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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第2章
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波乱の月曜日 その2

 ルイマは柊也にリアスの伝言を伝えると自分の席に戻った。


 空席になっているミアの席を見つめながら考えた。


 ーーーおかしい‥‥‥。今日は何かおかしいわ!


 ミアが休むなんて。スマホもつながらない。ザッカリーのしらじらしい返信。急にここに現れた甲斐雅秋。柊也とザッカリーという妙な組み合わせ。


 何が起こっている。


 何か不穏な予感‥‥‥‥。





 4時間目が終わった。


 リアスは急いで30秒で昼食を取った。中村もつられてほんの3分で食べ終わってしまった。


「おい、そこまで急がなくてもよくね?蒸しパンを握って食うなんて、蒸しパンのいいとこ失ってるぜ?」


 中村が妙に(たぎ)っているリアスに向かっていった。


「だってさー、やっぱ落ち着かねーじゃん。正直めちゃ緊張してる。」


「‥‥‥‥だよなー。俺、陰から見守ってっからさ。死ぬんじゃねーぞ。」


 中村はなぜかペットのハム二郎が引き出しに挟まって死んだ時のことを思いだしてうるうるした。


「いや、もしもの時俺の屍はお前が拾ってくれよ。」


 中村の顔を見てリアスは友情に感激した。


「中村!」


 リアスは中村に向かって右手を出した。


「座家!」


 中村も右手でがっちりリアスの手をつかんだ。

 固く手を握りあって見つめ合う二人は昼食中の教室の中で密かに腐女子達の注目の的となっていたがリアスも中村も周りのことは気づいていなかった。


「よし、行くぞ!」





 1Fの階段まで降りた所で中村が言った。


「じゃあ、俺は渡り通路柱の陰から見守ってっから。行ってこい!座家。」


「ああ、行ってくる。」


 リアスは中庭に向かった。




 ーーー良い天気だなー‥‥‥。ミアは今何してんのかな?


 この結末は‥‥‥‥‥どうなる?


 リアスは伝言された池の脇に生えている樹の下に立ち、心とはうらはらに澄みきってさわやかな空を見ながら雅秋を待った。



 まだ他の生徒たちは昼食中なのだろう。中庭にはリアスしかいなかった。


 向こうから誰か来る。


 この学校で一番人気の男子、甲斐雅秋。


 ーーー来た!やっぱこうして見ると男から見てもかっけーよな。甲斐先輩。

 だからって‥‥‥ミアは俺の事だって好きだって言ってくれたからな!



「よお、座家。待った?お前はえーな。」


 雅秋は普段通りの雅秋だった。


 ーーー余裕ってか?


「‥‥‥‥話ってミアのことだろ?」


 リアスが先制で言った。


「ああ、そうだ。ミアの様子がおかしい。お前のせいだろ?」


 鼻で嗤うように言った。



 ーーーそう、俺が告ってキスまでしたせいだ。なんだよ、やっぱ全部聞いてたのかよ?それなのに甲斐先輩のこの余裕の態度‥‥‥。これってまさか、



 [ 可能性2‥‥‥俺は振られた。甲斐先輩の冷笑と共にそれを告げられる。]



 なのか?これで最後通牒になるのか‥‥‥‥‥?



「そうだよ。俺のせいだよ!俺がミアに告ったせいだ。‥‥‥‥で、ミアは何て言ったんだよ?」


「は?何言ってんだ?座家‥‥‥‥?お前がミアに告ったって‥‥‥?」


 雅秋の眉間に力が入った。雅秋には寝耳に水の出来事だった。


「‥‥‥‥‥座家、それは事実なのか?」


 雅秋の目は鋭く冷たい目つきに変わった。


「座家‥‥‥‥‥お前、ミアは俺の彼女だぞ!わかってんだろっ!」


 雅秋はリアスにつかみかからんばかりの勢いで詰め寄って言った。


「‥‥‥ミアから聞いてなかったのか?甲斐先輩。その事で呼び出したんじゃ‥‥‥‥。」


 ーーーおおおおお?どーゆーこと?




