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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第1章
27/102

生徒会の審議

 水曜日の放課後、生物室では通し稽古を行うことになった。


「私は金曜日の審査では、監督で指示と生徒会への説明に専念するから。座家くんも裏方で手伝ってね。」


 のばらが言った。


「配役は、朗読‥‥ミチル、鯉&神‥‥ヒトミ、那津姫‥‥マナカ、牧野様‥‥甲斐先輩、蓮津姫‥‥ミアちゃんで行くわ。みんながんばりましょう!」


「はーい!」


「おう!」



 稽古が始まった。


 皆、セリフも覚え、のばらの指示通り演じることが出来た。


 ミチルの朗読は心地よい少年の声で安定していた。

 雅秋とミアの悲恋のシーンは美しく、二人の歯がゆい運命に涙を誘われる人もでるだろう。

 マナカの那津姫も愛らしく中村は熱演で場面を盛り上げた。



「なかなかいいわよ。みんな。滞りなく進んだわね!」


 のばらが皆を見渡した。


「座家くんはライトをつけるのと消すタイミングは大丈夫かしら?金曜日は暗幕もないからいらないけど、理科講義室でリハーサルする時からはお願いね。ミチルもよ。じゃ、20分間休憩にしましょう。」



「マナカ、自販機にジュース買いに行こうぜ。」


「行く行くー!買ってきて欲しい人いる?‥‥あれ、ナッシングだねー。じゃ、行ってくるよー。私、今日は紅茶にしよっと。」


 中村とマナカはチャイとロイヤルミルクティとミルクティの違いについて熱く語りながら出ていった。




「のばらさん、昨日はあれからちゃんと話せてなくて‥‥‥。あの時は助けてくれてありがとうございました。」


 ミアはのばらと話すタイミングをずっと待っていて、今になってやっと言うことが出来た。


「元は私が原因でミアちゃんは巻き込まれただけだもの。私の方こそごめんなさいね。」


 のばらがミアに言った。


「私‥‥‥‥雪村先輩から思いがけない言葉を受けて‥‥落ち込んでしまって。」


 ミアが恥じるように言った。


「気にすることなんて少しもないわよ。何を言われたのか知らないけど、煌はミアちゃんのことなんてほぼ知らないんですもの。そんな人に何を言われたって意味はないわ。わかるわね?」


 ミアの目を真剣な目で見ながらのばらが言った。


「のばらさん‥‥‥。」


 ミアはのばらの助言が心に響いたようだ。ほほを染めている。


 のばらはある意味ではミアの心をつかんだようだ。


「あれから私、煌と話してすべて解決したから。もう、私にもミアちゃんたちにも関わらないと約束してくれたのよ。だから、ミアちゃんももう、いやな目にあったことは忘れちゃっていいの。」


「あの雪村先輩を説き伏せてその上を行くなんてやっぱりのばらさんはすごいです。」


 ミアは憧れの瞳でミアを見た。


「ま、まあね。私は牧野のばらなのだから。当然といえば当然ね。」


 のばらはただやむなく、煌を脅迫しておとなしくさせただけだったが。






 そして、ついに生徒会の審議を受ける金曜日の放課後を迎えた。


 高校生の演劇として逸脱した愛情表現ではないか確認するだけだったのでとりあえず衣装は着たもののセットも雅秋の鯉の絵もなく生物室の後ろのスペースで、演じるだけとなっていた。


 生徒会メンバーの煌と神露とりりあが真ん前の椅子に座っている。

 なぜかその他の生徒会の人たちも3名増えていた。


「ミアちゃん、私すっごく楽しみにしてたんだ!生徒会入って大変だったけど、こんなに近くで先行して観られるなんて、これは役得ってやつだよね。がんばってね。」


 りりあが座ったまま、ミアの手をとってぶらぶら揺すりながら言った。


「りりあちゃんありがとう。ちょっと緊張してるの。」


 浴衣姿のミアが言った。


 りりあの横に座った神露が言った。


「時田さん、僕たちは楽しむために来てるんじゃないからね。ちゃんと見て審議しないといけないよ。とくにミアさんと甲斐先輩のシーンとか、高校生としてふさわしい表現かきびしくチェックしないといけないよ。」


