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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第2章
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刻一刻

 2時間目、数Iの時間に柊也はこっそりルイマにメッセージを送った。


『座家くんのこと、わかったよ。ミアに告白して昨日振られたらしい。これからも友だちとして過ごすことになったんだって。』


『ありがとう。さっきはベランダでこの事をミアに聞いてくれていたんだ?』


 ルイマから感謝の言葉が返ってきた。


『そうだよ。僕たち友だちだろー。助け合わないとねー。』


『ねぇ、柊也はミアといい感じなの?。もしそうなら私、甲斐先輩より柊也を応援するから。』


『まじー?さんきゅー。キリルが協力してくれるなんて思わなかったなー。』



 ーーーあははー。これが僕の実力。大抵のことは思いのままさー。




 2時間目が終わった。


 ルイマは柊也の席に行った。


「さっきはありがとう。」


「どういたしましてー。」


「あのさ、‥‥‥私、失恋したばかりの人に告白なんてできないわ。もう少ししてから考えてみる。」


 ルイマが言った。


「ええっ!今こそチャンスじゃないの?」


 リアスを今すぐルイマに押し付けるという柊也の目論見が外れてしまう。


「いいの。それより、私は恩人の柊也の力になるから。任せておいて!私は前からあの甲斐先輩ってミアには良くないんじゃないかって思っていたの。絶対柊也の方がミアに合ってるよ。」


 柊也によるリアス排除計画の策謀は暗礁に乗り上げつつあるが、リアスはミアに振られたという朗報が入った。しかもルイマが味方という思わぬラッキーを得た。


「うーん。そうだよねー。あの人、色々ヤバそうだよねー。わかりみー。」


 柊也は悪運が強い。


「ねぇ、柊也。廊下に柊也のさらし見に来てる子がいるわよ、ほら。」


 ルイマがあごを少し動かして知らせた。


 開いている教室の後方戸口から3人の女子のグループがこちらを見てきゃぴっている。


「うっ!やっべ。朝気合い入れてセットしてそのままだった!」


 柊也はヘアピンを手探りで外すと、もさもさと髪を乱して前髪を下げた。





 昼休みになった。


 1年3組の教室で、マナカは大急ぎでお弁当を食べ始めた。


「‥‥‥ど、どうした?まるで飢えたハムスター。ほおばりすぎだって!マナカ。」


 一緒に食べ始めようとしていた黒江(くろえ)黒衣(クロエ)がマナカのハム顔写真を撮り、新井アレクが水筒で持参したスロートコートを蓋に入れてマナカに差し出した。


 マナカはもごもごしてやっと口の中のものを飲み込んだあと差し出されたお茶を飲んだ。


「うっ!これ何っ?‥‥‥‥ちょっとね、することがあって急いでるの。」


 クロエが今撮った写真をマナカに送信しながら言った。


「あー、今の送っといた。放課後見るべし。」


「ううっ‥‥‥‥。私の分身マナカ2号は今頃職員室の先生の机の中に。」


 嘆きつつもマナカはもう食べ終わった。


「なんだかわかんないけど手伝おうか?マナカ。」


 いつも気のきくアレクが既にお弁当箱を片付け始めたマナカに言った。


「ううん、大丈夫。ひとりでできるから。」



 ーーーよく考えたら甲斐先輩を止めることなんて、ミアさんにだってのばらさんにだって出来るかわからないもん。


 男子の力にはかなうわけない。ふたりともスレンダーだし。



 そうよ!ハイレベル戦士の攻撃には防御特化スキルで対抗するべきよ。


 ここは、私が何とかして見せる。私が夏休みから鍛えているあのスキルで!


