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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第2章
52/102

起因 偶因 誘因

火曜日の朝、SHR前に雅秋がミアの教室前に現れたところから。

 「ミア、おはよう!もう大丈夫、?‥‥‥ねえ、廊下で甲斐先輩を見たわ。」


 ルイマが言った。


「おはよう、キリル。もう平気よ、ありがとう。あら、本当に雅秋が。どうしたのかな?」



 雅秋が朝からわざわざミアの教室の前まで来ていた。



 ミアは内心緊張した。



 ーーー急に来るなんてどうしたのかしら?


 もしかして、私の昨日のリアスとのことで?‥‥‥‥ううん、そんなこと知ってるわけない。リアスだって誰にも言うわけないわ。



 ミアは昨日、夕暮れが終わりを告げる頃、リアスに自分の正直な気持ちを伝えた。


 緊張してしまい、事前に一生懸命考えて来た言葉は飛んでしまった。

 なので、その時思っていた心の声をそのまま言ってしまった。本当は感情的なことを言うつもりはなかったのだけども。


 そしてミアはこれからはリアスとは友だちとして過ごしていくことを告げた。


 リアスはそれを穏やかに受け入れた。

 そして美しい夕闇に包まれながらミアに今までの想いを語りつつキスをした。


 ミアにとってそれはフィクションのように美しい出来事で、リアスとのこの時間のことについては誰にも一切触れられたくはなかった。




「おはよう、雅秋。どうしたの?朝からこんな所に来て‥‥‥。」


 ミアはなるべく困惑を隠して言ったつもりだった。


「なんだよ?ミア。せっかく会いに来たのにそんな困ったみたいな顔して。」


 雅秋が心外な顔をした。


「だって、予告もなく突然現れるから‥‥‥で、何?」


 ミアはなぜかつっけんどんな言い方になってしまった。


「ミア、なんか冷てーな?んー?」


 雅秋はミアの目を険しい顔で見た。


「なあに?私とけんかしに来たの?」


 ミアは言い返した。


「‥‥‥‥‥いや、今日は帰りに用があってミアと帰れないから今ミアの顔見に来ただけ。」


 雅秋は、ミアの心がまだリアスに寄っていることを感じ取った。


「そう、3年生は中間テストだけではなくて面接の練習とか作文の対策とか受験の準備もあって大変な時期だものね。がんばってね。雅秋。」


 ミアにそんな気はなくとも、雅秋はミアの言葉を空々しく感じた。


「‥‥‥‥ミア、昨日の俺との誓いわかってるよな?」


 ミアの目を見つめて雅秋が言った。


「‥‥‥うん。」


 ミアは目をそらしてうなずいた。




 予鈴が鳴った。



「じゃーな。気をつけてさっさと帰れよ、ミア。」


 雅秋はそう言い残して背を向けた。


 雅秋はミアの態度により胸にぐさっぐさっと痛みが突き抜ける感覚を味わっていた。が、プライドの高い雅秋は一切表に出すことはなかった。ミア相手以外では感じたことの無い痛みだった。





 ーーー何か変。私も雅秋も。


 雅秋は本当は何しに来たのかしら?一目私に会うためにわざわざ?


