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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第2章
56/102

私情 愛情 友情

 帰りの挨拶が終わるとルイマはミアに声をかけた。


「今日久しぶりに一緒に帰らない?」


「あ、ごめんね、キリル。私これから柊也と行くところがあって‥‥‥‥。」


 ミアは今から起ころうとしているインシデントからリアスを護らなければならない。


「あら、柊也と!いいんじゃない?うふふ、じゃあ、また明日ね。ミア。」



 ルイマは雅秋より柊也を応援している。微笑んで手を振り教室を出た。




 ミアはすぐに雅秋とリアスの所に行こうとした。


 ‥‥‥ミアはふと気づいた。場所を聞いていない。どこに行けばいいのかわからない。



「雅秋とリアスたちはどこで会うことになっているのかしら?」


「えっ!知らなかったの?」



 慌ててリアスと中村にスマホで聞いてみたが教えてくれなかった。



『来るなって言ってあるだろ!ミアには関係ない。』



すぐに柊也が8組まで見に行ったがリアスも中村も既に出た後だった。


 マナカにメッセージを送ってみたが相変わらず音信不通のままだった。

 ミアが直接3組まで行ってみたが既に教室にはいなかった。聞いた所によると職員室に呼び出されているらしい。



「私ったらなんてばかなの!こういうのって確か昼行灯(あんどん)とか、抜け作とか、ぼんくらとか表六玉(ひょうろくだま)っていうのよね?ああん、どうしよう‥‥‥‥。」


 ミアが両手で顔を覆った。


「‥‥‥‥ミア、なにそれ?僕は聞いたことない言葉だけど‥‥‥。」



 その時ミアのスマホにメッセージが届いた。

 ミアはすぐに確認した。


「柊也、行くところがわかったわ!でも、私ひとりで行かなくてはならないの。」





 ルイマが昇降口から出ると、向こうの脇の植え込みの前で雅秋とその友だちらしき男子が話しているのに気づいた。



「甲斐が昨日ワイシャツに口紅がつけてたのが決定的だったって。‥‥‥‥‥でさ、彼女はお前が他の女子と遊びを繰り返してるのに耐えられなくなって振ったって噂だぞ。それで、今日は既に同じクラスのアイドル顔のイケメンくんと本気でつきあいはじめたって。」


 桃山がからかうようにニヤニヤした。


「そんなデタラメが広がってんのか。桃山も知ってんだろ?昨日俺は学校を抜け出してミアに会いに行ってたって。それはミアにつけられたラメのことだろ。たぶん。それになんだよ?俺がミアに振られたって?んなわけねーだろ!」


 あきれながら雅秋が答えた。


「ま、俺はわかってるけどな。噂なんてそんなもんさ。甲斐には珍しくもないことだろ?」


 淡白に桃山が言った


「‥‥‥そうだけど‥‥‥。そういえば、今日は俺、おかしな目で見られてたな‥‥‥。」


 昼休みに二人組が雅秋を見たとたん避けていったことを思い出した。それ以後も何となく自分はいつもより周りからじろじろ見られているように感じていた。


「で、これで一応報告、終わり。本人だけ知らないで陰でひそひそ言われてんのも気持ち悪いだろ?」


「あざー、桃山。俺今から大事なインタビューがあってさ。まだ帰れない。」


 雅秋はこれから西側の石垣9の松まで行かなければならない。


「ふーん?じゃあな、甲斐。」


 特に関心もなさそうに返事をすると、桃山は雅秋に軽く手を上げてから校門方面に去って行った。





 ルイマは離れた所から雅秋を見ていた。


 ーーーあれ、甲斐先輩の友だちが帰って行く。ちょうど甲斐先輩ひとりになった。

 わお!これってチャンス!ここらでミアのためにガツンと言ってやる!

 私、大好きなミアのためなら何だってするんだから!


