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錦鯉研究部  作者: 黒りんご
第1章
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ミアVS煌VS雅秋

 「君は‥‥‥‥?」


 ミチルをかばって出てきた美少女に煌は目を見張った。


 彼女は無表情のまま煌を見ていた。



「のばらさんが誰と帰ろうとしたってそれはのばらさんの自由ですよね?それにミチルは昨日は私と一緒に帰ったの。それってあなたには何の関係もありませんよね?」


 美少女は淡々と言った。


「君は誰なんだ?」


 煌が再び聞いた。


 煌は今までこの清楚で可憐な女の子を見かけたことはなかった。

 そして、今、この美少女は無表情を装っているが明らかに煌に敵意を向けている。

 それも、この土方ミチルというショタを問い詰めた煌を非難して。



 一体この土方ミチルは何者だ?出会ったばかりののばらにひいきにされ、更にこんな美少女を見方につけてかばってもらえるなんて。



 煌は美少女の後ろで彼女の背中を見て不安げな顔をしているミチルを見た。


 煌の視線が自分の後ろに移ったのを感じたミアは煌に一歩近づいて言った。


「もう、のばらさんも帰宅しましたし、戻っていただけますか?今私たち部活中なんです。」


「‥‥‥さっきから僕の質問に答えていないね?君は。」


 煌も威厳を保つ為引けずに一歩その美少女に近づいた。


 ミアと煌は二人とも無表情を装いながら至近距離で静かなる視線の火花を散らしていた。





 生物室が突然緊迫感に包まれた状況になった。


 中村が目線で、マナカに言った。


『おいっ、どうすればいいんだよ。俺たちっ。』


『私たちまで参加したら余計燃え広がるって。余計ヤバくなる。』


『じゃ、ギリまで黙っとこうぜ。』


『了』




 緊迫の数十秒が流れていたその時突然生物室の戸が開いた。


「ミアいんの‥‥‥‥‥‥‥おいっ!そこのお前、はぁ?何ミアと見つめあってんの、あん?ざけんな!今すぐ離れろ!‥‥‥‥‥まさかお前までミアに告ってんじゃねぇだろうな?」


 雅秋のお出ましだった。


 雅秋は昨日の帰りにミアとケンカしてしまっていた。ミアがこれ以上ミチルとのばらと親しくなることに警戒してミアに対して強すぎる態度をとってしまったのが原因だった。


 ミアはおこになると既読無視をする。昨日からその状態は続いていた。

 雅秋としては直接ミアに会いに行く方がてっとり早い。



 今日はミアに謝ろうと思ってはいたが、だが昨日はミアが自分の腕をすり抜けてそのまま雅秋をおいて帰ってしまったことに、腹を立てている自分もいた。



 自分の彼女にあれくらいしたって普通だろ?なんであんなに怒るんだよ?それとも、あの時、完全に俺のものになるようにいったのがいけなかったのか?あれは今すぐって意味じゃなかったのにミアは誤解して怒ったのかもしれねぇな。



 雅秋は放課後どうするか思案した結果、とりあえずミアに会いに行くことにして今ようやくやって来たのだった。


 そしてこの状況である。


 雅秋の怒りはまず煌に向かった。


「お前誰だよ!おいっ。ミアと何してたんだっ!言え!」


 ミアと煌の間に割って入った雅秋が言った。


「‥‥‥‥‥。」


 煌は、もちろんこの男子が誰かは知っていた。


 甲斐雅秋。自分が告白しようとしていた寸前に目の前からのばらを奪い去ったと思ったら、すぐに心がわりした最低な男。それなのにのばらはこの男を彼氏しておくことに固執していたなんて。チャラチャラかっこつけた女たらし。


 と、いうことは、このかわいい子は‥‥‥甲斐雅秋がのばらから乗り換えた今の彼女か。なるほどな‥‥‥。この子なら‥‥‥‥その気持ちはわからないでもないが。ミア‥‥‥か。この子もじき捨てられるってか?かわいそうに‥‥‥。


