。この俺にもびびってはいない。
「俺に勝てるとでも思ってたのか?はん!」
お前より俺の方がアグレッシブだぜ?
俺は座家に詰め寄った。
「ああ、思っていた。俺は甲斐先輩に勝っていた。今でもそう思ってる。ただ時の運で負けた。それだけだ‥‥‥‥‥で、俺は昨日振られた。」
座家は落ち着いた声で言った。
「‥‥‥‥どういうことだ?」
振られたって?ミアは昨日、自分でリアスと話すと言って息巻いていた。ということは、昨日ミアと会ったのか?
「昨日、ミアと約束した。これからも友だちで過ごそうって。」
座家は淡々と言った。全く悔しそうでも、辛そうでもなく。
振られたと言っていながらへこんだ所がない?
「座家‥‥‥‥。お前、告白の時、ミアにキスまでしといて友だちでなんて出来ると思ってんのか?この俺でさえ、ミアに告った時は抑えてたのに‥‥‥‥お前と言うやつは!」
俺の彼女のくちびるを奪っておいてただ済ませるわけにはいかない。
「‥‥‥‥知らねーよ。甲斐先輩がミアに告った時のことなんて俺とかんけーねぇじゃん。」
座家は罪悪感もないらしい。ますますこのままにしておく訳にはいかない。
俺のミアに手を出すなんて、俺が別れるなんてことは考えられないほど好きになっている女に。
「人の彼女に手を出しておきながらよく言えたな!一発お見舞いしないと俺は気がすまないぜ?」
俺は座家のネクタイを左手でつかんだ。
「‥‥‥‥やるならやれよ!俺は抵抗はしねーよ。」
座家はまるで俺を見下したような目で見ている。ミアが選んだのは俺の方なのに。なぜだ?ああ、気に障る目だ。反吐がでそうだ。
「そうか、じゃあ、遠慮なく‥‥‥‥」
俺は容赦する気はない。
「だめだっ!」
いきなり俺が見たことのない可憐な女子生徒が飛び出してきた。
「そんなことしたらミアが悲しむよ!やめてっ!」
長い黒髪をなびかせながら、妙に甲高い声で俺に向かって言った。
「なっ、ちょっと池中さん!僕の目の前で何してるんだよ!」
マナカがぜーぜーしながら生物室に現れたと思ったら、いきなり制服を脱ぎはじめたのでミチルは非常に慌てた。
「だって、もう時間がないもん。早く、土方くんも脱ぎなさいよ!」
マナカは平気な顔でミチルに言ってきた。
「それに私は既に5時間目の休み時間にトイレで制服の下に体操服着といたから気にしなくてもいいよ。」
マナカはあっという間に体操着姿になった。
「はい、これ早く着て。」
マナカはミチルに脱ぎたての温もった制服をミチルに渡した。
体操着の上にジャージを羽織りながらマナカが言った。
「いい?甲斐先輩は土方くんの女子化した姿は知らないじゃん。だから、できるのよ。甲斐先輩にとって女子の土方くんはいわばアノニマスよ!何言ったってへーきよ!仕返しされることはないよ!ということで、ウルトラストロングなシールドとなってヒトミと座家くんを護ってちょうだい!」
「うん‥‥‥!それはいいけど、僕、腕力なんて全然ないんだけど‥‥‥。」
「大丈夫よ。あの甲斐先輩なのよ?ミアさんを彼女にしてるのよ?超めんくいなのよ。そんな人が美少女化した土方くんに暴力なんて出来るわけないじゃん。 」
「そう願うとこだけど‥‥‥‥‥。ザッカリーとヒトミの助けになるならがんばってみるけど‥‥‥うまく行くかなー?僕自信がないよ。」
ミチルはマナカの制服に着替え終わった。
「じゃ、ここに座って。土方くん。行くわよ。魔法少女マナカ!発動マジックメタモルフォーゼ!」
マナカは夏休み中に自身のイメチェンの一環としてメイク術を研究し始めた。
まず、ユーチューブを漁り、メイクの施術方法とメイク道具についての知識を収集し始めた。その後おこずかいを投入し、100均でさまざまなメイク用品を買い集めた。
やりだしたらとことん追求する研究者体質のためその腕はめきめきと上達。
すぐに自分の顔だけではあきたらなくなり、嫌がる弟の顔でも研究を続けた。
その結果、弟をいとかわゆき妹に変身させることに大成功した。その後はじっと座ってメイクを施されるのを嫌う弟のため、効率化を図り施術の時間短縮にも取り組んだ。
その取り組みはいまだ金曜日夜、弟の顔を借りて続けていた。
その努力が役立つ時が来たのだ。
マナカはその技術を駆使し、今、前回超えのさらなる高みへとミチルをメタモルフォーゼさせたのだ。
黒りんご 「ちょっとー、マナカさん!アノニマス、何でも言って言い訳じゃねー
ぞ。」
マナカ 「当たり前じゃん!あんたばかなの?」
黒りんご 「君は実名でも口悪ぃーぞ!」




