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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第1章
12/102

のばらVS雅秋VSマナカ

「ミチルちゃん、ちょっと来て。」


 のばらがミチルを呼んだ。


 のばらばミチルをみんなから離れた場所に連れて行くと、小さな声で話し始めた。


「ミチルちゃん‥‥‥‥あなたミアちゃんが好きなのよね?なのにこんなシチュエーションになってしまって‥‥‥。」


 のばらはミチルが今日生物室に来てからの様子を気にして見ていていた。


「あ‥‥‥はい、でも錦鯉研究部のために協力してくれる人をミアが連れてきてくれた訳ですから。ここは部長としては感謝しないと。」


「ミチルちゃんはえらいのね。私は我慢がならないわ!よりにもよってミアちゃんたらあんな男を連れて来るなんて‥‥‥‥。いえ、もしかしたらあいつが強引に決めたのかもしれないわね。でも、こうなってしまったからには仕方がないわ。とにかくあいつに全面的に協力して一日でも早く絵を仕上げさせるのよ。ミチルちゃんも協力してね。」


「はい、もちろんです。でも‥‥‥‥‥どうしてのばらさんはそんなに甲斐先輩と‥‥‥その‥‥‥いつも言い合いを?」


 ミチルは今がチャンスだと思って、気になっていたことをためらいつつも聞いてみた。


「そんなのもち、かわいいミアちゃんをあいつから奪うためよ!」


 のばらが目を輝かせながら力強く言った。


「‥‥‥‥え?」


 ミチルの目が点になった。


「え、ええとね、わ、私のかわいい後輩を悪い噂の絶えない男から守ってあげたいという意味よ。」


「のばらさん!‥‥‥ありがとうございます。僕、のばらさんのこと、会った日から尊敬していたんです。のばらさんに生徒会長が夢中になるのもわかります。そのせいで昨日はひどい目にあったけど。」


「‥‥‥‥ひどい目?」


 のばらが訝しげな瞳になった。


「‥‥‥あの‥‥昨日のばらさんが帰った後ここでちょっとあったんです。僕がのばらさんと仲がいいと誤解していたみたいで‥‥‥‥。」


「あら、誤解じゃないでしょ?私たちは仲良しよ。違うの?」


 のばらはミチルににこりと微笑んだ。


「いえ‥‥‥。」


 ミチルは照れて横を向いた。




「おい、お前ら!そこで何こそこそ話してんだよ?また生徒会長様が来んぞ!あの事実を自分に都合よく脳内操作して補正認定する勘違い野郎がさ。」


 雅秋がのばらとミチルに向かって言った。


「いいのよ、もう計画書は生徒会を通ったの。だから機嫌をそこねてもかまわないわ。それにミチルちゃんの方がずっーとかわいいわ。あんたは絵の構図でも考えてなさいよ。‥‥‥さあ、みんなは早速セリフを読んでみましょう。ミチルちゃんが朗読だから量が多くて一番大変ね。でも、本番でも台本を見ながらでいいから。みんな、こっちに集まって!」



 教室の後ろのスペースにのばら、ミチル、ミア、中村、マナカの5人が集まった。


「じゃあ、はじめましょ。ミチルちゃんこれどうぞ。スタートはミチルちゃんよ。」


「あ、はい。」


 ミチルはいきなり台本を渡された。台本を開いて素早く最初の部分を黙読した。


「では第一幕よ。どうぞ、ミチルちゃん。」


 のばらが促した。



『これは今、正にあなたがいるこの地この場所で生まれた物語。はるかはるか遠い昔から伝わる物語。そう、霊界の使者、黄金の鯉の現れる伝説の井戸は今もこの学校のどこかにひっそり眠っているのです‥‥‥‥‥』