「はあい。」


 りりあがそらとぼけた顔をしながら返事をした。


「ミアさん、僕は君を見ているよ。僕は応援しているからがんばってね。」


 神露がミアに言った。


「はい、神谷先輩、ありがとうございます。私、心を込めて演じます。これは私の大事な人のストーリーだもの‥‥‥。」


 ミアは名波索のことを想って言ったが、きっと他の者はのばら脚本だからととったということはわかっていたし、それでよかった。


 ミアは生物室の作り付けのテーブルをはさんでその横にいる煌をチラリと見た。

 煌はいつものクールフェイスのままの無表情で何を考えているのかわからなかった。



「開演5分前です。」


 リアスの声が響いた。


 舞台のそでがないので、今日は上手(かみて)下手(しもて)もなく皆廊下で待機している。ミアも廊下に出た。

 少し離れた所からきゃあきゃあ言いながら見ている生徒達がいた。



 ミチルは既に舞台となる場所にスタンバイしていた。


 のばらは教室内の戸の横に立ち、ストーリーの概要や、郷土伝承とかつてここにそびえていた落花生(おかき)城について生徒会メンバーに説明している。


「のばらさん、開演時刻ですが、」


 リアスがのばらに言った。


「ありがとう。」


 のばらはリアスに一言いうと、生徒会メンバーに向かって言った。


「それでは開演です。皆さんを過去の世界へお連れするわ。」


 のばらがミチルと視線を合わせうなずいた。



 ミチルも小さくうなずき朗読を始めた。


『これは今、正にあなたがいるこの地この場所で生まれた物語。はるかはるか遠い昔から伝わる物語。そう、霊界の使者、黄金の鯉の現れる伝説の井戸は今もこの学校のどこかにひっそり眠っているのです‥‥‥‥‥』


 そして、ミチルのよどみない透き通った声の朗読で、蓮津姫と牧野様の出会いから最初の別れまで語られた。


 順調に劇は進んでいった。


 それから、浴衣姿の雅秋とミアが登場し、城で再会するシーンからはじまり、雅秋がミアの肩をだきながら恋を語らうシーンが続いた。


 のばらは生徒会メンバーの表情を注視していたが問題なく見ているようだった。


 そして、問題のシーンになった。




『牧野様、わたくしを強く抱きしめてくだいませ!』


『蓮津‥‥‥‥‥!』


 ミアと雅秋が駆け寄って向かい合った。


 ミアは雅秋に索を重ねていた。



 いくら好きになったとて結ばれることはかなわぬ索との恋。



 自然と涙が流れ雅秋をいとおしく見つめた。


 雅秋はミアの迫真の演技に心を奪われた。



 ーーーミアに涙を流されながらこんな目で見つめられたら誰だって‥‥‥。

 俺は絶対誰にもミアを渡さない。座家にだって、神谷にだって‥‥‥。



 雅秋はミアを抱きしめた。


 ミアはきつく抱きしめられながら雅秋を見上げた。


 雅秋は至近にあるミアの瞳を見つめた。ミアは蓮津姫になりきっているように見えた。



『‥‥‥愛しております‥‥‥‥索。』



 ミアが苦しげに雅秋に言った。



 ーーーミアがセリフを間違えた。そこは牧野様だ。


 ‥‥‥‥索。俺はそいつを知っている。確実に知っている。だが‥‥‥‥なぜだ?だれだか思い出せない。この学校の生徒だったか?わからない‥‥‥‥。


 雅秋に苦悶の表情が浮かんだ。



『私もだ‥‥‥‥‥、蓮津!本当はお前の肌に何者も触れさせたくはないのだ。だが‥‥‥‥‥私の身分では‥‥‥。』


 雅秋はもやがかかって思い出せない苛立ちを抱えながら言った。




 ミアと雅秋によるリアリスティックな演技による第2幕が終わった。





 のばらはずっと生徒会メンバーの表情を見ていた。


 煌は無表情を装っていたがミアに釘付けになっているのがわかった。目の動きがずっとミアを追っていた。


 それは神露も同じで、だが神露は感情が顔に現れていて明らかにミアにうっとりしていた。


 りりあは雅秋とミアのシチュエーションにドキドキしていたようだ。一心に見入っていた。



「今までで、何か問題点はありましたか?」


 のばらは生徒会メンバーに向かって言った。








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