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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第2章
53/102

秘密とベランダ

 2年6組の朝のSHRが終わった。


 のばらがスマホを見るとマナカからのメッセージの着信があったようだ。


「あら、何か部活のことかしら?」


 のばらはメッセージを見た。


『のばらさん!助けてください!放課後、座家くんが甲斐先輩に処刑されるらしいです!ヒトミも怯えてます。』



「‥‥‥‥‥は?なにこれ。どういうこと?」


 のばらの頭のまわりに?マークがぐるぐる廻った。

 すぐにのばらは返信を送った。


『どうしてそんなことになったの?何かあったの?』



 のばらはリアスがミアに告白したことなどみじんこも知らない。まして、それが原因で雅秋とバトルに発展したことなど知るよしもなかった。




 のばらは待っていたが、マナカから返事は返ってこない。



 ーーーこんなメッセージを送ってきといてどうして返信がないのよ?マナカったら。


 部活がない時まで甲斐雅秋になんて関わりたくもないけど。はぁー‥‥‥‥。何がおきているのかしら?でも、ほっといたら騒ぎになってあいつとつきあっているミアちゃんにまで被害が及んでしまうかもだし‥‥‥。


 のばらは雅秋に関わるのはごめんだったがミアをほっとくことは出来ない。




 のばらはスマホのディスプレイを見た。マナカからはやはり何も来ていない。


 ーーーもうー!マナカったら。どうしちゃったのよ?



 それからマナカにもう一度メッセージを送ったが一向にリプライは無かった。


 のばらは中村にメッセージを送ってみた。



『座家くんとヒトミが甲斐雅秋に処刑されるんですって?本当なの?』



 すぐに返事が来た。


『それ、マジですか?何で俺まで?座家だけじゃなかったのか!』


『のばらさーん!俺たちを助けてください!((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル』



 ーーーはぁ‥‥‥。文化祭で劇をやる前にあの人たちに騒ぎをおこされたらそれを口実に中止にされてしまうおそれがあるわ。


 あの生徒会長、雪村(こう)には恨まれているし。


 ミアちゃんのためもあるし‥‥‥‥仕方ないわね。この牧野のばらの出番かしら?ふふふ。



 のばらは中村にディテールを求めた。


『これは絶対秘密です!俺も詳しくは聞けないけど、リアスが真夏多さんに手を出したらしい。それで、甲斐先輩が激おこになってるらしい。放課後ここに座家を連れに来るって言ってた。』



 ーーーはーん。ミアちゃんが原因なのね。そんなことはわかっていたけど、手を出したって?いったい何したのかしら?






 ミアは1時間目の授業が終わるのを、じれじれして待っていた。早く柊也に話を聞いて欲しかった。


 チャイムが鳴り終了の挨拶が終わるとすぐに柊也の席に向かった。



 席に座っている柊也の耳元で周りに聞かれないようにそっと耳打ちした。


「柊也。ちょっといい?秘密で相談があるの。誰にも聞かれたくないし、すごく急いでいるの。放課後になる前になんとかしないといけない問題があるの。」


「どうしたのー?」


 柊也は口の動きだけで声に出さずに言った。



「あのね、雅秋とリアスのことでちょっと‥‥‥‥。」


 周りを気にしながら柊也の耳元に手を添えてささやいた。


 ミアの目はきょときょとしていて落ち着かない気持ちをそのまま表している。



 ーーー僕ってほんと、ラッキー!


