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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第1章
13/102

ため息

 月曜日の放課後、錦鯉研究部には部員5名プラス雅秋と、座家(ざか)リアスも含めた7名が集まっていた。


「では、錦鯉研究部の話し合いを始める前に、僕たちを手伝ってくれることになった座家リアスくんを紹介したいと思います。では、自己紹介してください。」


 ミチルは隣に座るリアスに言った。


 リアスは立ち上がりみんなの顔を見回した。


 雅秋と目が合った。一瞬火花が散ったがリアスは知らんぷりして自己紹介を始めた。


「俺、1年座家リアスです。俺のこと知ってる人も半分以上いるけど、知らない人、よろしく。特技は‥‥‥‥別にない。あー、高い所手が届くから便利ってたまにいわれる。以上。」


 リアスは、ぶっきらぼうにペコリと頭を下げて着席した。


「私は、2年の牧野のばらよ。よろしくね。仮入部したばかりだけど、今回の朗読劇の脚本、演出、監督をしています。」


 リアスを見てにこりとした。


 リアスは座ったままよろしくといいながら軽く会釈した。


「私は3組の池中真中(マナカ)よ。君のことはヒトミからよく聞いてるよ。8組では土方くんとラブラブ設定なんだってね?」


「‥‥‥‥まあな。ミッ君のおかげで小うるさい女子が寄って来なくて助かってるぜ。ミッ君には悪いけどなー。」


 リアスは面倒くさそうに言った。


「あはは、そうなんだよ。おかげで僕は8組で有名みたいだよ。」


 ミチルが特に気にするでもなく言った。


「土方くんはかわいいって3組でも結構知られてるよ。座家くんもかっこいいって人気だよ。ヒトミはモブだから知られてないけど、その普通ぶりが良いところだよね!」


 中村を見てマナカが言った。


「なんだよー!おれをディスってんのか?」


 中村がむすっとしてマナカを見た。


「違うってば。私はヒトミのそのフツーぶりが好きなんだって!」


 マナカが笑顔で言った。


 中村の顔がみるみる赤くなった。


 中村を見てマナカは焦った。


「ち、違うからね!特別な意味はないからねっ。」


「べ、別に俺だって!」





 一方では雅秋とリアスの応酬が起こっていた、


「座家?前に一度会ったよな。俺と。」


 雅秋が薄ら笑いをしながらリアスを見た。


「そうっすね。それが?」


 リアスがどうでもいいように言った。


「別に。あの日のこと覚えていてくれてうれしいなぁー、ふふん。」


 雅秋がニヤニヤした。


 リアスは雅秋がわざとらしくミアに馴れ馴れしい態度をとり、リアスに見せつけてきたことを思い出してムカついていたが無表情でやり過ごした。


「んー?なんだよ。つまんねーやつだな。」


 雅秋がリアスに興味をなくした。


「まあ、それじゃ、座家くんは私とマナカ以外とは知り合いだったのね。なら馴染むのもすぐね。良かったわ。」


 事情を知らないのばらが無邪気にリアスに言った。


 リアスはそれを苦笑いで流した。




 そのあと先週の金曜日に先送りにしておいた配役の変更について話し合いの結果、のばらと雅秋とマナカが2回づつ『牧野様』を演じることに決まった。


「俺の相手役はミアだからな!そこかえんなよ。」


 雅秋が言った。


「私の相手役もミアちゃんよ。そこだけは絶対だから。」


 のばらが鋭い目付きでミチルにくぎをさした。


「私の相手役はミアさんかのばらさんでお願いしまーす。だってまだ見ぬ彼氏に抱きしめられる前に他の男子となんて困りますから!」


 マナカは、ミアとのばらのナチュラルビューティーエキスを浴びるのが目的だったので適当に言い繕ってそう言った。




 最終的には、マナカが『那津姫』役を2回分抜けた分をミアに振り分け、ミチルと中村は朗読役と鯉&神役を半分交換した。



