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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第2章
32/102

マカダミアン会長 柊也

 廊下からバタバタした足音が聞こえてきた。


「忘れ物しちゃったよ。」


 突然柊也が戻って来た。


「どう?うまくいってる?真夏多ぁ。」


「えっ?‥‥‥うん。」


 柊也に返事をしたミアのほほがまだ赤らんでいた。


「‥‥‥真夏多、顔赤いけど‥‥‥どうしたの?」


 柊也はリアスを見た。

 前髪の隙間から冷ややかな視線がリアスに注がれた。


「そ、そう?えっと‥‥‥演技に熱が入って‥‥‥。そのせいよ。」


「ふーん。そんなマジでやることないから。ただのホームビデオみたいなもんだから。ほどほどにしとけよ。」


 ミアの方を向いて言いながら、どう聞いてもリアスに言ってるように聞こえた。


「それ、キリルが聞いたら怒るぜ?」


 リアスが柊也に言った。



「‥‥‥‥本当は僕が真夏多の彼氏役だったんだよねー。他の人はもう脱出してしまった撮影が済んでいるからさ。出演していない僕しか彼氏役をできる人がいなかったんだ。でもキリルが急にエキストラが見つかったって言ってさー。」


「そうだったの?撮影と出演の両方だなんて私のせいで柊也が大変になってしまうところだったね。」


「そんなこと、全然かまわなかったのに。それにやりたい男子は何人もいたんだよねー。町田と神宮寺なんて自分達は脱出してなかったことに編集しろってムチャぶりしてくるし。それでキリルが怒ってさ。だから座家くんは1組の男子から恨まれてしまうね。」


「恨まれるなんて。そんなことあるわけないわ、リアス。私、リアスとだったら演技もしやすいもの。リアスでよかったわ。」


 ミアがリアスに言った。


 リアスの口元がわずかに上がった。


「‥‥‥なんだよ、真夏多。つめたいこと言うなよー。僕でもよかったって言ってくれよー。」


 柊也が甘えるように言った。


「はいはい、そうね。ねえ、忘れ物はいいの?キリルが待っているんじゃないの?」


 ミアが諭すように言った。


「そうだなー、そろそろ戻るとすっかー。」


 柊也は机の上に置いてあったハンカチをポケットに入れた。


「真夏多、髪が乱れているよ。何で乱れちゃったの?」


 出掛けにミアの髪を手櫛でささっとなでた。前髪の隙間から明らかに反目の視線をリアスに送ってから出て行った。





「柊也ったら、人の髪より自分の髪を気にすればいいのに‥‥‥。まあ、自分のことは差し置き、人のことの方が目についてしまうものなのかもね‥‥‥。」


 ミアはリアスに言った。


 柊也が来たことでミアは気持ちが切り変わり、既に落ち着きを取り戻していた。


「‥‥‥変わったやつだな。」


「うふふ、私はまるで柊也のお姉さんよね。私は兄弟がいないけど柊也でお姉さん気分だわ。」


「‥‥‥‥お姉さんっていうより、まるで‥‥‥‥。あれは弟キャラじゃないだろ。それより、さっきの所からやり直してみようぜ。」


 リアスが言った。


「そうね、私からね。」


 ミアは先程のセリフを言い直した。



『‥‥‥‥私は無理。ここに残るわ。あの世界は私には苦しすぎるの。ごめんね。リアス、大好き‥‥‥でも、さようなら‥‥‥。』


 ミアが後ろを向いた。


『‥‥‥ミアをおいて一人で戻れるわけねーだろ?』


 リアスが正しいセリフを言った。


『‥‥‥‥でも‥‥私は戻らない。』


『なら、俺もここにいる。ミアがここにいる限り‥‥‥。』



 ミアが振り向いてリアスの目を見つめた。ミアの瞳の中にリアスが映っていた。


 至近で見つめ合う二人。



『リアス‥‥‥。』


『ミア‥‥‥‥。』




 二人の真剣に切なく見つめあった表情が次第にやりきった満足の微笑みに変わった。


「うふふ、これでいいんじゃない?」


 ミアが言った。


「ああ、俺もそう思う。」


 リアスがにかっと笑った。



 一番前の席の椅子に座って休みながらミアが言った。


「残りのは異次元に飛ばされるときに教室内にいた時のシーンだから、ただ、おしゃべりして自然にしていればいいだけね。」


「そのシーンを別カットで付け足して編集して俺たちも教室内にいたように見せるんだ?」


「そうよ。私は今まで全然撮影には参加してなかったから。キリルたちに余計な手間をかけさせてしまったわ‥‥‥。私は出演しなくてもいいって言ったんだけど‥‥‥。」


 ミアが言った。


 ミアの隣の席の椅子に座ってリアスは言った。


「でも、俺は今日は来て良かったぜ?ミアとやるの楽しいし。」


「そう?ならよかったわ。リアスの演技は真に迫っていたわよ。リアスは演劇の才能があるのよ、きっと。私ドキドキしちゃったわ。」


 ミアが恥ずかしそうにリアスの目をちらっと見てからそらした。


 ミアの恥じらうなんともかわいすぎる姿を見て、リアスはもう言わずにはいられなくなった。




 ここで俺は決める!さあ、言うんだ、俺!




