波乱の月曜日
リアスはSHRの最中、こっそりとスマホを操作していた。
ルイマにミアが来ているか確認するためだ。
一時間目が始まる前にルイマから返信がきた。
『今日はミアは体調が悪くて休みだって。でもたいしたことないみたい。明日は来るって先生が言ってた。』
『ミアはたぶんスマホ電源切ってる。なんでかわからないけど。』
『ザッカリー、何か知ってる?』
ーーースッゲー知ってる。ほぼ俺が原因。
だけど、さすがにキリルに言えねーよ。俺がミアに告りながらキスまでしたのが原因なんて。
これ、キリルが知ったらどう思うか‥‥‥‥。
おっと、あの事を磯部に聞かねーとな。ミアに聞いとくって言ってある。
『さあな。で、放課後、磯部に聞きたい事があるから、放課後そっち行くって言っといて。』
『ふーん。わかったけど。それ、ミアの休みと関係あり?』
ーーー磯部とミアの事。たとえ信頼しているキリルでも聞かせない方がいい話だ。知ってるやつは一人でも少ない方がいい。ミアの名誉に関わる。
こういうことが噂になるとどんどん尾ひれがつく。最終的にはミアが貶められる話に変質するのは目に見えてっからな。
『全然関係ねーよ。俺もなー、ミアのファンクラブに入ろっかなーってか。』
『なにそれ?うそばっかり。柊也にはまあ言っとくけど。』
ーーー後は‥‥‥甲斐雅秋対策だな。
俺を呼び出すってことは‥‥‥ミアから聞いたのか。俺が告ったこと。
それで、ミアはどうする気なんだ?
「‥‥‥‥ねぇ‥‥‥、ねぇ、座家くん。先生に当てられてるよ?」
左の席の女子が小声でリアスに言った。
「えっ?」
リアスは我に返ってバッと立ち上がった。
「えー、えーっと‥‥‥。」
何を質問されているのかすら知らない。
そういえば今は既に1時間目、古文の授業中だった。
「座家!ボーッとしてんじゃないぞ。来週はもうテストだぞ!座ってるとまたボーッとするからな。少しそこで立ってろ。」
「うっ。はい‥‥‥。」
「座家が立ってると前が見えねー。でかくて邪魔くせー。」
「先生ー!座家くんが障壁となって黒板が見えません。」
後ろから声が飛んだ。
「‥‥‥それな。仕方ない、座れ。」
先生がリアスを見てため息をついた。
リアスが振り向くと中村と砂区がそっと親指を立てた。
休み時間になると中村が早速リアスのもとにやって来た。
「座家ぁ?お前甲斐先輩の呼び出しにびびってんだろー?ぼーっとしてさー。」
ニヤニヤしながら言った。
「っちげーよっ!」
中村の頭を右手で抱え込みながら言った。
「いってーよ、座家。ふふん、俺はわかってるぜ?どうせ真夏多さんのことだろ?」
「‥‥‥まーな。」
「まあ、俺はお前の応援してっからがんばれよ。」
「‥‥‥‥おまえっていいやつ!中村ぁー!愛してるぜー!」
リアスは中村を抱きしめた。
「きゃー!座家くんのボーイズラブが始まったわ!土方くんとのトライアングルの行方はどーなるのぉー!!」
砂区及びそのグループが離れた所から、リアスとミチルと中村の今後の行方の憶測に黄に色い声をあげて盛り上がっていた。
リアスはその後は雅秋の呼び出しのことで頭がいっぱいだった。
ルイマの話からするとミアはリアスだけ無視しているわけではなく、スマホの電源を落としているらしい。
ーーーということはミアは甲斐先輩とも連絡をとっていないってこと?
ああ、だからミアの靴箱に甲斐先輩からのメモ書きのメッセージが入ってたんだ‥‥‥。
甲斐先輩はミアの真意を聞いたのか?甲斐先輩は俺に何を話す?
