ミアのお手並み
9月も半ばになり、錦鯉研究部の文化祭準備は着々とすすんでいた。
雅秋も、美しく優雅に泳ぐ鯉の姿と、大口を開けた迫力の荒々しい姿の鯉の2種類の下絵を描き終わった。
「わぁ!雅秋。すごいわ!どうしてこんなに上手にかけるのかしら?雅秋の手は不思議ね。」
ミアが雅秋を尊敬の目で見ながら言った。
「ミアの頼みだったからな。マジで描いてるぜ。」
雅秋がミアには爽やかな笑顔を見せていた。
「手伝うことがあったらいってね、雅秋。」
ミアは雅秋への尊敬と感謝でキラキラした瞳を彼に向けた。
「ああ、サンキュー。色付けるとき頼むわ。」
雅秋はそんなミアをいとおしそうに見ながら微笑んだ。
「うん!任せて。」
ミアもにこりと微笑んだ。
美男美女による微笑ましい光景だったのだがミアと雅秋のやり取りを聞いていた部員たちは一様に顔を曇らせていた。
せっかくの雅秋の絵に危機が迫っている。
「ねぇ、まさか甲斐先輩はあのこと知らないの?ミアさんつい最近まで美術部に行ってたじゃん。」
マナカがこそこそ言った。
「うん‥‥‥‥でもモデルやってただけで絵を描いてた訳じゃないし。」
ミチルがもそもそ答えた。
「‥‥‥‥時がくれば甲斐先輩も気がつくさ。変に言ったら甲斐先輩機嫌悪くして描いてくれなくなるぞ!あれは真夏多さんのために描いてんだからな。今は黙ってろよ、みんな。」
中村がちらちら美しい二人を見ながら言った。
「ねぇ、さりげなくミアちゃんのあのゆるキャラの絵をあいつに見せたらいいんじゃない?‥‥‥‥‥‥もうっ!ミアちゃんたらあんな男といちゃついて!」
のばらがイライラしながら言った。
「何の話してんだよ?さっきから。」
リアスが不思議そうに、ささやきで井戸端会議をしている面々を不思議顔で見た。
「ああ、ザッカリーもいざというときは頼むからね!」
ミチルが珍しく険しい顔をして言った。
ミチルは教室の隅っこに置いてある小さなキャビネから一枚の紙を取り出してきてリアスに見せた。
「これは何か判るかい?」
ミチルはリアスに聞いた。
「なんだろう?これは色覚テストってやつか?‥‥‥ああ、わかった!これは心理テストだろ?これで何をイメージするかで深層心理を探るってやつ。こういうのやばいよな。答えによってゲス扱いして恥かかせて面白がる気だろう?俺はそんなのひっかからないぜ!」
リアスはふふんと皆を見下ろして言った。
「座家、今はそういうんじゃないから。」
中村の眉間に力が入った。
「‥‥‥‥よくわかんねぇよ?うーん?あれだ、あれ!猫又になった三毛猫が暑くてだれてるとこじゃね?ここに二本しっぽみたいなのあるじゃん。もしくは何だろう、この白とオレンジと黒‥‥‥‥なんか知っているような‥‥‥おう!わかったぞ。この色の組み合わせはあれしかかないぜ!」
リアスがちいさくガッツした。
「すごい!座家くんわかったんだ?」
マナカが中村と顔を見合わせた。
「おう!これはハロウィンのお化けを抽象画にしたものだろ?この色でピンときた!」
リアスが自信満々で答えた。
「‥‥‥‥‥やっぱりだめね。これからが怖いわ‥‥‥私。」
のばらがため息をついてこの場を離れた。マナカと中村も困惑顔で離れて行った。
「な、何だったんだよ。違うのか?それに怖いって?俺のこと?じゃあ、これは一体?」
「あ、もういいから。もうじゅうにぶんにわかったから。やばいって。」
ミチルがそう言ってリアスから紙を奪って去っていった。
「え?俺、ヤバイのかよ?おい、ミッくん!今の何のテストだよ?」
ひとり取り残されたリアスはカオス状態に陥った。
おわかりのように、リアスが見せられたのはミアの描いたアレだった。