 座家くんとミアのこと、キリルのために探らなくちゃいけなかったのに向こうから来たー。僕って神に愛された人だよねー。まじんこ。



「ベランダで話そうかー?急がなきゃ時間がないよー。」



 ミアと柊也は教室のベランダに出ることにした。

 ここは本来は生徒立ち入り禁止とされている場所だったが、生徒たちが秘密の話をしたり、カップルの語らう場所として生徒たちの間ではこっそり利用されていた。


 ただし、校庭側から見つからないようにベランダの囲いより下にしゃがまなくてはいけない。



「僕とミア、ベランダ行きまーす!よろー。」


 柊也は宣言してから出た。これは生徒間での決まりだ。これで先生が来る気配がしたら伝達が回り、先生到着の前に教室の中に戻れるのだ。



 ベランダにでるとふたりは向かい合ってしゃがんだ。



「膝、大丈夫?ミア」


 柊也は目の前にあるネット包帯に包まれたミアの右膝を見た。


「うん。大丈夫よ。柊也の手当てのお陰よ。」


 ミアが微笑んだ。


「ふーん。ミアはセクシー系なんだー。黒なんだー?」


 柊也の視線が膝からずれていた。


「え?やだっ!もうっ!横に並んで、柊也。」


 ミアが赤面して向きを変えた。


「ミアが見せたんじゃん。僕のせいじゃないよー。やだなぁ。」


 柊也は心外な顔をして言った。



 ふたりは教室の窓の下の壁に寄りかかり肩を並べ話しはじめた。


「これは、秘密よ。約束して。絶対誰にも言わないって。」


 ミアが右側にいる柊也の目を見て言った。


「うん、約束ねー。」


 柊也は軽い調子でうなずいた。


「‥‥‥‥実は、柊也にケガの手当てをしてもらった後、私、リアスに会って‥‥‥‥、その時リアスに告白されたの。」


 ミアは自分の膝を見ながら言った。


「ふーん。それでミアはどうしたの?」


 柊也は興味深そうに目を見開いた


「昨日、返事をしたの。これからもリアスと私は友だちとして過ごしていこうって約束したのよ。」


「妥当な答えじゃん。何か問題なのー?」


 柊也は首をかしげた。


「雅秋が‥‥‥怒ってしまって。彼氏のいる私に告白するなんて図々しいって言って。それで、今日の放課後、リアスを呼び出してボコる気でいるみたいなの。」


 柊也にはミアの目がわずかに潤んだのがわかった。


「えっ、ミアは断ったのに?気持ちを伝えただけでも許せないんだー。すっごい焼きもちやきなんだねー。なんかやばくない?そのハーレ‥‥じゃない‥‥雅秋先輩って。別れたらストーカーになるタイプだねー。」


 柊也は驚きと呆れを交えて言った。


「‥‥‥‥‥そ、そう?かな。」


 ミアの顔色がわずかに悪くなったようだ。


「ああ、ごめーん。本当のこと言っちゃって。で、それを止めたいんだ?」


「うん。雅秋は私に内緒にしていたつもりらしいけど、友だちからさっきメッセージが来てわかったの。」


「そうだったんだー。ちなみに座家くんは納得したのー?ミアの友だちのまま宣言で。」


「うん。リアスはわかってくれたの‥‥‥‥。お願い!だからリアスを助けるいい方法はないかしら?」


「急には思いつかないけど、まだ時間はあるしー。帰りまでになんとかなるといいけど。僕も考えておくからー。」


「‥‥‥‥ありがとう、聞いてくれて。じゃあ、もどりましょ。、柊也。」


 ミアが立ち上がった。


 柊也がしゃがんだままミアに両腕を伸ばして見せた。


「引っ張ってー、ミア。」


「はいはい。」


 ミアがくすりと笑うと柊也もにこっとした。


 ミアは柊也と両手をつなぎ、引っ張って立つのを手伝った。


「さんきゅー、ミア。うわっ!背中が真っ白!」


 寄りかかって壁に着いてた部分が白く汚れてしまった。


 柊也はミアの背中とスカートのおしりをパタパタはたいた。


「ミア、今日スカート長いよね。」


「うん、今日は膝が隠れるようにしてるの。ウエストで折ってないから。」


「ふーん。僕の前髪と女子のスカートってそういう点では同じだねー。あはー。」


「うふふ、そうね。ねぇ、柊也も背中汚れてるわ。」


 ミアも柊也の背中をパタパタ手で払った。


 これは教室の中から見たらミアと柊也はいちゃついているようにしか見えなかった。


 教室に戻ると皆ニヤニヤしてミアと柊也を見た。



「ミア、柊也と仲良く何の話?ミアは甲斐先輩より、柊也の方が似合っていい感じみたいだけど。」


 ルイマが寄ってきた。


「キリル。そんなんじゃ‥‥‥。雅秋のことで相談しただけ。男子のことは男子に相談した方がわかると思って。」


「そう。好きな人がいると悩みも増えるのね‥‥‥‥。」


 ルイマが物憂げに言った。


「‥‥‥‥?あれれ、もしかしてキリルに誰か‥‥‥?」


 ミアが興味津々の顔になった。


「えっ?違うってばー、ミア。」


 ルイマはあわてて否定した。


「うふふ、キリルが彼女なんて羨ましい人だわね。私が男だったら絶対キリルを彼女にするわ。」


 ミアにとってキリルは親友であり、こんな風になれたら‥‥‥というまぶしい存在でもあった。


「ミア‥‥‥私だって。」


 ーーーミアは私の憧れなのよ。


 ミアの誰もがうらやむ美しい容姿も、ピュアすぎる内面もすべて。

 ザッカリーよりずっと前からミアを見ていたんだもの。

 私、ミアのためなら何だってできそうな気がするの。





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