 雅秋に近づきながら声をかけた。



「甲斐先輩、こんにちは。」


「ん?‥‥‥お前、ミアにいつもくっついてるやつ。ミアがキリルって呼んでる同じクラスの切取。」


 雅秋は美術部にミアを勧誘するため、度々1年1組までミアを訪ねていたのでルイマの顔は知っていた。


「そう、私はミアの親友の切取ルイマです。私、甲斐先輩に言っておきたいことがあるんですけど。」


 ルイマは物怖じすることはない。きりりと雅秋の顔を見ながら言った。


「俺、急いでんだ。なんだよ?」


 雅秋は不機嫌に言った。


「では単刀直入で。私、甲斐先輩みたいな人はピュアなミアにふさわしくないと思います。ミアにはもう同じクラスに、すっごく優しくて、気配りがあって、ガチイケメンなのに控えめにオーラは抑えていて、イケボで、運動神経もほどほどあって、勉強もほどほどできて、エレキギターがうまい(自称)っていう、ミアにふさわしい素敵な人がいるんです。甲斐先輩はミアを悩ませ過ぎではないですか?ミアのためを思えばあなたのすることは一つ。身を退()くことだわ。」



「はぁ?お前いくら親友だからってでしゃばり過ぎだぜ?そんなこと本人が決めることだろ!お前の意見はまったく関係ない。だが参考に聞くが、その素敵なガチイケメンって誰だよ?名前は?」



「甲斐先輩には直接関係ありませんから言いません。私、ミアが大好きだから、いつだってミアのこと考えて行動してますから。では失礼しますっ。」


 ルイマは言いたいことを言うだけ言ってスッキリして去って行った。



「‥‥‥‥桃山が言ってた噂の同じクラスのイケメンくんってそいつのことか。じゃあ、そいつが実在するのはほんとみたいだな‥‥‥‥。座家の次がまた現れたってか?ちっ、ミアの周りは何でこうなんだよ!」


 雅秋は次々と現れるダークホースたちにうんざりした。




 マナカはSHRが終わり挨拶が終わった途端に目の前にいる担任の田具(たぐ)に言った。


「先生ー!私のスマホー返してください!スマホないとガチ地獄ですぅ。」


「池中さんは反省してるの?まったく。職員室に行かないとないですよ。」


「わかったからー、先生早く、早く!」



 マナカは田具先生の腕を引っ張った。




 職員室の田具の机の横で説教が始まった。時間が刻々と過ぎてゆく。


「先生ー!わかったよーぉ。お願いしますー。はやくしてぇ。」


 マナカは半泣きだ。


「あら、まだ反省がたりないようね?池中さん。」


 さらにお小言が続いた。




「まったくぅ。タグちゃんのせいで10分も無駄にしちゃったじゃん!」


 マナカはやっとスマホを奪還した。職員室から解放されたマナカは生物室に向かって走った。



 生物室の中には既に協力者が来ていた。


「ごめーん!遅れた!仕方ないよ。もう時間ないからここで。急がなきゃヒトミと座家くんが殺られちゃう!」


 マナカは突然制服を脱ぎ始めた。





 リアスと中村が約束の場所で佇んでいた。


「なあ‥‥‥‥いったい真夏多さんと何があったんだよ?まさか、甲斐先輩から奪い取ったのか?」


 石垣にリアスとならんで寄りかかりながら、中村が遠慮がちに聞いた。


「‥‥‥‥中村はこんなとこについて来なくていいんだぞ?どっか行ってろよ。」


 ちらっと中村を見てからまた空を見た。


「‥‥‥‥‥答えになってねーけど。‥‥‥‥いいよ、別に言わなくて。それに俺はどこにも行かねーからな。」


 中村も空を見上げた。太陽の光も既に斜光になってきている。


「中村‥‥‥‥そういうとこ、愛してるぜ。」


 ふふん、としてからリアスが言った。


「はぁー。俺はまだファーストキスもまだだってのにさー。これでおわたーってなったりして‥‥‥。」


 大きなため息をつきながら嘆いた。


「おっ!じゃあ、俺としとくか‥‥‥‥‥?」


 リアスが左腕を伸ばし中村と肩を組んだ。


「ばっ、ばっ、ヤメロー!」


 中村があわててリアスの腕を振り払った。


「するか!バーカ!」


 リアスはすかした顔でふふんと笑った。





「‥‥‥‥おい、来たぜ。」


 リアスが言った。


 校舎の方から人影がやって来る。


「おう‥‥‥‥‥。」


 中村がかすれた声で答えた。






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