 雅秋は何も知らなかった。


 ミアは雅秋には何も話してはいない。




 ミアは夏休み中に雅秋に告白された。あれははっきり言ってセクハラ同然に感じていた。その時点ではミアにとって、雅秋の好感度は限りなく最低であった。

 そんな男子に壁ドンされたのだ。迷惑でしかなかった。


 その後、美術部の先輩の久瀬ゼツガが、突っかかってきた雅秋とケンカになり、はずみでミアに告白したことがあった。

 しかし、その時も売り言葉に買い言葉のような告白の上、美術部員たちの注目の中だったため、ミアは恥ずかしくなって逃げ出してしまった。

 これが愛しい黒歴史として思い起こされるのはミアが大人になってからのことである。今時点ではいい思い出とは言い難かった。



 しかし‥‥‥リアスの告白にはときめきを感じた。

 ミアにとってリアスは友達であったが、好感度はほぼ満点といってもよかった。そのリアスに二人きりの時、思う様の想いをぶつけられミアの乙女心は高鳴った。

 しかもその時リアスにされたキスもミアにとってはロマンチックに思えた。


 ミアはそのことに罪悪感を感じた。そんな風に感じる自分は雅秋に申し訳ないと思った。


 ミアは自分は雅秋のことが好きだと自覚していた。



 常識的な人間ならばどちらかにお断りの言葉をやんわり伝えることだろう。遊び人だったなら二股三股も構わず上手くつき合うことだろう。


 ミアの場合は‥‥‥‥ミアの聖女のような優しさは時に優柔不断となった。

 ミアに情熱的におしてくる雅秋と、3年以上もミアを想い続けてきたと告白したリアス。

 ミアは雅秋と別れたいわけではなかった、だからと言ってリアスの長年の想いを無下にしてリアスを傷つけることはできない。


 ミアは、土曜日の夜、リアスからのときめきの告白を思い返して乙女心に浸っていたところに雅秋からメッセージが届いた。



 『ミア、今日はどうだった?俺は家で勉強してたぜ。一応受験生だしな。』


 『月曜日の帰りは部活ないし、二人で過ごそうぜ。おやすみ、ミア。』



 ミアはこれを見て、罪悪感に包まれた。

 雅秋とつきあっていながらリアスにときめいてしまう自分。


 こんな自分は雅秋に嫌われてしまう。リアスは索とは違い亡霊ではない。実際ここにいる普通の人間なのだ。

 いくらミアを愛している雅秋でも許せないだろう。


 私と雅秋はもう終わりなの‥‥‥‥ひとり思い詰めたミアは事情も全く知らない雅秋にいきなりの返信を送った。



 『ごめんなさい、雅秋。いままでありがとう。』



 そしてミアは逃避した。


 何も考えられないまま月曜になった。


 ミアは学校を欠席した。






 雅秋と自分の認識の違いが露見し狼狽し出したリアスを睨んでいた雅秋はふと、思いだした。


 ミアから最後に来たメッセージのことを。



 『ごめんなさい、雅秋。いままでありがとう。』



 まさかこれはミアは本当に別れのメッセージを俺によこしたのか?


 座家はミアに告った。


 ミアは俺より座家を選んだのか?




 ミアのメッセージの『ごめんなさい』は雅秋との交際をごめんなさいしたいという意味ではなく、『リアスにときめく私でごめんなさい』という意味だった。

『いままでありがとう』はミアがそんな私は雅秋に振られる、というミアの邪推から結論づけられたひとりよがりの言葉であったが雅秋の知る所ではない。






 怒りに燃えている雅秋の目にさらされながらリアスは狼狽していた。


 ーーーじゃあ、一体なんで甲斐先輩は俺を呼び出したんだよ?俺の告りさえ知らなかったってのにっ。

 ミアは甲斐先輩に何にも話していなかったんだ!



 急に雅秋の顔つきが何かに驚いているように蒼白に変化した。

 リアスは急に動きが止まり遠くを見つめているような目になった雅秋を怪訝な

 顔で見た。









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