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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第1章
23/102

ナイト メーテル

「なぜこうなった??‥‥‥‥俺のせいだ!俺が思いつきの愚策を提案したばかりに。ミアは何考えてんだ?ミチルのためだったら俺とはどうなってもいいってのか?‥‥‥‥今、雪村が言ったことは本当なのか‥‥‥‥?」



 残された雅秋は一人混乱していた。



「‥‥‥‥‥いや、おかしい。ミアはさっきはそんなそぶりさえなかった!こんなやり方はミアが言ってたのと全く違うだろうが!くそっ!」





 煌は4階から降りた階段の途中の踊り場の角にミアを押し込めて言った。



「僕は今、とてもいい気分だ。7ヶ月前、僕からのばらをさらっていったあの甲斐雅秋から今度は逆に君を奪ったんだからね。」


 煌は冷淡な笑みを浮かべた。


「‥‥‥‥雅秋に逆恨みして私にこんなことを?」


 目の周りを赤くした顔のミアが(うつ)ろな目で煌を見た。


「いや、それが目的ではないよ。‥‥‥君はいわば人質かな?のばらと交換するための。」


 ミアの髪を指先に巻きつけ遊びながら煌は言った。


「‥‥‥‥でもよくわからないな。君は土方君のために僕の所に話しにきたようだね?ミチルのためって?君はこの間も僕から土方くんをかばっていた。土方君が好きなの?だったら君はのばらがいない方がいいだろうに。」


 ミアの目を覗きこんだ。


「‥‥‥私はいつだってミチルの味方なの。だから、ミチルののばらさんとの恋を守ってあげたいの。」


 ミアは煌から目を横にそらした。


「ふーん。それで僕の所に来たって訳か。君は土方君のお姉さんをしているんだ?じゃ、のばらに何か聞かされていたわけではないんだね。」


「‥‥‥‥雪村先輩がのばらさんに執心しているのは本当だったんですね‥‥‥‥。」


 ミアは、のばらは煌に対して悪く思い違いしている、と煌に思い込まされてしまっていた自分を知った。


「ああ、僕はのばらを取り戻す。だけど、いいよ。とりあえず僕が君に飽きるまではのばらに仕掛けるのは止めてあげる。その前にのばらが僕の元に戻ったらその時はすぐに君を解放してあげるから。のばらにもそう伝えておいて。」


 そう言ってミアの髪を指から放した。


「‥‥‥‥なんて身勝手なの‥‥‥‥。」


 ミアは軽蔑の視線を送った。


「いいかい?君は僕にお願いして僕の彼女にしてもらったんだから僕のいうことを聞いてくれないと。」


 ミアの視線を受け止め、そのまま見つめ返して言った。


「‥‥‥‥私、そんなこと頼んでません。」


 ミアは少しずつ落ち着きを取り戻していた。


「‥‥‥いいのかな?そんなこと言って。君の大切な土方くんが悲しむことになるよ?少なくともきみが僕を満足させてくれている間は土方くんはのばらと楽しく過ごせる。そうだろ?」


「‥‥‥‥満足させるって?」


 ミアは嫌な予感しかしなかった。


「そうだな‥‥‥‥とりあえず僕が甲斐雅秋から君を奪ったということを噂にしないとね。そのためには僕と君の共同作業が必要かな。」


 煌がニコリと微笑んだ。


「‥‥‥共同作業?」


「手始めは‥‥‥‥」


 煌が少しかがんで壁の角に押し付けられているミアの顔に近づいてきた。


「や、やめて‥‥!」


 ミアが両手のひらを顔の前で広げた。




「やめろっ!」


 突然見かけたことがない髪の長い女子が踊り場の下の廊下に現れた。


「ミア、ぼ、土方君のために?こんなバカなことを?」


 その女子が涙声で言った。


「あなたは誰なの?」


 ミアは突如現れた美少女に目を見張った。


「ねぇ!土方君のために?この人と何をしようとしてたの?」


 その美少女は一筋の涙を流しつつミアを責めた。



「君。僕たちの邪魔をするのはやめてくれ。この子は僕の彼女なんだから。」


 煌は落ち着き払っていかにも迷惑そうに言った。


「そんなの嘘だ!」


 その可憐な女の子は断言した。


「‥‥‥‥君は誰だ?ミアも知らない子となると?」


 煌はその女子を不審な者を見るような目で見た。


 警戒の目で見られた女子は、きょときょと周りを見てから突然妙なポーズをした。


「ぼ、僕は‥‥‥‥えっと、シャイニング ゴールデン カープよりエクストリームリー デンジャラス フォースを授かり、バイオレンス オブ ア ストーム 騎士(ナイト)として幼稚園生の時ミアのため転生した清廉なるトランスフォーマー、ミチ、違う!メーテルだ!」


