ミアの謝罪
ミアは話し始めた。
「私が最初に生徒会室に行った時は副会長の神谷先輩がいたの。それから雪村先輩もやって来たの。私が劇のジャッジについて質問したら劇は表現方法が認められない部分あったとしても変更すれば公演できると二人とも言ってくれたわ。」
「ああ、それは聞いたな。問題はその後だろう。」
雅秋が言った。
「そのあと、雅秋と会った後、もう一度生徒会室にいったの。私は、ミチルのために雪村先輩ののばらさんへの気持ちを確かめようと思ったの。その時は雪村先輩がそんなにのばらさんのことが好きなままだとは思わなかったのよ。だから、私、雪村先輩に‥‥‥のばらさんにはもう彼がいるから雪村先輩が好きでも無駄、とか雪村先輩がのばらさんが好きだと困る、なんて言ってしまったの。」
ミアはまた涙がにじんできた。
「‥‥‥‥だからきっと怒らせてしまったんだわ。今思うととても失礼だったのがわかるの。私はミチルの恋の成就のことしか考えてはいなかった。雪村先輩は私の心ない勝手な言葉を聞いてクールな顔の下で激怒していたんだわ。だから私の言葉の揚げ足をとって‥‥‥。」
ミアがうつ向いて立ち止まった。
「何を言われたんだ?」
リアスの心は嫌なざわつきを感じた。
「私がそれまで言っていたのは雪村先輩への愛の告白に聞こえると言って、私を彼女にしてあげると言ったの‥‥‥。」
「‥‥‥‥なんだよその急展開は!」
リアスが憤慨した。
「そうね、でも今落ち着いて考えると‥‥‥私、とんでもないことを雪村先輩に言ってしまったわ。のばらさんに関わらないで欲しいなんて‥‥‥。人の恋にそんな口出しするなんて私は間違っていたの。雪村先輩が怒るのは当然だわ‥‥。」
ミアは再び歩き出した。
「それから帰りを待っていた俺と会ったのか?」
雅秋が聞いた。
「うん、そうよ。私はそのときは混乱していて‥‥‥一緒に帰ろうと雪村先輩に言われるまま生徒会室を出たのよ。」
「それからどうしたんだ?」
雅秋が聞いた。
「階段を降りる途中で、私を壁の角に押し込めたの。」
「なんだって!あいつミアに壁ドンしたのか?真面目そうな顔してよぉ!」
雅秋がむかついて眉間にシワを寄せた。
「そして私をのばらさんと交換すると言ったの。のばらさんが雪村先輩に戻ったとき私を解放するって。」
「ミアを人質に使ってのばらさんを脅そうってのか?」
雅秋はリアスと目が合った。
「いくらミアに怒ったからってそれはひどすぎだぜ?のばらさんが雪村は狡猾な手を使う腹黒だって言ってたよな。」
リアスが言った。
「雪村先輩は冷静な顔の裏側で私に激怒していたんだと思うの。だからきっと腹いせに私を懲らしめようとしたのよ。他にもいくらか言われたけど、全て私がいけなかったの‥‥‥‥のばらさんにしたら雪村先輩の想いはもう迷惑に思っているからきっと悪印象にしかならなくて雪村先輩のことを狡猾とか腹黒って言い方になったのだわ。」
ミアは煌が雅秋がのばらと一時つきあったことを逆恨みしていることがいくらか関係していることは言わなかった。
煌がそのことでミアを利用して雅秋を苦しめおとしめようとしていることがわかってしまったら雅秋が激怒し余計に事をこじらせてしまう。
「私も階段で押し込めてられている時は雪村先輩は身勝手なひどい人だと思ったけれど‥‥‥‥今思い返すと‥‥‥‥私の方が身勝手な無礼な振る舞いをしていたの。私‥‥‥‥雪村先輩に謝らなくてはならないの。そして私の無礼を許してほしい‥‥‥。」
ミアは心の内も含めて雅秋とリアスに今までのいきさつを話した。
「じゃあ、雪村は今ものばらに夢中で、取り戻そうとしているのは本当だということだな。でも、それは錦鯉研究部の劇の開演には影響することはない、だな。で、雪村はミアがのばらのことで口出ししてきたことに怒り、ミアに腹いせしたってことでいいのか?」
雅秋がミアの顔を見た。
「ええ、私は今そう思っているの。」
ミアは沈んだ表情で言った。
「俺は現場も知らないし見ても聞いてもいなかったからなんとも言えねーな。ミアが謝りたいならそうすればよくね?そしたらミアの彼女ってのも撤回すんじゃね?」
リアスが言った。
「ミアが彼女ってのは雪村が一人で勝手に言ってるだけで実際は違うだろ。そんなことにはならねぇ。‥‥‥‥‥確かに関係ねーやつに好きな人を諦めるよう言われたら腹はたつだろうけど‥‥‥‥何かが府に落ちねーんだよな‥‥‥。」