「‥‥‥ちげーよ、それは俺が本当にミアが好‥‥‥‥‥。」



 突然教室の前方の戸がガラリと開いた。


 リアスの声と戸の開く音がかぶさった。




「はー、はー、急いで戻ってきたら疲れちゃったよ、真夏多ぁ。」


 柊也が息切れしながらよろよろと教室に入って来た。


「柊也ったら、走って戻ってきたの?どうしたの?何かあったの?」


 ミアが立ち上がり柊也の元へ行った。


「真夏多ぁ。何かドリンク持ってない?僕、喉がからからで‥‥‥。」


 柊也は喉を押さえてミアに言った。


「え?ごめんね。私、今飲みかけのペットボトルのレモンウォーターしか持ってないわ。何か自販機で買ってくる?」


 ミアは入口すぐの机に座り込んだ柊也の顔を覗きこんで言った。


「だめ、今すぐ飲みたい。はぁ、苦しいよ。真夏多のくれよ、後で買って返すから。早くぅ。はぁはぁはぁ‥‥‥」


「わ、わかったわ。」


 ミアは慌てて教壇に置いた自分のリュックを開いた。


「俺、まだ開けてないスポドリ持ってるぜ?」


 リアスが言った。


「僕‥‥‥レモンウォーターがいい。真夏多ぁ。」


 柊也が言った。


「わかったわ、柊也。これどうぞ。大丈夫?」


「さんきゅー。」



 柊也はミアから渡されたレモンウォーターを飲んだ。



「あー、助かった!ねぇ、一緒に真夏多の分、自販機に買いに行こうよ。僕返さないといけないから。」


 柊也がミアの腕を引っ張った。


「う、うん。いいけど‥‥もう大丈夫になったの?」


「うん、レモンウォーターってガチすごいね‥‥‥‥。座家くん、すぐキリルが戻るから待ってて。僕たち行ってくるから。」


 柊也はミアの腕を引っ張ってずんずん出て行った。




「‥‥‥‥なんなんだ。あの柊也ってヤツ!」


 リアスは今まで柊也のような男子がミアにまとわりついていることは知らなかった。



 ーーーあいつ、することの全てがわざとらしい。ミアのそばにいつもあんなヤツがいたなんて。甲斐先輩もびっくりだぜ?しかも、ミアと間接キスって?どういうことだよ!ミアの優しさにつけこんでひどくね?



 リアスがもんもんとしているとルイマが戻って来た。



「あれ?ザッカリー、ミアと柊也は?」


「‥‥‥‥柊也ってどんなヤツなんだよ?わざとらしいまねしてミアにいろいろ世話かけてんじゃん。今もミアの飲みかけのペットボトルをうまいこと奪って飲んだんだぜ?それで今自販機にまた買いに行った。」


 リアスは不機嫌に言った。


「あらあら、しょうがないわね、はぁ。柊也ったら。あの子はねぇ、秘密のミアのファンクラブ『マカダミアン』会長よ。」


 ルイマは言った。


「なんだよ?それ。初めて聞いた。」


 リアスが怪訝な顔になった。


「ミアは全然知らないのよ。そんなファンクラブの存在は。1年の1組から3組までの男子で集まっているらしいけど‥‥‥私も実態はよく知らないわ。別にミアに迷惑なことはしないはずだけど。」


「あれは迷惑だろう!絶対。」


「ミアには私がいつもついているから大丈夫よ。それより‥‥‥今回が私がザッカリーにあげる最初で最後のチャンスよ。感謝しなさい。あんたは3年以上も片思いしてるんだから。この辺であたって砕けるがいいわ。」


 ふふんと高飛車な笑みを浮かべてルイマが言った。


「俺、ガチ感謝してたのに、ひっでー言い方だな?俺の大逆転は想定外かよ?それに今回はだめでも俺は諦めねーからな!」


「そう?‥‥‥‥私が一番に考えるのはミアの気持ちなの。私はミアの好きになった人なら認めるわ。それがザッカリーだったとしても。」


 ルイマはリアスを見て言った。


「‥‥‥真のミアのファンクラブの会長はキリルだな。」


「あら、わかってるじゃない。私は小学生の時からのミアのファンだもの。にわかとは違うのよ。格が違うの。ふふふ。」


 ルイマのプライオリティの筆頭は小6の時からミアのままだった。







毎回、誤字脱字、名前まで間違えてたり‥‥私ヤバいですね。


本当、すみません(´ー`A;)

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