 そう言ってからミアを見た。


「僕はミアを悪から護る!」



 ミアは踊り場から階段を駆け下りた。


「ミ、違っ、メーテル!」


 ミアはメーテルと手をつないだ。



「クライマックスで姫を救うのは騎士(ナイト)のお役目だからね!」


 そう言い残すとミアとメーテルは手をつないだまま走り去って行った。



「ヤバい奴‥‥‥中二病か‥‥‥‥‥‥‥深刻な症状だな。」


 煌がつぶやいた。





 ミアとメーテルは階段を一階まで駆け下りた。


 振り返って煌が追ってこないことが判ると止まって弾んだ息を整えた。


「ミチルったら!」


 ミアは楽しそうに笑った。


「何?あれ、あのバイオレンス オブ ア ストーム のトランスフォーマー メーテルって!」


「だって、あの人が誰だっていうからさ、僕、困ってしまったんだ。こんな格好だし‥‥‥。」




 ミチルはマナカによる変身の後、ひとりで校内を回って周りの反応をみてまわっていた。


 錦鯉研究部とは無関係を装うため、だれもついていかない方がいいだろうということになったためだ。


 途中、ミチルの知っている生徒ともすれ違ったがミチルだと気づかれることはなかった。

 中にはじろじろ見てくる生徒もいたが、それは好意的な好奇心の目だったので変身は成功したようだとミチルは思った。


 そして最後に、生徒会室の前まで行ってみようとして3階の廊下まで来たとき、ミアと煌がその上の階段の踊り場にいるのを見つけた。


 ミチルはそっと様子を伺っていた。何を話しているのかよく聞こえなかったがときおり、土方くんとかのばらという言葉が聞こえてきた。


 ミチルはミアがミチルのために煌に接近したのだと直感した。


 そのうちミアの『やめて』という声が聞こえてあわてて飛び出したのだった。





「‥‥‥‥‥ありがとう、ミチル。」


 ミアは可憐な女の子に変身したミチルの目を見て言った。


「‥‥‥‥ごめん、ミア‥‥‥‥僕のためにこんなことに。」


 ミチルの目が潤んだ。


「‥‥‥‥ミア、約束して。二度とこんなバカなことしないと!僕のために。」


 ミチルがまばたきをしたと同時に涙がひとしずく流れた。


「‥‥‥‥ごめんなさい、ミチル。私が浅はかだったの‥‥‥‥。ひとりでなんとかできると思っていたの。」


 ミアの目にも涙が浮かんだ。


「‥‥‥‥‥生物室に戻るよ、ミア。もうすぐ完全下校の時間だ。」


「‥‥‥‥‥うん、ミチル。」


 再び手をつないで歩き出した。


「こんな風に手をつなぐなんて久しぶりだね。ミア」


 ミチルが言った。


「そうね‥‥‥‥‥。」


「いつからつながなくなったのかな?覚えがないよ。」


 ミチルが上を向いて考えている。


「‥‥‥‥‥それはね、私がミチルが好きだって意識したときからよ。なんか恥ずかしくなって。」


 ミアが前を向いたまま言った。


「‥‥‥‥‥‥もっと早く‥‥‥‥気づけばよかったな、僕。」


 ミチルも前を向いたまま言った。


「‥‥‥‥‥‥うん。」





「ミチル、私ひとりで先に帰るわ。さっきは私、先に帰ったことになっているんだもの‥‥‥‥へんてこりんな嘘をついてしまって‥‥‥。」


ミアが気まずそうに言った。


「そう?大丈夫?」


 ミチルが気遣わしげにミアを見た。


「ええ、大丈夫。また明日ね。メーテル!」


 ミアはミチルに小さく笑って手を振ってから昇降口へ向かった。






 ミチルが生物室の戸を開けた。



「ただいま!女子デビューして来たよ。」


「おっかえりー!どうだった?」


 ミチルは待ち構えていたマナカとのばらと中村に迎えられた。




 4人でわやわや周りの反応はどうだったかについておしゃべりした。




「土方くん、早く制服脱いで!もう下校になっちゃう。」


 マナカがミチルのヘアピンを外しながら言った。


「うん、ごめん。すぐ脱ぐよ‥‥‥‥、あの、それで、僕この姿で生徒会長の前にはもう行けなくなったんだ‥‥‥だから二度と女子にはならない。」







「あれ?ミア帰ったんじゃなかったの?」


 ミアは昇降口でリアスに声をかけられた。


 リアスはすることもなかったので先に生物室を出ていた。


「おい、また泣いてたのか?その顔どうしたんだよ?何があったんだよ?甲斐先輩とまたケンカしたのか?」


 ミアの顔を見て心配そうに言った。


「‥‥‥‥‥リアス。」


 ミアはリアスの純朴な顔を見てほっとしてしまった。緊張がふいに溶けた。


 涙が溢れて来た。


「ミア‥‥‥‥。」




 ミアが次第に落ち着いてくると、リアスはミアのきゃしゃな肩に手をおき、顔を覗きこんだ。


「このまま二人でかえろう。何があったんだよ?」







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