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一時限目 夢からの目覚め

 ――ユーリよ、お前の力は正しい事の為に使いなさい。


 壁に背を付け、恐怖に怯え切っているユーリ少年に、父親は優しく呟く。


 平和で平凡な日常が広がっていた屋敷は殺戮による血の色で全て塗り潰されてしまった。優しい笑みを浮かべる父親の顔にも青黒い亡者の色で塗り替わりそうになっている。


 しかし、それでも父親の目だけは死んでいない。揺ぎ無い信念の灯火は、まだ消えていなかったのだ。


 「と、父さん! 後ろ! 後ろ!!!」


 震えが止まらない声でユーリ少年は懸命に叫ぶ。少年が指を指した方向には、【死】が鮮血を滴らせながら忍び寄っていたのだ。


 ――大切な人を護るため、大切な人を正しい道へと導く為に、お前はその力を使いなさい。


 「――それが、私達【勇者の血族】の力なのだからッ!!!」


 ユーリから離れ立ち上がった父親は己の生の全てを雄叫びへと返還させる。それに伴って、彼の右手にある【勇者の紋章】も神々しく光り輝いた。


 [ユーリ! しっかり見ておきなさい、勇者の力を!! 大切な息子の道を護り切り開く父親の背中をッ!!!]


 「と、父さぁああああああんッ!!!!!!」


 剣を構えた父親は、圧倒的絶望である【死】へと突貫していく。そんな様を、ユーリ少年は見つめることしか出来なかった。声を振り絞って、大粒の涙を流して、しかしながら父親から受け継いだ信念の灯火を微かに灯らせて。




 そして、ユーリ少年の瞳が最後に映した物は………………。




 「――う、うぅん。もう朝か…………ってうわああああああッ!?」


 長い悪夢と暗転から目が覚めたユーリは、おぼろげな視界が映した物に思わず絶叫した。


 約三畳の仮眠室に備え付けられたベットの中、ユーリの眼前では褐色肌の健康的なツヤのある双丘が着崩された制服から肌蹴(はだけ)ていたのだから。


 一体何がどうなっているんだ……!? 昨日は初授業の準備を万全にして、早めに床に就いた! 酒も飲んでないし、飲んだとしても一晩の過ちを犯すことなんか絶対にしない! そもそもそんな相手すらいない!!


 誰なのだろうか、このけしからんおっぱ…………胸の持ち主は!?


 ユーリは恐る恐るその谷間を縫って行くように顔をあげる。男を魅了する香りが鼻腔に立ち込み、気が遠くなりそうな数秒間を経験した後見えてきたその人物の顔とは――。


 「――ん、おはよ、せんせぇ。良い夢見れた?」


 「う、うわああああッ!? やってしまったぁああああああ!!!!!」


 人物の正体を理解したユーリは再び絶叫する。


 朝日に照らされ輝く銀髪、長く尖った耳にはアクセントとしてピアスが装飾されており、まだ若干のあどけなさが残る顔立ちには悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。


 サーシャ・アル=ジャビン…………これが彼女の名前だ。


 彼女はダークエルフという種族であり、そしてユーリが受け持つクラスの女子生徒でもあった。

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