可能性1‥‥‥ミアは俺を選び甲斐先輩に別れを告げた。甲斐先輩は怒って
俺を呼び出した。
可能性2‥‥‥俺は振られた。甲斐先輩の冷笑と共にそれを告げられる。
可能性3‥‥‥ミアの決心はまだだが、俺が告ったことを責められる。
だけど、結局ミアが甲斐先輩にどこまで話したかもわかんねーし。ミアの決心もわかんねーし。なにもわかんねー。ぐちゃぐちゃ考えるだけ無駄か‥‥‥‥。
ミアに聞きたい事がリアスの頭の中で堂々巡りしていた。そして、ふと気がついた。
ーーーいや、あの気弱なミアのことだ。きっとどちらにも気を使って何も言えなくて逃げているんじゃないか?休みって。うん。きっとそうだ!
だったら、甲斐先輩と俺が対決して決めるしかない。それが自然の法則だ。
よっしゃ。昼休みが運命の時!
1時間目が終わり、リアスが中村とじゃれていた頃、ルイマは何か普段とは何か違う事が起こっている予感に落ち着かない気持ちでいた。
ふと、クラスの女子の高揚したざわめきが聞こえてきた。気付いて顔をあげると教室の前方出入口付近の廊下に雅秋がいた。
「おい、そこのお前、真夏多ミアはいるか?」
ちょうど柊也がお手洗いから戻って教室に戻るところだった。
「うわっっ!ハーレ‥‥‥。」
柊也が大袈裟な驚きの声を出した。
雅秋は顔をしかめて柊也を見た。
「‥‥‥‥妙なやつだな、お前。その前髪、うぜーぞ。まあいい、真夏多ミアはどこだ?」
「き、今日はー、えーっと休みです。体調が悪いって。明日は来るらしいけどー。」
柊也はそう言うと、すーっと教室の奥の窓際まで避難した。
「‥‥‥‥そうか。具合が悪かったのか‥‥‥。」
雅秋はミアがいないのを知るとさっさと戻っていった。
ルイマは窓際まで退避していた柊也の所に行った。
「柊也。」
「キリル。なにー?」
柊也は前髪をかきあげながら言った。
「ちょっと、話があるんだけど。」
ルイマは機嫌は良くなさそうだ。
「ふぅ、どうせ、土曜日にサボったことでしょー?ごめーんってば。」
柊也は笑いながら調子よく軽く謝った。
「それもだけど、ザッカリーがね、放課後柊也に何か聞きたいそうよ。」
「えー?僕は別に話したくないけどぉ。なんだろ?もしかして、あの、ダサい模様の傘をわざと選んで持っていった理由とか?今さら文句かなぁー。座家くんたら貸してもらうのに柄に不満を言うのはどうなのかなぁー。」
「ダサい傘?私は何のことかよくわからないけど‥‥‥ザッカリーのことちゃんと伝えたからね。いい?勝手に帰っちゃだめよ。」
ルイマは厳しい顔で柊也に言いつけた。
「おーけー、キリル。」
柊也はルイマににこやかに答えた。
ルイマが離れて行くと、柊也はくるりと振り向いて窓から秋の爽やかな高い空を眺めながら考えた。
ーーー座家のやつ、何の用かなー?
僕が騙して先に帰らせた事に気づいたの?
それとも、僕とわざわざ話したいなんて‥‥‥‥もしかして真夏多から聞いた?僕が真夏多をものにしようとしたこと。
あれは惜しかったなー。もうちょっとだったのに。
あんな時になぜかオーバードーズ?おかしな幻覚見ちゃったなぁー。
肝心な時にさー。失敗したー。市販品でもやばいのかなー。
あのこと座家君に聞かれても言い訳はいくらでもあるしー。
座家君には、そうだなー、それよりたぶんあの事言っとけば退いてくねー。
真夏多には‥‥‥‥何か僕に同情を引くようなこと言えば許してくれるっしょ。
真夏多って穢れを知らないお人好しのかわいいやつだからー。ちょろいよねー。大好きだよー。僕の真夏多ぁ。




