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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第1章
28/102

生徒会の審議 その2

 「何か発言のある方はいますか?」


 のばらが言った。


「私は特に問題はないと思います。あれくらい普段見てるドラマと変わらないです。」


 りりあが言った。


「僕は、そうだな。男の方はミアさんをきつく抱きしめすぎではないかと思うよ。もうちょっと間を空けたほうがいい。それに顔が近づきすぎではないかな。」


 神露が言った。


「そうかな?雰囲気があっていいと思います。」


 りりあは反論した。


「流れ的にはいいけど、ここは学校だからね。私生活レベルで考えたらいけないよ。」


「そうですかぁ?私は柔道の練習で兄といつもあれくらいしょちゅうですけどー?」


「柔道は愛の表現なのかい?格闘技だろ。」


 神露が呆れたように言った。


「‥‥‥私は今の演技で感動しました。雪村先輩はどうなんですか?」


 りりあがさっきから黙っている煌に聞いた。


「‥‥‥‥神谷の意見が妥当だろう。」


「‥‥‥えー。会長もそういうんなら仕方ないですね。他の人も?」


 りりあが他のメンバーに聞いた。


「会長の意見でいいと思います。」


「私も同じです。」




「と、いうことで、変更してください。」


 神露がのばらに言った。



「‥‥‥‥わかりました。では、今のところだけ、蓮津姫と牧野様もう一度やってみて。牧野様は少し隙間をあけてみて。」



「わかりました。」


 ミアが言った。


 雅秋が後ろを向いてミアにそっと聞いた。


「お前、さっき牧野様っていうところを索っていったよな?索って?」


「私‥‥‥そんなこと?ごめんなさい。緊張して間違えてしまったみたい。覚えていないの。」


「で、索って?」


 雅秋が聞き返した。





「なにこそこそ話しているの?二人早く始めて!」


 のばらのイライラした声がした。変更がでたのでおかんむりのようだった。


「すみません。」


 ミアは雅秋から離れて準備した。



 雅秋は仕方なくミアとは体がつかないくらいにミアの肩に手をかけた。


 神露はそれを見てうなずいていた。



 ーーー神谷のやつ‥‥‥‥。


 雅秋は神露を睨んだが、神露は涼しい顔をしていた。



 そして、第3部は那津姫と蓮津姫のほのぼのシーンと那津が鯉に飲み込まれるシーンのため割愛された。



 第4部は再びミチルの朗読から始まった。



『那津姫は胸に入れていた護符に護られ、意識のないまま10年間もの間、黄金の鯉の腹の中で漂っていた。姫は霊魚の霊力を吸収し、成長しながら眠っていたのだ。那津姫は16才になっていた‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥鯉は腹の中のものを吐き出した。』



 マナカが床に横たわった。


 ーーーなんかこんなちょっとの人しか見てないのに緊張しちゃうなー。


 薄目を開けながらマナカは真ん前にいた生徒会長の顔を見た。


 表情のない冷淡な目でミチルを見ているのが見えた。


 ーーーうっわー!こっわ。これは嫉妬の視線ってやつだね。


『吐き出された大サンショウウオは格上の黄金の鯉に一矢報いたことに溜飲‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 鯉は人の姿に変化すると、見つけたその人間の娘を河原に寝かせた。目覚めた人間は透き通るような肌の美しい娘だった。』



 ミチルの朗読が挟まった後、中村が登場した。



 中村が横たわるマナカの背中を抱上げて左足と左腕で支えて言った。



『お前はいったいどこから来たのだ?なんて美しい‥‥‥‥名はなんと申す?』



 ーーーマナカ、俺からみたら真夏多さんとかわらずマナカも美しい。俺はイメチェン前のマナカがよかったけどな。今もかわいいけど。あんま目立つことすんなよ。ただでさえそのおしゃべりで目立ってんのに。俺、もう3人の男子からマナカとつきあってんのかさぐり入れられたんだぜ?知りもしないでまったくよお‥‥‥‥。


 中村は抱えたマナカに向かって心の中だけで言った。



『わらわは‥‥‥‥那津じゃ。他のことは‥‥‥よくわかりませぬ‥‥‥。』


 マナカが答えた。


 ーーーヒトミがマジな顔してる‥‥‥やばい、なんか面白くなってきた!笑いが‥‥‥くくっ‥‥‥だめだ!今笑ったら‥‥‥やばい、こんな時にっ!でもつぼった!くっ‥‥‥!


