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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第2章
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マナカ 東奔西走

 マナカは、生物室から戻ると8組へと向かった。


 昼休みだったが生徒が半分くらい教室に残っていた。

 教室の戸口からマナカは手を上にあげ大きく振りながら大声で呼んだ。


「ヒトミー!」


 のばらからの連絡を受け、絶望で目の前が真っ黒けっけになって、いわゆる死んだ魚の目というものになっていた中村の目がゆっくりとマナカを捉え認識した。


「‥‥‥‥おおっ!マナカっ。」


 中村はマナカを認識できたとたん生気を取り戻した。


「どうしたんだろ?こんな8組まで来るなんて初めてだな。ちょっと待ってて。」


 一緒にいたリアスにそう言うとマナカの元に行った。




「うそだろ?あれ中村のこれ?」


「あのキュートガールが?まじかよー。」


「ええっ!ヒトミと座家くんと土方くんの間にさらにあの子も参戦してきたの?きゃー!」


「もう泥沼じゃん。」



 教室がざわめいた。



 そんなことは今は全く耳に入ることもなくマナカは中村を廊下の隅に引っ張っていった。



「ねぇ、座家くんと甲斐先輩はどうせミアさんを巡ってバトってるんでしょ?」


「ああ、そうだな‥‥‥。」


「ヒトミは関係ないんだから隠れてればいいじゃない!」


「マナカ‥‥‥‥そんなことできねーよ!座家ひとり残して隠れるなんて。それにのばらさんによると、甲斐先輩は俺も処刑する気らしいし。場所もあの西9の松に変更になった。」


「なんでそんなことに‥‥‥。ヒトミは座家くんと甲斐先輩の巻き添えじゃん。でもね、今日、ミアさんの最新の噂が流れて来たんだけど、ヒトミは聞いた?」


「何の事だよ?」


「ミアさんの新しい彼氏の話。」


「なんだよそれ。知らない。ここ8組だからな。きっとまだ届いてないんだ。1組のことは。それでどんなこと?」


「甲斐先輩はミアさんに振られたって。でね、1組にね、ガチいけてるアイドル系男子がいるんだって。私は見たことないけど。その男子とつきあい始めたんだって。みんなの前でいちゃいちゃしてるって。でも本当かわかんないよ。ミアさんはしょっちゅうガセの噂流されてるし。」


「‥‥‥まさか、だって昨日座家と真夏多さんは、キ‥‥‥。でも甲斐先輩が振られたってのだけはもしかして本当かもな。実はさ、俺も甲斐先輩の噂を聞いたんだけど‥‥‥‥。」


