リアスの悪運
「‥‥‥‥ミア、俺は。」
「なあに?」
「いや‥‥‥‥。」
リアスにとっては4度目の告白だった。
今回こそ気持ちを伝えたい。
この雨がやむ前に。
激しい雨が降り続いている。
暫しの沈黙が続いた。
気持ちを落ち着かせるための時間。
いざ、リアスはミアへこの何年分もの積もった気持ちを今こそ伝えようと決心した。
深呼吸を一回した。
心音が響く。
降り続く雨の音。
ミアの髪についた細かい水滴。
ミアの横顔を描く美しいライン。
ミアの瞳に浮かぶ涙。
ーーー涙?
「ミア、泣いてんのか!そんなに膝が痛かったのかっ?」
リアスが焦った。
「‥‥‥‥ううん、膝は大丈夫。‥‥‥ちょっと思い出しただけ。」
「思い出しただけって‥‥‥‥今でも悲しくなるようなことが前に?」
「‥‥‥‥なんでもないわ。」
ミアは嵐の中、雷に感電した中庭の鯉を救うため霊力を使いきり、ミアの目の前で消えていった学校七不思議の一つである幻の生徒、名波索のことを思い出していた。
ーーーミアの涙に驚いてしくった。‥‥‥もう一回やり直しだ。深呼吸して‥‥‥。
「ミア、聞いて。」
鼓動が妙に強く響く。
うまく声が出せない。
落ち着け、俺。
今度こそ。
言う、絶対。
「なあに?」
ミアがリアスの顔を見た。
今はミアと二人きり。甲斐先輩も磯部もいない。邪魔するやつはいない。
リアスはミアの瞳を真っ直ぐ見て言った。
「俺、ずっと前からミアのこと好‥‥‥‥‥」
「あ、電話!ちょとまって、ごめんね。リアス。」
ミアがスマホをポケットから取り出した。
「はい、‥‥‥うん‥‥‥‥いいよ。わかった。校門脇の倉庫の前で雨宿りしているの。‥‥‥‥‥リアスも一緒に。‥‥‥‥‥やだぁ、そんなことしてるわけないでしょ。もうっ。」
ミアは話ながらリアスの顔をちらりと見て目でごめんね、と謝った。
「‥‥‥柊也が?‥‥‥‥そう、ありがとう。じゃ、待ってるね。」
ミアは通話が終わるとリアスに言った。
「リアス、私、ちょっと戻らなくてはいけなくなったの。さっき、帰り際に手伝うって言ったし、それで頼まれたのかな?教室出る前にわかってれば良かったのにね。柊也がここまで傘を持ってきてくれるって。よかったわね。柊也が超スピードで行くって言ってたわ。」
「‥‥‥磯部からだったのか?」
「うん、ラインにメッセージを何回も入れていたのに私が気がつかなかったから通話にしてみたんだって。」
ポケットにスマホをしまいながらミアは言った。
「あ、何か言いかけてたね、ごめんね。リアス。何だっけ?」
「‥‥‥‥‥‥う‥‥ん。あー、俺も何言おうとしていたか忘れた。」
「うふふ、よくあるよね、そういうの。」
ミアはリアスの気も知らず無邪気に笑った。
ーーーこれは、何だよ?なんで告れない?おい!もしかして、これは妖怪のせいなのか?