 マナカは必死で奥歯を噛み締めて耐えた。




『そして、二人はお互いにひと目で恋に落ちた。』




 ミチルの一言が入った。



 その間に中村とマナカは立ち上がり、舞台の中央で向かい合った。



 中村はマナカの握った両手を包むように握りしめ、何か思わしげな眼差しでマナカを見つめた。


 マナカは一度つぼった笑いが止まらず、奥歯をきつく噛みしめ、涙目になりながら肩をぷるぷるふるわせ中村と目を合わせていた。


 ラッキーなことに、それは周囲にはマナカの熱演に見えていた。





『鯉の腹の中で霊力を得た那津姫は霊界で黄金の鯉の妻となった。二人は仲むつまじく霊界で末永く暮らした。』


 ミチルがそつなく朗読した。



 のばらが生徒会メンバーに説明した。


「ここで暗転します。そしてここから蓮津姫と牧野様のエンディングシーンにはいります。」


 ヒトミに指示をして先を促した。


「ヒトミの衣装はそのままでいいわ。‥‥‥彼はここで神役にかわります。では、エンディング始めます。」



 リアスが中村に小道具のピーナッツの作り物を投げた。



 中村はナイスキャッチすると神の演技に入った。



「あわれな恋人たちよ。我はお前たちに特別に情けをかけようぞ。お前たちは転生する前にこれを食すがよい。」


 神役の中村は手のひらより大きい一粒のピーナッツの作り物を見せながら言った。


「この一粒を半分に割り、それぞれ食せばおまえたちは転生しても必ずまためぐり会うことができるだろう。」


 ーーー俺もそんな魔法アイテム欲しいぜ。半分こして食べるだけで両思いになれるなんてさ。現実には探したって道端にも落ちてないし、井戸の底にだって、森の中にだって、ありゃしないんだ。はぁぁぁ。


 中村は雑念だらけの演技であった。



「いえ、神よ。わたくしたちにそのようなものは必要ありません。」


 中村の前にひざまずきながら、凛としてミアが言った。


 ーーーそうよ。私と索は来世での約束をしたの。これは誰にも変えられはしないわ!


「ああ、そうだ、私と蓮津はそのようなものはなくとも来世では必ずまためぐりあい引かれ合う。それは他の誰かのために使えばいい。」


 雅秋が片膝立ちのままミアの手を取りミアの瞳を見つめた。


 ーーーミアは何を思っている?



「牧野様‥‥‥。」


 ミアも雅秋を見つめ返した。


 雅秋は演技とはいえ、雅秋の理想の上をいく美少女のミアに潤んだ瞳で見つめられて、顔が熱くなった。



「蓮津‥‥‥‥またあおうぞ!」


 雅秋はこのままミアを抱きしめてしまいたい気持ちを抑えた。



『これは、この地に伝わるいにしえの物語。さあ、この伝説に思いを馳せて見てください。あなたのすぐそばに蓮津姫と牧野様がいるかもしれません。いえ、‥‥‥‥もしかしたらあなた自身が。思い当たることありませんか?』




 ミチル、ミア、雅秋、中村、マナカが一列に並び礼をした。


 生徒会メンバーが拍手をした。



「何か問題点はありましたか?意見のある方は‥‥‥?」


 のばらが生徒会メンバーを見渡した。


「僕は特に問題点はないと思ったけど。」


 神露が隣のりりあを見た。


「私だってこれでいいと思います。」


 他の3人のメンバーもうなずいた。


「雪村はどうなんだ?」


 神露が煌を見た。


「‥‥‥いいんじゃないかな。」


 そっけなく煌は言った。



「では、牧野さん。修正箇所はあのミアさんと男が抱き合うあの場面だけです。承諾していただけますか?」


 神露がのばらを見て言った。


「‥‥‥わかりました。でも、あそこが見所のメインシーンだったのに‥‥‥。」


 のばらが怒りを抑えて言った。


「今日は、ご苦労様でした。本番、楽しみにしています。」


 神露はのばらの怒りを涼しい顔で受け流し、軽く笑みを浮かべてねぎらいを言った。


 そして、生徒会メンバーは揃って出て行った。



「ミアちゃん、素敵だったよ!相手役が本当の彼氏っていうのもいいよねー。ミアちゃんにすっごい似合ってたよ。じゃ、また明日ね!」


 りりあが最後にミアに声をかけてからあわててメンバーを追いかけていった。




「雪村のやつ、ずいぶんおとなしくしていたな。どうしちまったんだよ?」


 雅秋が言った。


「さあね‥‥‥ああ、そんなことより、私のメインシーンが‥‥‥!」


 のばらが両手で顔を覆った。


「あれは、俺がミアにくっつくのが気に食わねーだけだったじねぇか!あの神谷のやろうが!」


 雅秋が憎々しげに言った。


「‥‥‥‥それもそうだわね?あの神谷くんが気に入らなかったのは甲斐先輩だけ‥‥‥。そうね、ミアちゃんが『男と抱き合う場面』って言ったものね。ふーん。うふふっ。」


 のばらの機嫌がすっかりなおった。


「だったら、私が修正なしで演じる分には問題なしだわね。ふふん。私、ちゃんと録音していたから言質の証拠もあるわ‥‥‥ふふふ、私の勝ちね!」


 のばらの今まででの努力は報われた。

 のばらはミアとのこのシーンのために今まで頑張ってきたのだ。




「なんだよ!俺だけ修正かよ!なんの呪いだよ?おいっ!」


 雅秋がリアスの背中に飛び付いた。


「うわっ!なんだよっ、甲斐先輩!俺の呪いじゃないぜっ!」



「雅秋とリアスはいつも仲良しよね。うふふ。」


 ミアが笑った。






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