 廊下から階段で雅秋が曲がるまで雅秋の後ろ姿を見つめた。ミアは何か心がざわざわして落ち着かないまま教室に戻った。







 SHRの最中、中村はマナカにメッセージを送った。




 マナカはスマホをこっそり見た。メッセージが中村からだとわかると画面を開いた。


『マナカ!Help us!座家VS甲斐先輩が始まった。このままじゃ放課後に座家が殺られる!』


『まじ?』


『お前、甲斐先輩と張り合えるじゃん。なんとかしてくれよー。』


『ヒトミったらばかなの?部活の活動中以外で言えるわけないじゃん。』


『‥‥‥だよな。わかった。ごめん。』





 中村からメッセージを受け取ったマナカはすぐにミアにメッセージを送った。


『ミアさん!緊急速報だよ。』


『放課後、甲斐先輩に座家くんが殺られるそうです。何でだかわかんないけど。』


『ミアさん、助けて。ヒトミまで殺られちゃうかも。』



 ーーー甲斐先輩のことならミアさんしか止めらんないよ。きっと‥‥‥。

 あっ、もう一人いたよ!甲斐先輩と張り合える人。


 マナカは先生の目を盗み、その人物にもメッセージを入力し、送信を押した‥‥‥



「‥‥‥池中さん?違反ですよ。まだSHRの時間です。規則通りスマホは帰りまで没収です!」


 担任教師が教卓から注意した。


 マナカが机の陰に隠しながらスマホをいじっていたのがバレた。


「えーーーー!」


 マナカは担任にスマホを奪われた。


「帰りに職員室まで取りにきなさい!」


「そ、そんなー!うぇーん。」



 左隣の席の女子が言った。


「ばっかねー、マナカったら。うちらこんなことしてたらばれるに決まってんじゃん。」


 右隣の男子も同調した。


「‥‥それな。俺ら一番前の席だぞ?しかも池中、教卓の真ん前じゃん。何考えてんだよ?」


「‥‥‥それな。知ってた。」


 マナカは観念して言った。悟りを開いたようだ。




 マナカは中村のために敢えて危険を犯したのだった。




 ミアはSHRが終った後、マナカからのメッセージを見た。



 ーーーえ?‥‥‥どういうこと?雅秋がリアスを?


 雅秋は昨日のことは知らない。私とリアスだけの秘密。


 じゃあ、土曜日にリアスが私に告白してキスしたことへの報復?

 あのことは雅秋は許してくれたんじゃなかったの?


 放課後は‥‥‥‥。雅秋は用があるって言ってた。まさかリアスに何かするつもりなの‥‥‥?私にはさっさと帰るように言っておきながら。



 ミアはマナカに詳しく聞こうと思って返信したが一向に返事はなかった。


 ーーー雅秋はこの事を私に隠している。ではリアスに直接聞けばいいわ。




 ミアはリアスにメッセージを送った。


『今日、放課後に雅秋と会う約束があるの?』


 リアスからの返信は、


『絶対来るなよ。ミアが来て俺をかばえば余計こじれる。』




 予鈴が鳴った。後5分で1時間目が始まる。英語の先生はまもなく来るだろう。


 生徒たちは皆自分の席についていて、近くの席同士で話をしたり、スマホをいじったり、予習をしたりしている。


 ミアはスマホをしまった。コミ英の教科書とノートを机の上に用意した。


 ーーーどうしよう‥‥‥‥。誰かに相談したいけど‥‥‥。キリルは‥‥‥だめ。キリルは雅秋を嫌っている。きっとリアスの味方しかしないわ。もっと中立で考えられる人でないと‥‥‥‥そうだわ!柊也なら。次の休み時間に相談をしよう。



 教室の真ん中辺りの席のミアは窓際の一番後ろの角の席にいる柊也を振り返って見た。


 柊也もこちらの方向を見ていたらしい。ミアと目が合った。

 柊也はミアに小さく手を振って微笑んだ。

 ミアも同じように返した。


 ーーーうん、柊也ならいいかも。


 柊也なら、きっと偏りなく考えてくれるわ。きっと。



 今、柊也とミアが合図し合ったのを何人もの生徒が目撃した。


 今朝も教室の隅で顔を出した柊也とミアが親しげに話していたのを皆知っている。そして柊也が顔をさらすのは、やる気を出している時とお気に入りの子の前だけだと言うことはクラスの生徒は皆知っていた。


 さらに、『1組の放送チャンネル』こと白玉(しらたま)かのこが、朝の柊也とミアの言葉を聞いていた。



『じゃあ、ミア。ずーっと仲良くしようねっ。僕、ミアが大好きだよー。』


『うふふ。ありがとう、柊也。』




 その直後、廊下に雅秋が現れ、ミアが気難しい顔で教室に戻ってきた。



 昼休みが終わる頃には、ついにミアは雅秋と別れ、以前から噂のあった柊也と本格的につきあい始めたという噂がすっかり広まっていることになるのは必至だ。






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