雅秋が訝しげに言った。
「私、明日雪村先輩に謝りに行くわ。自身がしでかしたことだもの。雅秋にもリアスにも迷惑かけてしまってごめんなさいね。話を聞いてもらったら私も心の整理ができたわ。ありがとう。」
ミアは両脇の雅秋とリアスの顔を交互に見た。
「‥‥‥でも、あいつの妄想ははかりしれないからな、ミア。気をつけろよ。」
雅秋は騎士メーテルとミアが手をつないで帰ったと真面目に言い張った煌を思い出して言った。
次の日、放課後ミアは錦鯉研究部に行く前に生徒会室に行った。
生徒会室にはまだ鍵がかかっておりまだ誰も来ていないようだった。
ミアは廊下の窓から外を眺めていた。下は中庭で鯉が泳いでいるのが見えた。
ミアは索のことを思っていた。
「ミアさん。」
誰かがミアを呼んだ。
「どうしたの?また生徒会室に用があるの?」
神谷神露がミアのすぐ真横にいた。
「あ、神谷先輩。」
いつの間にか隣にいたのでミアは驚いた。
「昨日は雪村と二人で相談したんだろう?どうだったの?」
神露が聞いた。
「‥‥‥‥あ、あの私そのことで‥‥‥。」
ミアは昨日の事を思い出して涙ぐんでしまった。
「‥‥‥何かあったんだ?大丈夫?」
神露はミアを廊下の一番奥の窓際まで連れて移動した。
「ここなら近くに誰もこない。何か泣くほどのことがあったんだ?話せたら僕に言ってみなよ。」
ミアの顔を見ながら神露が穏やかに言った。
「‥‥‥ありがとうございます。でも‥‥‥大丈夫です。」
「言えないことなんだ?雪村と何かあったんだ?」
神露が険しい顔になった。
「‥‥‥いえ、私が昨日失礼なことを言ってしまって怒らせてしまったんです。それで私‥‥‥謝りにきたんです。」
ミアがうつ向いて言った。
「怒らせたって?何を言ったんだ?」
「‥‥‥‥私が失礼なことを‥‥‥。」
「ミア、こんなところで何をしているんだい?神谷と何を話してるんだ?」
煌が向こうから歩いて来た。
「雪村、ミアさんが泣いていた。」
神露が咎めるように煌に言った。
「何かミアから聞いたのか?」
「何か失礼なことをお前に言って怒らせたとか言っていたけど‥‥‥。『ミア』って?」
神露が言った。
「そうか‥‥‥‥ミアは昨日から僕とつきあうことになってね。僕の彼女にした。僕はミアと話すから神谷は外してくれ。」
煌は神露に言った。
「な、なんだって?お前‥‥‥昨日は‥‥‥興味ないって‥‥‥。雪村、人を油断させておいてずいぶんだな?」
神露は煌を睨んでから生徒会室を通りすぎ階段に向かって行った。
「で、ミア、なんだ?」
煌が面倒臭そうに言った。
「あ、あの、私、昨日はのばらさんのことで余計なことを言ってしまいました。雪村先輩のばらさんへの想いを否定するようなことを言ってしまってほんとうにごめんなさい。私、ミチルの幸せしか考えていなくて周りが見えてなかったんです。私、先輩ののばらさんへの想いを尊重します。だからどうか許してください。」
ミアは涙目で心から謝罪した。
「‥‥‥‥ふーん、そうか、ふふっ。」
煌は小さく嗤った。
「許してほしいんだ?」
「はい。」
ミアは恐る恐る煌の顔を見た。
「いいよ。このまま僕の彼女でいれば許す。君は僕の彼女なんだからちゃんと彼女としての役割をしてくれよ、ミア。」
煌はミアに言った。
「そ‥‥‥そんなことは無理です。それに雪村先輩はのばらさんが好きなのに‥‥‥。」
「ああ、そうだよ。僕の理想はのばらそのものだ。のばらが僕に戻るまでは‥‥‥。君は‥‥内面はくだらないが外側だけはとにかく最上級だからね、ミア。君が僕に謝罪したいのならそれくらいしかないだろう?」
煌は左手でミアの髪を撫でてからほほに触れた。
「‥‥‥‥ひどい。」
ミアの目から涙が落ちた。
「許して欲しいんだろう?」
煌がほほを包む左手の親指でミアの涙を拭った。
「その恨みがましい顔もかわいいよ、ミア。」
「‥‥‥‥私のかわいいミアちゃんに触るんじゃないわよ。」
廊下の向こうから、誰かが颯爽と歩いてくる。
西日に照らされてメラメラと炎をまとったような長い髪を揺らしながら歩くスラリとした美少女が。
未読の方 In my mind 本編もよろしく!
ミアと雅秋の出会いは第3章で!ぜひ読んでみてください。




