波乱の月曜日 その4
「ミア‥‥‥‥一体ミアにとって座家ってなんなんだよ?何でそんなにあいつにこだわる?告られてどきどきすんのとそいつが好きかってのは別のことだろ。」
雅秋が険のある目つきでミアを見た。
「‥‥‥‥それは‥‥‥、私もはっきりとは言葉にできないけど。土曜日にリアスが中1のときから私のことを想ってくれていたことを知って‥‥‥私何だか心に響いてしまったの。それに‥‥‥あのことも‥‥‥忘れられなくて‥‥‥。」
素直なミアは心の内をそのまま正直に言ってしまった。
「‥‥‥あのことって?」
「え?リアスに全部聞いたんでしょう?さっき雅秋はそう言ったよね。」
ミアが上目遣いでおどおどしながら言った。
雅秋はリアスがミアに告白したことの他には聞いてはいなかったが、今のミアの言葉から何かその他の知らないことがあるのを察した。
それは何なのか?うまく聞き出さないといけない。
「ああ。聞いた。それで、その『あのこと』についてどう思ってるんだ?」
雅秋はさも全て知っているかのように聞いた。
「雅秋が‥‥‥もっとすっごく怒っているかと思ったけど、何も言わずに許してくれてよかったわ。ごめんなさい‥‥‥‥雅秋。あれは‥‥‥そ、その、いきなりだったし‥‥‥。でもそれが私が余計にときめいてしまった原因ね。だって‥‥‥‥ドラマチックで素敵に感じて‥‥‥。」
ミアが少しほほを紅潮させつつ右手の指で口元を隠した。そして恐縮したように雅秋から目をそらして言った。
雅秋はミアの言葉と態度で察した。
そしてそれが正しいのか確認した。
「座家がミアにキスしたこと?」
「‥‥‥‥ごめんなさい。」
ミアがうつ向いた。
「‥‥‥‥ミアはいきなりされちまっただけだよな?」
雅秋が確かめた。
「‥‥‥‥‥そうだけど。」
雅秋はミアを抱きしめた。
「ミア‥‥‥‥俺だけを見ていて。今ここで誓って。」
「雅秋?」
「俺はミアだけでいい。ミア以外いらない。前にも言っただろ?ミアは?」
「‥‥‥雅秋、ありがとう。そんなに私のことを想ってくれて。」
「雅秋、ワイシャツに私のリップが‥‥‥‥。雅秋のくちびるにも。」
ミアがハンカチを取り出しキラキラになった雅秋の口を拭いた。
ワイシャツも拭いたが取れなかった。
「ほとんど透明に近い色だからそんなには目立たないけど、パールでキラキラが‥‥‥‥。洗わないと落ちないわ。」
ミアは自分のくちびるも拭いた。
「仕方ない。俺がミアを抱きしめたせいだ。それより、俺、学校に戻るから。今戻れば6時間目に途中から出られる。」
「ごめんなさい、雅秋。私のために抜け出して来てくれたのね?」
「‥‥‥‥ミア、俺たちの誓いのキス。忘れんなよ。」
ミアはほほを染めてうなずいた。
「スマホ電源すぐ入れとけよ。じゃあな、また明日。」
雅秋は急いで学校に戻ることにした。
リアスにお見舞いするために。
リアスへの怒りを抱え学校に戻った。6時間目の授業中で、誰もいない廊下を自分のクラスへと向かった。
授業はふわふわした落ち着かない気分で聞いていた。途中から入った教室内では自分だけ浮いているようなおかしな感覚に包まれたままだった。
授業が終わり先生が退出すると桃山が早速やって来た。
雅秋の前の席の椅子に大股開きで後ろ向きに座って雅秋と向き合った。
「なんだよ?甲斐。戻って来たのかよ?どこ行ってたん‥‥‥‥マジかよ、そういうこと?」
雅秋の顔を見て桃山がニタニタし出した。
「キモいぞ。なんだよ、その笑いは?」
雅秋がうざそうに桃山を見た。
桃山は雅秋の机の上で左手でほお杖をついた。雅秋の目を見ながら右手人差し指で自分のくちびるを指差した。
「ラメが残ってる。」
「うっ!鏡見んの忘れてた。この俺としたことがっ。」
がっと立ち上がると雅秋はあわてて手洗い場に向かった。
「‥‥‥‥‥甲斐、夏休み明けからちょっとすること変わったよな。」
雅秋の後ろ姿を見ながら桃山はつぶやいた。