 だが今はまだこの子に夢中って訳か。ふーん。ここでちょっとからかっておこうか?のばらを奪われた恨みもあるしね。



「僕は2年、生徒会長の雪村(こう)だ。‥‥‥何してたって?僕の方こそ聞きたいよ。この1年の女子がいきなり僕の目の前に迫ってきてぼくを見つめてきたんだから。もしかしてこの子は僕に気があるのかもしれないね‥‥‥‥まあ、わからなくもないね。自分の彼氏がこんな乱暴な男では乗り換えたくなるのもわかるよ。」


 煌は高飛車に雅秋に言った。


「んなことあるわけねぇだろ。意識過剰野郎が。お前妄想激しいぞ?」


 雅秋がうんざりした顔で言った。


「ふふ、どうだろうね?女の子の気持ちは変わりやすいから。では、僕は失礼するよ。邪魔をして悪かったね。()()()()()。彼の事で困ったら相談にのってあげるから。またね。」


 煌はそう言い残すと生物室を出て行った。





「‥‥‥‥‥ミア、ちょと来い。」


 雅秋があごをドアのほうにくいっとした。


 ミアは数秒目を瞑ってからちいさくため息をついて、雅秋に続いて生物室を出て行った。


 残った3人は心配そうにミアの後ろ姿を見ていた。





 1Fの渡り通路まで出ると雅秋がミアに振り返った。


「俺、昨日のことでミアに話しに来ただけだったんだけど?」


「‥‥‥‥‥‥」


「なんだよ、さっきの『ミアちゃん』っていうのは?」


 雅秋が胸くそ悪そうに言った。


「雅秋、‥‥‥‥‥‥たぶんあの人はのばらさんの彼氏なんだと思うけど。」


「‥‥‥で、まさかあいつが言ったみたいに、ミアはああいうくそ真面目な奴がいいのか?」


「‥‥‥さっきのは、見つめていたんじゃないわ。あの人がミチルにのばらさんとの仲を聞いてきてしつこくてなかなか戻ろうとしないからムカついてガンをとばしていたのよ!」


 ミアが腹立たしげにいった。


「ミアがガンを飛ばすって‥‥‥?効くのかよそれ?あはは!ミアはおもしれーな!」


 ミアの顔を覗き込んだ。


「もう、雅秋ったら!ひどいわ、笑うなんて。私本当に怒ってたのよ?」


 ミアはほほをほんのり染めて抗議した。少しむきになった顔がかわいくて雅秋はニヤニヤしながらミアの目を見た。


「俺にも?」


「‥‥‥‥それは‥‥‥どうかしら?」


 ミアは目をそらした。


「ミア、好きだ。」


 雅秋が言った。


 ミアは顔を上げて雅秋の目を見た。


「どうしたの?急に‥‥‥‥‥。」


「ミアは?」


「‥‥‥わかっているのよ。雅秋が私を守ろうとしてくれてることは。でも、行き過ぎのところがあるのよ。雅秋、私のこと信じて。私の彼は前にも後にも雅秋だけだわ。今のところ。」


 雅秋の機嫌はすっかりなおった。


「何か最後の余計な一言が気になるけど‥‥‥まあいい。俺がミアの最初の男っていうのはいい感じだし。」


 ミアは何か腑に落ちない感触に包まれつつ言った。


「何か気にさわる言い方だけどまあいいわ。あの‥‥‥聞いてもいい?」


「なんだよ?」


「文化祭で錦鯉研究部で朗読劇をするの。そのときに黄金の鯉の大きな迫力のある絵が必要なの。誰か描ける人を知らないしら?」



「‥‥‥知ってるぜ。」


「本当に?紹介してもらえないかしら?材料はこちらで用意するわ。作業はボランティアになってしまうけど、でもできるだけ何かの形で借りは返すつもりよ。」


「オーケー。じゃ、俺がやる。」



 雅秋はこれで堂々と錦鯉研究部に自由に出入りできるようになる。そしてミアとも一緒に帰れるし、のばらとミチルの動向も探れる。



「雅秋が?いいの?でも、勉強は大丈夫なの?3年生なのに‥‥‥。」


 ミアは喜んでいたが、雅秋のことを心配して手放しでというわけではなかった。


「気にすんな。ミアのためだからな。」


「雅秋‥‥‥‥!ありがとう。私も手伝うから。」


 ミアに貸しを作り、感謝され、しかもミアといる時間が増えるなんて最高だ、と雅秋は思った。







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