 ミチルは台本を読み始めた。




 それぞれ台本を持ちながら読んで順調に進んでいった。



「では、ここから第2幕ね。」


 のばらの脚本、演出、監督でどんどん進んでいく。



「じゃ次、ミアちゃんのセリフね、ここの部分は感情マキシマムでね!」


 のばらが言った。


「はい。えっと、『牧野様、わたくしを強く抱きしめてくだいませ!』」


『蓮津‥‥‥‥‥!』


「はい、ここで、私とミアちゃんは美しく見つめあうのよ。」


「はい、こんな感じで?」


「うーん、もうちょい顔を近づけた方がいいわね。」


「こ、これくらいですか?」


「うーん、いいわよ!このセリフから五つ数えたら抱き合うわよ。1、2、3、4、5」


 のばらはミアを抱きしめた。


「ミアちゃん、ここで、私の顔を見上げてね。」


「あ、はい、わかりました、『愛しております!牧野さま。』」


『私もだ‥‥‥‥‥、蓮津!本当はお前の肌に何者も触れさせたくはないのだ。だが‥‥‥‥‥私の身分では‥‥‥。』




「ちょっと待てよ!牧野さんよ。」


 雅秋が割り込んで来た。


「なあに?あんたは演技については無関係よ!」


 のばらがミアを抱きしめたまま眉をつり上げて雅秋に言った。


「これはなんだよ?近すぎだろ。それにミアの相手役は俺だろう!なんでお前がミアに抱きつかれんだよ!ああ?」


「これはお芝居なのよ?あんたばかなの?あんたは絵のことだけ考えてなさいよ!」


「こんなの見て黙ってられるかよ!俺にはお前の狙いはわかってんだからな!」


「もう!お稽古の邪魔するならもう出ていってくださらない?」


「決めた!俺の絵の報酬はミアの相手役だ!」


「何いってんのよ!図々しいわね。これは私が努力して作りあげたシチュエーションなのよ!あんたに渡すものですか!」


 また、のばらと雅秋のバトルが始まった。



 そこにマナカが言った。


「えー、私もやっぱ牧野様の役がいいよー。のばらさん替わってください!」


「ええっ!何言っているの?マナカまで。もう決まったんだからだめよ。マナカは那津姫よ!」


「そうだ!お前は那津姫ってのをやってろ!」


 雅秋がマナカにいい放った。


「ひっどー!甲斐先輩は部員じゃないくせにー。いじわる!」


 のばらと雅秋の争いにマナカも参戦した。事態はヒートアップしていった。




「おい、ミチルどうすんだよ、これ!」


 中村がお手上げポーズをした。



「み、みんな、落ち着いて下さい。」


 ミチルが争い中の3人に言った。


「あの、皆さん!提案があるんですけど。聞いてください!」


「‥‥‥なあに?ミチルちゃん。私はひかないわよ。」


「止めても無駄だぜ。俺はあきらめないからな。」


「土方くんは、私の味方してくれるよね?」


 一斉にミチルに言った。




「あの‥‥昨日このお芝居は内部公開の日に2回と一般公開の日に4回やる予定ですよね?計6回です。なら、ダブルキャストかトリプルキャストにしませんか?そうすればいざ何かトラブルが起きた時も対処できますし。」


 ミチルが皆を見回しながら言った。


「まあ、それもいいかも。私が蓮津姫で、ミアちゃんが牧野様パターンもいいわよね。」


 のばらが言った。


「なんで、相手役はミアだけしか想定しねぇんだよ?え?お前のユリは知ってんだからな!」


 雅秋がふっと鼻で嗤った。


「まあ、思い込みの激しい人だこと。私には生徒会長という彼がいるのよ。まあ、あんたがどう思ったって気にもならないけど。」


 のばらは雅秋を半目で見て応酬した。


「あ、あの、では今日はこのまま稽古して、月曜日にまた改めて配役を決めるということにします。」


 ミチルがかわいい顔を緊張させて言った。


「‥‥‥‥部長のミチルちゃんがいうならそうするしかないわね。残念だけど。私はミチルちゃんの意見を尊重するわ。」


 のばらが言った。


「わかってくれてありがとうございます、のばらさん。」


「じゃあ、俺の絵の報酬はミアの相手役2回分だけでいいにしてやるぜ、ミチル。」


 雅秋が仕方なく妥協した。


「わーい!私も牧野様参入!うぇーい!」


 いきなり参戦したマナカは戦果をあげてご機嫌になった。



「あの‥‥‥‥‥ミチル、私だけずっと蓮津姫役ってわけではないよね?」


 ミアが困惑顔でミチルを見た。


「う、うん。その件は‥‥‥‥月曜日に先送りで。」


 ミチルは天使の笑顔を浮かべごまかした。




    挿絵(By みてみん)





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