「いい感じに決まりましたね。それで、もし、万が一欠員が出た時には座家君に朗読役をお願いする事になります。台本を持って読めばいいから大丈夫だよね、ザッカリー?」


 ミチルが最後はリアスに向けて言った。


「ええっ!俺が‥‥‥‥‥。まあ、そんな事態は起きねぇだろ?わかった。」


 リアスは了承した。


「じゃあ、これ台本だよ。練習にも一度か二度は参加してね。」


 ミチルがリアスに台本を手渡した。


「ああ。‥‥‥‥‥ちょっと。」


 リアスはミチルを隅っこに連れて行き耳打ちした。


「なんで、あいつがいるって事前に言わなかったんだよ!ひでーな。ミッくん。中村もそんなこといってなかったし。」


 ちらりと雅秋を見た。


「だって、言ったら来てくれないかと思って‥‥‥。キリルには文化祭では広報委員の写真をとるのに忙しいからって断られてたし‥‥‥‥。怒った?」


 ミチルが不安げな顔でリアスを見た。


 ミチルの女の子ともとれそうなかわいい顔に思い詰めたような表情で見つめられたリアスは怒る気も失せてしまった。


「‥‥‥‥しゃーない。今回は許す。」


 リアスはむすっとした顔のまま笑った。


「なんだよー!座家。ミチルを独り占めすんなよ。何話してるんだよ?俺も入れろよ。」


 中村がリアスとミチルに腕をかけて真ん中に収まった。


「なんだよ、邪魔すんなよ!中村。」




「あらあら、あの3人はずいぶん仲良しだったのね?」


 のばらがミチルと中村、リアスがじゃれているのを見て言った。



「本当ですね。話し合いは終わったし、こっちは、ミアさん相手に『牧野様』のお稽古しようよ!先輩がた。」


 マナカが提案した。


「そうね、そうしましょう!ねっ、ミアちゃん。」


 のばらがミアにとっておきの笑顔で微笑んだ。


「おう、やろうぜ。さっそく俺からはじめるぜ!」


 雅秋が、ばっと立ち上がった。


「何いってんのよ!あんたは絵をかくんでしょ!」


 のばらも立ち上がって雅秋を睨み付けた。


「まだ、材料買ってねーし。そうだ!ミア、早速一緒に買いに行こうぜ。」


 雅秋が、椅子に座っているミアの背後にまわり抱きついた。


「きゃっ!」


 ミアが驚いて小さく声をあげた。


「私たち、練習があるのよ!一人で行きなさいよ!」


 のばらが不機嫌マックスあらわに雅秋に言った。


「嫌だね!ミアと一緒じゃないといかねーからな。うーん、今日もミアはいい匂いだな。」


 ミアの後ろにくっついて腕を回したまま雅秋が言った。


「本当ですか!甲斐先輩、私と早く替わってくださいよ!」


 マナカも立ち上がった。


「何だよ?池中!この間といい、少しは先輩に遠慮とかねーのかよ?」


「甲斐先輩は錦鯉研究部部員じゃないからここでは私の方がえらいんだもーん。のばらさんは仮部員だし。遠慮なんてありませーん!ふふん。」


 マナカは胸を張って言い切った。


「全く、どこに行ってもミアのまわりにはこんなのばっかり集まって来て

 ‥‥‥‥‥‥‥。」


 雅秋がため息をついた。






「おい、あいつら3人なんだかんだと仲良しだよな?ミチル、座家。」


 中村がマナカと雅秋とのばらを指して言った。


「‥‥‥‥あいつ、真夏多さんにべたべたくっつきやがって!」


 リアスが憎々しげに言った。


「‥‥‥‥うん、でもザッカリーだって、最近キリルとずいぶん仲良しだよね?」


 ミチルがふふふ、と笑った。


「い、いや。それとこれは別だぜ?わかんだろ?ミッくん。」


「‥‥‥俺、わかるぜ。俺もキリルっていいよなーって思ってるけど、他にも気になる子がいるしなぁ。」


 中村がぼそぼそ言った。


「何にしても、思い通りにはいかないものだね‥‥‥‥。」


 ミチル、リアスと中村はそろって「はぁー‥‥‥」と、ため息をついた。








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