リアスはSHRが終わると急いで荷物をリュックにつめこんだ。
「座家ぁ、何慌ててんだよ。今日は急いでばっかじゃん。」
中村がリュックを既に背負ったリアスに言った。
「おう!早く1組に行って見張ってねーと逃げられるかもしんねーしな。」
「誰のことだよ?真夏多さんのことか?」
「ミアは今日は休みだ。いない方があいつに聞きやすいしな。」
「え?もしかして俺の好きな切取さん?」
「ちげーよ。男。」
「なーんだ、じゃあな。座家。」
中村は興味を失って自分の席に戻って帰り支度を始めた。
リアスは1組へと向かった。
1組はちょうど帰りのSHRが終わった所らしい。帰りの挨拶がされていた。
リアスが廊下で待っていると戸がガラリと開き、中から数人の生徒が出て来た。
人が途切れたところでリアスは教室の中を覗いて見ると柊也がルイマと話しているのが見えた。
「よお!磯部。」
リアスが声をかけると柊也とルイマがこっちを見た。
ルイマが廊下まで来て言った。
「ねぇ、柊也と何の話なの?この間の撮影と関係があるんでしょ?」
難しい顔で言った。
「いや、別にねーよ。あの時俺たち知り合いになったじゃん。そんでちょっと教えてもらいたいことがあってさ。男同士でな。おーい、磯部!早く来いよ。」
リアスはルイマを排除した。
「‥‥‥ふーん。どうせミアのことなんだろうけど。いいわ、後で柊也に聞くから。」
磯部が廊下に出て来た。
「別に僕は座家くんと話すことはないんだけどー、いいよ。座家くんは真夏多とキリルの友達だからねー。今回だけ特別だからねー。さあ、行こっ。」
柊也は口元はにこやかに言った。前髪で目はよくわからなかったが。
柊也とリアスが揃って去っていく後ろ姿をルイマは訝しく見送った。
「西の石垣の9の松へ行こうぜ。あそこなら誰も来ねーから。」
リアスが言った。
「何だよ?誰も来ないとこに僕を誘うなんてー。僕を襲う気かー?」
昇降口へ向かいながらニヤニヤして柊也がリアスを見た。
「‥‥‥‥‥‥」
リアスは無言のまま横目で柊也を見た。
「‥‥‥やっぱ、聞いてたんだー。真夏多から。ふーん。そんなこと話すなんて座家くんは真夏多とほんと仲良しなんだねー?もしかして‥‥‥‥いいや、後で聞くからー。」
機嫌良さげにホップするように柊也はリアスの隣を歩いていた。
リアスが急いで去った後、中村は数人と立ち話で砂区愛から最近の校内の噂及び芸能、最新ゲーム情報を仕入れていた。
「なんだよ!中間テスト終了とともにあのゲームのイベントも終了なんて鬼じゃん。くっそー!」
「テスト最終日に速攻家帰ってガンバれー!」
8組の教室にはまだ数人づつ固まった生徒のグループがいくつか残っていた。
「おい、中村!来い。」
教室の戸口に雅秋が現れた。
「うわっ!朝も来たのに又かよっ!甲斐先輩っ。」
中村がびびった声をあげた。
「きゃー、甲斐先輩かっこいー!朝も帰りも来て、ヒトミに何の用ですかぁ?」
あっというまに関係のない砂区たち残っていた女子に囲まれた。
「ふぅ、ここのクラスの子は乗りがいいな。ねえ、君たち、中村連れてきて。」
「はーい!」
中村は女子に囲まれ人身御供のように押されて雅秋の元へ連れていかれた。
「君たちはもういい。ありがとう。」
雅秋がさわやかな笑みを見せると女子は教室の窓際に集まりきゃーきゃーと騒ぎだした。
「近くで見るとさらに素敵~!」
「うんうん、見た見た?ワイシャツの‥‥‥‥あれ。」
鋭い砂区はすぐに気づいていた。
「え?何」
「何かリップのラメがついてた!この辺とここの辺に。」
自分のワイシャツを指差しながら砂区が言った。
「うっわー!やばいじゃん。誰がつけたのー?」
得意気に砂区が声をひそめて言った。
「‥‥‥‥あのね、私の情報によると彼女の真夏多さんは今日は休みなのよ!これって‥‥‥!」
「うっそー!きゃー!浮気なの?彼女が休みの間に!」
砂区のお陰でまた1つガセの噂が流れるのは間違いない。




