表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第3章
100/102

血筋

 

 リアスに朗読の区切りが来てミアとマナカの演技に移った。その間に客席に新たに鳥の羽の衣装のコスプレ男子と小学校低学年位の裾の短い着物姿の女の子が加わった。


 ーーーん?あの男子‥‥‥俺の兄弟?すっげ俺に似てね?


 ‥‥‥‥‥ま、まさか‥‥‥ワンチャン親父に隠し子がいて、ある日『おまえにお兄ちゃんがいましたよ!』なんてこと‥‥‥‥‥あるわけねーか。他人のそら似だな。世の中3人ドッペルゲンガーみたいなやつがいるって言うしな‥‥‥‥‥


 でも‥‥‥‥あの女の子‥‥‥‥どこかで、どっかで見たことあるんだよな‥‥‥‥えっと、あれは‥‥‥‥‥ああ、わかんねぇ。

 なぜか心がさわさわする。あまりいい感触じゃねーな‥‥‥‥‥




 そして、舞台上ではマナカが周りの従者らをまいて蓮津のために黄金の鯉の鱗を得ようとして井戸に飛び込むシーンになった。


 マナカが井戸の中を覗いた。


「黄金の鯉殿、妾にそなたの鱗を一枚だけくださらんか?元気のない蓮津を喜ばせたいのじゃ。礼はそなたの好きなものを用意するでのう。今、妾がそちらに行くでの。待っておれ。」


「那津姫様!何をなさっているのです!お止めくださいませっ!」


「止まれ!そこで待て。妾はあの鯉に用があるのじゃ。すぐ戻る。」


 マナカが井戸に飛び込んだ。


「なっ、無礼ものめっ!‥‥‥‥きゃーっ!!」


「姫様!」


「姫様!!!」


「やめろーーー!!!化け物め!!!」


「那津姫様ーーー!!いやーーー!!!」


「姫様!誰か助けて!」




 那津の目が驚きで見開かれた。


 キザシの腕からばっと飛び降りた。




 その時、リアスは着物姿の小さな女の子の顔が正面から見えた。



 その時、リアスの思考回路は記憶のかけらを捕らえた。

 なぜ心がさわさわするのか理由が判明した。


 その事実は衝撃となってリアスを叫ばせた。




「うわっ!あれ、那津姫様だー!」




 ーーーあの子は!キリルが撮った心霊写真に写っていた女の子!


 ブイサインして写真のど真ん中に。島田先生が、言っていた。あれは那津姫だって!まさか、本当に?





 裏方をしていたのばらとミチル、出番ではなかった雅秋、ミア、中村もリアスの声に驚いて舞台上に飛び出した。



 教室にいた全員が一斉に那津とキザシに注目した。



「これは‥‥‥‥‥これは事実なのか!なあ、キザシよ!」


 那津はキザシに憤怒の(てい)を様している。


「まさか‥‥‥‥‥成瀬が妾を飲み込んだのかっ?」


 那津がキザシを見上げながら叫んだ。


「違う、あれはあの親父じゃねぇ。黄金の鯉なんて他にも何匹もいるじゃねーか!そうだろ?」


 キザシがしゃがんで那津に視線を合わせて言った。


「そ、そうじゃの‥‥‥‥‥妾としたことが取り乱して‥‥‥すまぬ。」


「いいじゃねーか、誰が那津を飲み込んだとしたって。そのおかげで俺たち出会えたんだし!子どもだって二人出来たじゃねーか。ヒザシは霊界で大鷲として立派に独り立ちしてるし、カザシだって今もこの現世のどこかに人間として紛れているはずだ。あいつは那津に似て人間に近い。音信不通だが、後50年くらいたったらさすがにあいつだって俺らに連絡を寄越すだろうさ。」



「まあ、そうじゃの。」


「それに、ほら!あの男、少しだけ霊鳥大鷲の血が入っている。もしかしたらカザシの子孫かもな!俺に似てるし。」


 キザシが舞台隅で目を疑うようにこちらを凝視しているリアスをあごで指した。


「ほお‥‥‥‥カザシもやるのう。こちらの世界でも我らの血を広めるとは。」



 キザシは舞台の上を見ながら言った。


「ほら、見ろ。あの男は黄金の鯉の血がほんの少し現れている。あの赤い長い髪の女‥‥‥あれは緋鯉の血、現れてんな‥‥‥‥あいつらは姿はわりと美しいがなんせ腹黒いのが大半だからな。俺は好きじゃねぇ。」



