リアス 恋のΩ《オメガ》
リアスは自分が柊也の手玉に取られていたことに気がついた。
「あ~あ。磯部にただ転がされただけだった‥‥‥‥。全然ミアの役にたたなかったな、俺。」
ーーーしかも、ミアは俺のせいで磯部の部屋に行く事になったなんて。
ミアはひとことも言わなかったからって。
俺は何にも気づくこと無く‥‥‥‥‥相当なボケ野郎だな。
秋空を見上げてはぁっと息を吐いた。
「もう、帰ろ‥‥‥。」
リアスはとぼとぼ歩き始めた。
スマホを見ると中村から『甲斐先輩非常事態特別警報』というメッセージが来ていた。
ーーー甲斐先輩か。こっちはこれからが本番だな。昼の呼び出しは結局何のためだったのかわかんなかったけど。あーあ。今日はもう甲斐先輩の相手はごめんだな‥‥‥‥。
磯部にいいようにからかわれた上、これから甲斐先輩と対決はつらい。
ミアは今頃何してるんだろう。俺のこと考えてくれたのかなー‥‥‥‥まだスマホつながんねーのかな?試しに送ってみっか。
『休みだったんだな。大丈夫?』
画面を見ているとすぐに既読になった。
ーーーおっ!やった。ミアが見てる。
すぐに返信が来た。
『今朝は約束していたのにごめんなさい。』
『リアスに話したいことがあるの。いつならいい?』
リアスはすぐに返信した。
『ミアの返事なら今すぐに聞きたい。』
『私の気持ちがちゃんと伝わるように直接話したいの。』
『どこにいるの?まだ学校?日良豆駅で待ち合わせでいい?』
リアスは日良豆駅に到着する時間をミアに知らせた。
ミアからのメッセージをじっと見つめながら、リアスは次第に緊張してきた。
ーーーミアは何を言う?俺、磯部と話してから、もう全てが悪い予感しかしねーよ‥‥‥‥。あれから俺の心に暗雲が少しずつ立ち込め始めている。
俺は日良豆駅に到着した。階段を下りつつ改札の向こうを見回すと、土曜日に俺がミアを待っていた場所で、私服姿のミアが立っているのが見えた。深紅のロングスカートに薄い上着を羽織っている。離れて見ていてもすぐにミアだってわかった。誰か知んないけど、俺の知らない男と話している。
誰だ?まさか俺と二人で話したくなくてだれかを連れてきたのか?
俺の心はただえさえナーバスになってんのにさらに濃く暗雲が立ち込めて来た。
俺は改札を出てミアのもとへ近づいて行った。
背の高い俺はすぐにミアの目にとまったようだ。ミアは俺をはっと見つけた瞬間うれしそうな顔になった。そして俺に向かって小走りで寄ってきて右腕に巻きついてきた。
「うわっ!ミア?」
何か、これって彼女になったミアと待ち合わせみたいじゃん。いきなりスッゲーいい気分なんだけど。
俺がミアを見るとミアはさっきいた辺の後ろを見ていた。
俺もミアの見ている方を見ると先ほどミアと話していた俺より年上っぽい男が憎々しげに俺を見ていて目が合うとくるりと向きを変え去って行った。
「ご、ごめんなさい、リアス。いきなりくっついたりして。」
ミアはほほを赤らめ、俺の顔をチラリと見てから腕を放した。
「誰?」
一応俺が聞いてみると、
「さあ?」
ミアは素っ気なく答えた。さして気にも留めていないようだ。きっとよくあることなのかもしれない。
もしミアが彼女になったら油断なんねーよな。学校以外でもこんなんじゃ‥‥‥‥。
「ミア、どこに行って話す?」
「そうね、落ち着いて話したいの。私‥‥‥。」
ミアの目が伏し目がちになった。
あー、これって‥‥‥‥。いや、まだ希望は捨てたくはない。まだ決定的じゃない。一縷の望みはある。はず。
「じゃあ、あっちの川の方の緑道のベンチにでもいこうぜ。あそこなら犬の散歩の人くらいしか来ねーから。」
俺がいうとミアは頷いた。
緑道までの道、俺たちは黙って歩いた。俺は一歩下がってついてくるミアを時々振り返った。その度にミアは俺の顔を見てかすかな微笑みを浮かべた。
‥‥‥ミア、俺にスッゲー気を使ってるよな。この態度。ミアの答えはほぼわかったも同然‥‥‥。
左右に低い植え込みと等間隔に街路樹の植えられた歩行者専用の緑道の脇には所どころにベンチが配置されている。
向こうに犬を散歩させている人が見えるけど、この辺には誰もいない。
辺りももう薄暗くなってきている。秋の日は釣瓶落としって言うしな。
緑道の樹の下でミアが俺の正面にたって俺と目を合わせた。
何か言い出そうとしているけど、もじもじしてなかなか始まらない。
俺から切り出した方がいいだろうな‥‥‥。
「ミアの気持ちを聞かせて。」
俺が言うと、ミアの目が少し潤んだのがわかった。
ほんとミアは泣き虫だ。俺の好きなミアは。
「‥‥‥‥‥‥リアスが悪いのよ。」
ミアが言った。
「ミア?」
何だよ。いきなり‥‥‥‥‥‥。
「リアスが‥‥‥リアスがもっと早く言ってくれなかったから‥‥‥。」
ミアの瞳から涙があふれてこぼれた。
「‥‥‥‥‥‥ごめん、ミア。」
俺はミアを抱きしめた。
俺、やっとミアと両思いになれたんだな。でも‥‥‥‥‥。
「俺、ミア以外に好きな子なんて見つけられんのかな‥‥‥‥。」
夕焼けもほとんど消え空に瞬き始めた星を見上げながら言った。
「‥‥‥‥私、その子に焼きもちをやきそうだわ。」
ミアは俺の胸の中でつぶやいた。
「何だよ、俺はずっと甲斐先輩に妬いてるぜ‥‥‥‥‥。」
俺はミアの長いまつげの濡れた瞳を覗き込んで言った。
「私、わがままよね。自分勝手よね。雅秋とつきあいながらリアスも好きになっていたなんて。」
ミアの言葉が俺の心臓に染み込んだ。これは俺が死ぬまで消えはしない。
「‥‥‥‥‥‥私のことずっと想ってくれてありがとう。リアス。でも、明日からは友達よ。」
ミアは顔を上げ俺を見て、思いきったように言った。
俺のせいでミアを苦しめて泣かせちまったな。ごめんな、ミア。でも俺は黙っていられなくなってたんだ。ミアと会うごとに、ミアと話すごとに。
最後に、俺にこの想いを昇華させて。いいだろ?ミア。
「‥‥‥‥‥じゃあ、今日はまだいいよな?」
俺はミアに口づけをした。
今度は今までの想いを込めて。3年半分の俺の想いを。
俺の憧れ続けた美しいミアが、今だけは、俺だけを見ている。
「リアス、今日のこと、私、一生忘れない。」
俺だって忘れるわけない。
明日からミアは友達だ。
俺のミアへの想いは心のずっと奥の方に閉じ込める。ミアをこれ以上困らせないように。
ただし、ミアが甲斐先輩に泣かされたり、別れた場合はこの限りではない。