俺に取り憑いてんの?偶然にしてもおかしいだろ?どういうことだよ?ここぞと言う時に限って!どんだけ運悪いんだよ!俺。
リアスは一人、自分の回りをパタパタはたきながら自分の悪運を呪った。
索がミアのうなじにつけた黄金の鯉の鱗の呪はまだいくらか霊力が残っていた。
雅秋以外の男のミアに対する強い想いは索の呪により、真剣味が強い想いほど阻害されていた。
リアスはそのようなことは知るよしもなかった。
「ねえ、リアス。月曜日からテスト週間よ。来週は原則部活禁止よ。」
「そうだったな。中間テストが終わるまでミアにも甲斐先輩にも会わないかもしんないな‥‥‥。」
「リアスは雅秋と仲がいいものね。」
ミアがすぐ横に立つリアスの横顔を見上げた。
「‥‥‥いいわけねーだろ?」
リアスが嫌な顔をして見せた。
「だっていつも二人でじゃれてるじゃない?うふふ。」
「ちげーよ。あれは牽制したり張り合ってんだ。甲斐先輩と俺はお互い敵対視しているからな。」
「そうなの?雅秋は心配性で、ミチルやのばらさんを変に敵視するから私とケンカしたことがあるのよ。でもリアスには何か違うと思うわ。きっと雅秋はリアスが好きなのね。」
ミアがにこりとした。
「んなことあるわけねーよ。俺はミアが好‥‥‥」
「おまたせー!真夏多ぁ。僕に会いたかったでしょー?」
リアスの声と柊也が向こうから叫ぶ声が同時だった。
「リアス、柊也がきたわ。」
ミアが柊也に手を振った。
「ほんとに早かったわね。柊也。ありがとう。」
倉庫前にやって来た柊也はミアにむっとして言った。
「こんなところで二人で雨宿りしてたなんて。僕に早く知らせてくれればよかったのにー。真夏多だめじゃーん。」
そう言ってから、次はリアスに言った。
「僕、今日の占いでさー、折り畳み傘がラッキーアイテムでさー、この傘とは別に持ってきてたんだよね。はい、これ座家君に貸してあげるー。早く帰っていいよ。じゃあね。ばいばーい。」
リアスに折り畳み傘を手渡した。
「じゃあ、真夏多は僕の傘に入って。」
「うん。あ、リアス‥‥‥今日はありがとう。また連絡するね。」
「‥‥‥‥じゃあな、ミア。」
リアスは折り畳み傘を無言で柊也に押し返し、駆け出した。
リアスはミアと柊也を相合い傘にしたくはなかった。
雨はだいぶ弱まってきたがこれでは駅に着く頃はびしょ濡れだろう。
「なんだよー、座家君たらー。せっかく貸してあげたのに。この黒地にショッキングピンクのハート柄が気に入らなかったのかなー?真夏多どう思う?」
「確かにリアスには似合わないわね‥‥‥‥。誰の傘なの?」
「これは‥‥‥忘れ物の中から持ってきたんだー。実はさ。」
「柊也たら。勝手にもってきたらだめよ。それに使ったらだめよ。」
「後で返すよー。」
柊也は言った。
「じゃあ、真夏多は僕の傘に入ってー。帰ろうー。」
「え?帰るって‥‥‥‥。」
そう言えば柊也は荷物も背負って既に帰る身なりだ。
「てへー。本当は手伝いはないんだー。雨で撮影は中止でさ。キリルはまだ残ってやってくみたいだけど。だから僕も真夏多と帰ろうと思ってー。」
柊也はミアの機嫌を伺うようにミアの目をチラ見して言った。
「柊也ったら。だったら普通に言えばよかったじゃない。そうしたらリアスだって濡れずにすんだのに。」
ミアがむむっと柊也を見た。
「‥‥‥だってー。僕、座家くんのこと知らないからさー、一緒に帰ると気を使っちゃうでしょー。お互いにさ。」
しょぼーんとして柊也は言った。
「もう、柊也ったら。」
ミアがため息をついた。
「ねぇ、何か食べて帰ろうよー。真夏多。僕がおごるからさー。」
「調子いいわね、柊也は。うーん、そうね。お腹すいたね。いいわよ。でも自分で払うから大丈夫よ。」
「じゃ、僕の傘に入って。」
「ありがとう、柊也。」
小雨の中、ミアと柊也は歩き出した。
柊也の計画はうまくいった。
教室でいつもミアにくっついているキリルはいない。
邪魔なリアスは先に帰した。
後は真夏多を宴の席に連れていくだけ。
やっと、念願がかなう時が来た。
セーブって大切!ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!