 ふふん!私の、至高、見せてあげる。


 大丈夫だよ、ヒトミ。待っててね。




 マナカは生物室に急いだ。





 雅秋は昼食を取った後、トイレの個室にこもり、鏡を見ながら髪型をチェックしていた。

 昼休みの手洗い場は誰かしらいるため、そうそう鏡ばかり見ていられない。


 雅秋が個室から出ようとカギに手をおいた時、数人が噂話をしながらやって来た。



「‥‥‥‥‥から、同じクラスのアイドル系イケメンに乗りかえたんだって。」


「あの1年の超かわいい子だろ?」 


「あんな超美形でも振られることなんてあるんだなー。」



 雅秋は個室トイレから出た。



 雅秋を見たとたんに今来たばかりの二人の男子は揃って驚いた顔をした。そしてそのまま回れ右して早足で出て行った。


「‥‥‥‥なんだ?あいつら。」


 雅秋が廊下に出て後ろ姿を見ていると、二人組は遠ざかりながらちらりと雅秋を振り返った。





「はぁー、やっと見つけた。」


 雅秋は後ろから声をかけられた。


「‥‥‥‥なんだよ。お前っ。」


 のばらがむすっとした顔でたっている。


「あんた!放課後、騒ぎを起こす気じゃないでしょうね?やめてくださらない?」


「お前には何のかんけーもねーよ!」


 雅秋が冷ややかにのばらの顔を見た。


「そうはいかないわ!あんたが騒ぎをおこしたらあいつに文化祭の劇を中止させる口実に使われてしまうじゃない。せっかくみんなで準備した劇が台無しになるのよ!」


 のばらがヒステリックに言った。


「‥‥‥わかった。」


 雅秋が言った。


「‥‥‥あら、わかればいのよ。ふふん。」


 のばらは満足げに言った。


「じゃあ、人気のないとこに呼び出す。誰にも見られなきゃいいんだろ?あいつに言っておけ。放課後、西の石垣の9の松に来るように。」


 雅秋が妥協してさしあげたとばかりの顔で言った。


「‥‥‥‥あんた、やめる気は無いわけ?何があったかしらないけど。」


「ないね!」


 雅秋は即答した。


「‥‥‥‥そう、まあ、私は騒ぎにさえならなくて、ミアちゃんが無事ならそれでいいんだけど。」


「ならお前もこれ以上これに口出しすんな。じゃあな。」


 雅秋はさっさと戻って行った。





「まあ、あそこなら誰もこないわね。今はテスト前で部活禁止だから走り込みにも使われないもの。じゃあ場所変更ね。ヒトミに知らせなくっちゃ。」



『甲斐雅秋から伝言よ。放課後は西の石垣の9の松まで来るようにって。騒ぎにならないようにしてね。頑張って!』



 のばらは中村に雅秋の伝言を送った。



 のばらからのメッセージを見た中村は絶望した。


「ま‥‥‥まじかよー。のばらさんに見捨てられたぜ。もしかして、今日のラッキーアイテムってのばらさんのことかと思って期待してたのによー。」


「ああ、赤い髪の野バラだもんなー。はぁー、もう、なるようにしかなんねーよ。」


 リアスが他人事のように言った。


「おいおい、何ひとりで悟りを開いてんだよ。教祖にでもなるつもりかよ?」


 中村がリアスの肩を揺すった。






「ねえ、何か思いついた?柊也。」


 昼休み、ミアは教室の後ろのすみっこで柊也と話していた。


「そうだなー、ミアがこっそり見守っていたらいいんじゃない?どうしてもって時には飛び出して止めるしかないよ。突然ミアが現れたらびっくりしてやめるかもしれないし、ミアの言い方次第で止まるんじゃない?雅秋先輩。」



 ーーーまあ、僕は座家くんがぼこぼこでかまわないんだけど。それで座家くんがミアのこと完全にあきらめてくれたら助かるなー。



「そうね。リアスは来るなって言ったけど、行かないわけにはいかないわよね。うん、決めたわ。いざという時は私の身にかえても止めるわ。」


 ミアは決心した。



 ーーーおもしろそうだなー。嫉妬にメラメラナルシスト先輩と、飛んで火に入ったうざ虫くんのバトルの行方



「僕もミアと行くよ。心配だしー。」


 柊也が顔に憂色をたたえて言った。







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