 自分の事を言われているのがわかったのばらが舞台上からキザシと那津を指差して言った。


「ちょっと!あなたたち!勝手に入ってきて私のことディスってるんじゃないわよ!私だってあんたみたいな隙さえあらばこれ見よがしに筋肉を見せつけようとする男は大っ嫌いだわ!」



「ほーら、来たぜ!だから緋鯉族は嫌なんだ。さて、戻るとすっか。那津!」


「そうだのう、成瀬が待っているからの。」


「じゃあ達者でな。馬白、ユミ、ちっこいの。」


 入口の隅っこに立っていた親子3人にキザシは振り向いて言うと那津を両手ですくうようにして抱え上げた。


「じゃあな!お前ら、邪魔したな!ありがとさん。」


 そういいながら一同を見回してから中庭に面した窓を開けた。


「あばよ!」


 キザシはひょいっと窓枠に簡単に飛び乗るとそのまま飛び降りた。



「キャー!」


 教室に悲鳴が響いた。


 窓際近くの席の者は窓に駆け寄ってキザシが飛び降りた下を見た。




 中庭ではコスプレコンテストが最後で特にイベントは行われていなかったが、特設ステージの片付けをしている生徒たちが5、6人いた。




 彼らの1人が鯉の池の水面が妙に眩しいことに気がついた。


 空を見上げたが特に変わったことはなかった。


 なんだろう、と池に近づいて行った。


「ん?池の中にライトが落ちてるとか?」



 池を覗いたその生徒が他の生徒を呼ぼうと池に背中を向けた瞬間、彼は後ろから水をびちゃんと浴びた。



 目映(まばゆ)い金色の巨大な鯉が水の中からジャンプした。



「やっほーい!成瀬、待たせたのう。済まぬ。」


「悪ぃーな、成瀬さんよ。頼むぜ!」


 飛び上がった黄金の鯉が描く放物線のyの頂点が、4Fの窓から飛び降りし那津を抱いたキザシの落下線との交点となった瞬間、二人は鯉の(ひれ)の辺りでスッと姿を消した。


 そのまま黄金の鯉は池の中に飛び込み再びy=0となった時、大きな水しぶきを上げた。


 先ほど生徒は背中に水を浴びせられ、驚いて振り返ったために、今度は1度目の何倍もの水を真っ正面から浴びることとなった。


 黄金の鯉は辺りを水浸しにしてそのままあっという間に消えてしまった。

 一瞬の出来事で水を浴びせられた生徒でさえ何が起こったのかよく見えていなかった。

 眩しい光の後の水しぶきで、目を瞑ってしまったし、目を開けた時には鯉は既に水中に消えてしまっていた。


 他の片付けの生徒たちも何かしらのまばゆい物体と鯉が池に戻る時に起こった水しぶきしか目撃してはいなかった。

 なぜこんな水しぶきが突然起こったのかわからず、皆、何が落ちて来たのかと池を覗いた時には既に黄金の鯉は消えた後だった。


 池で飼育されている鯉たちは隅っこに避難していて無事だったようだ。

 鯉同士意思疎通は出来ていたらしい。




 だが、こちらの観客にはキザシの飛び降りジャンプと黄金の鯉のジャンプの交差を目撃した者が1人だけいた。

 4Fの窓から目撃した生徒によると、それは水族館のイルカのパフォーマンスのような高さだったという。




「なっ、何なのよ!さっきから次々とおかしなコスプレイヤーが現れて!」


 のばらはリアスをキッと睨み付けた。


「後で今のは何だったのか説明しなさいよ!」


「えっ!俺?」



「とにかく、次は第4幕よ!皆、用意して!」


 のばらがヒステリックに指示した。



 有終の美を飾るはずのラストパフォーマンスはもはや物語の体をなしてはいない。まるでコスプレイヤーのバラエティーショーになってしまった。





「何かさー、まとまりの無い散漫なストーリーだけど、結構面白いねー。」


「うん、すごいイリュージョン入っちゃってるし、アクロバティックだし、すごいよね。」


「演劇部顔負けじゃん。」


「そうだな。それに錦鯉研究部って美形揃いだよなぁ。目に優しいよなー。」



 だが意外にも観客には好評のようだった。 



 そして、てんやわんやの末、第4幕が始まった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