「どんな?」


「これも本当かどうか知らないけどさ、真夏多さんが学校を休んでいる日に甲斐先輩が浮気したらしい。甲斐先輩のワイシャツにリップのラメがあちこちについてたんだって。」


「マジ?ミアさんはいつもノーメイクじゃん。それは‥‥‥本当っぽいね。もしかしてそれが元で甲斐先輩は振られちゃったのかな?」


「なんだよ、真夏多さんに振られた腹いせなのか?これって。」


「でもさ、それが本当だったら(ほふ)られるのは座家くんとヒトミじゃなくてその1組のアイドル男子のはずじゃん。」


「でもターゲットになったのは俺たちだぜ‥‥‥‥。」



「そうだね。この世は不条理でできてるの!でも大丈夫。私の防御魔法で助けてあげる。この魔法は一時しのぎにしかならないけど、今日はこれでしのげるはず。」


「‥‥‥‥マナカ、俺のために‥‥‥。ありがとうな。俺たち見捨てられてたんだ‥‥‥。この世界から‥‥‥。ううっ。」


 自分のために何をしようとしているのかはわからないが、マナカが救援を考えてくれていたことに中村は感激した。

 マナカはまるで天から舞い降りた美しい白い翼を持つエンジェルのようだ。


「放課後、私も9の松に行くわ。用意に少し時間がかかるけどなるべく早く行くから。」


 マナカは中村にそう言うと急いで去っていった。




 1年8組発の雅秋の噂と1年1組発のミアの噂がここでミックスされた。


 時間をかけて流れる噂は、起点の時系列も無視し、人に渡るごとに都合のいいように解釈され直してゆく。

 それは生徒間を樹形図のごとく進み続ける。誤謬(ごびゅう)、悪意、羨望、同情、同調、さまざまなスパイスが加味され最終形はバリエーションに富む‥‥‥‥‥‥。



 中村が教室に戻ると砂区が寄ってきた。


「ねぇねぇ、今の子は誰なの?もしかしてヒトミの彼女なのっ?」


 好奇心で目が輝いている。


「‥‥‥‥そうかもな。」


 中村は見栄を張った。断定ではないので嘘ではない。

 マナカのことは好きだったが気持ちをマナカに示したことはない。今はただの友だちである。



「ええっ!じゃあ、座家くんはどうなるのよ?ヒトミは土方くんとあの子と三股なのね。ひどくない?それって。あー、でも座家くんも土方くんとヒトミと二股よねぇ‥‥‥うーん‥‥‥。」



 砂区は楽しそうに悩みながらグループの中に戻っていった。


 砂区は入学当時からリアスに憧れていたが、ある誤解からリアスが土方ミチル(男)が好きなのだと思い込み、それ以来BLウォッチャーとして腐女子ぶりを発揮している。




 マナカはある人物に協力を求めるために廊下を小走りで進んだ。

 スマホがないととても不便だ。


「はあー‥‥‥‥‥。スマホがないと痩せるかもね。昔の人って大変だったんだなー。」





 そして、運命の放課後は刻々と近づいている。




 ミアは帰りのSHRの間から既に緊張が始まっていた。


 ーーーリアスを助けなきゃ。雅秋はリアスを責めるなら私も責めるべきだわ。

 私は雅秋といることを決心している。それは雅秋が好きだからなのに。

 でも、雅秋がリアスを許せないのであれば私は‥‥‥‥。




 柊也はわくわくしていた。


 ーーーショウタイムの始まりだー!主演はハーレム先輩と座家くん。どんなパフォーマンスを見せてくれるのかなー?あははー。さて、フィナーレは?

 ガチたのしみー。




 マナカは自分のこれからの動きをイメージトレーニングしていた。


 ーーーとにかく時間との勝負だね。うん。私のスキルはあのときよりレベルアップしているもん。大丈夫!うまく行けー!私は魔法少女マナカ!

 私の魔法の道具はちゃんと準備万端だもーん!

 ヒトミ、座家くん大丈夫だよ。めいびー。




 のばらはこの果たし合いが生徒会の知るところとなることを憂慮していた。


 ーーー誰も来ない所でもね、あんなとこに何人も集まってたらそれなりに目立つもの。騒ぎになって見つかった場合は何とかごまかさなくては。

 そのために私は離れたところから大観(たいかん)させてもらうわ。




 中村はただただ祈っていた。


 ーーー神様!俺と座家をお助け下さい。どうか奇跡を。

 マナカが何をする気かわかんないけどあまり期待はできない。気持ちはめちゃくちゃうれしいけどな。俺、生きて帰ったらマナカに告る!




 リアスはとうに腹を決めていた。


 ーーー仕方ねーよな。甲斐先輩の彼女っていう事実はわかってたんだから。

 先輩の逆鱗に触れてもあたりまえだよなー。

 まあ、来るならくればいいさ。俺は甘んじて受ける。ミアを思いながら。




 雅秋は今まで味わったことのない胸の痛みを感じていた。


 ーーーミアに他の男が触れるなんて考えたでけで俺の心に火炎が逆巻く。

 俺の彼女だと知っていながら‥‥‥それでもミアを本気で落とそうとするなんて許せねぇ。座家のやつ、二度とミアに近づけないようにしてやる!






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