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第十三章-2 助ける力を持つ者は……

 身構えた先に待っていたのは、素朴で短い疑問だった。


「ケイタさんの世界で言う悪って何ですか? 魔物と似た存在のアンドロイドは私達を襲います。けど、悪くないアンドロイドもいます。そして、似たように良い人と悪い人もいるのが分かりました。あの強盗の人は確実に悪い人です。子どもたちを餌に私達を騙しました。

 じゃあその利用された子供たちは良い人だったのかと言われたら、ケイタさんは何と答えましたか?」

「騙そうとしていた、悪い奴ら――だな」


 ステラさんは悲しそうに頷いた。


「あんなにかわいそうなのに、どうして悪い人たち何ですか? どうして助けようとしないんですか? ケイタさんもサクラさんも、時代は違っても同じ世界の人間だから、いいと悪いが共有して理解できているんだと思うんです。でも、私には分からないんです。何で、何でそんな差が生まれるんですか?」


 ステラさんの嘆くような問いかけに俺は心が痛くなる。

 彼女の世界は、時代を急ぎすぎなかったから、純真に生きられたんだ。

 一方の俺達の世界は、俺のときから既に急いでいた。


 誰よりも強くなる。誰よりも賢くなる。誰よりも先に行く。

 そんな世界で生まれた競争が、心の騙し合い。

 既に整備された世界で行うレースには単純な向き不向きを除けば、大体の人が同じゴールに辿り着けた。それで納得する人もいればそうでない人もいた。後者が大多数だったことは言うまでもない。

 ステラさんが抱いた疑問。これに答えるのは簡単だ。

 自分のことだけを信じろ。

 人の信じかたによって、善と悪は大きく変わる。

 勿論そうすることによって自分の信じた善に対する悪からは反感を買う。でも、それを気にしていたら負けてしまう。全部根絶やしにしようとしても必ず悪は芽生えるし、どんな善行であっても、少なからずどこかしこで悪が生まれる。


 それを、俺は伝えることが出来ない。

 ステラさんが信じ切れるとは思えなかったからだ。


「この世界は俺の時代位からかなり平和だったんです。だから何でしょう。ここまで捻くれてしまったのは」

「平和だった? 勇者がいなかったのに?」

「勇者、こちらの世界では英雄と呼ばれる人は度々歴史上に現れます。でもそれは一瞬のこと。時代が豊かになれば、その人たちの偉業も忘れてしまう。だから、捻くれちゃったんですよ」

「……よく分からないです」

「分からなくてもいいですよ。なんせ、ここはステラさんの世界じゃ無いんですから」


 俺は突っぱねるようにして最後を締めくくった。厳しいかもしれないが、これも彼女の為であり、俺は彼女の為に、やらなければならない事がある。


「と、いけない。由人さんに呼ばれていたんだった。ステラさん、俺ちょっと行ってきます」


 ステラさんからの返事はない。追いかけてくることも無い。咲倉さんと一悶着あったとはいえ、レジスタンスをまだ信じてくれているみたいだ。

 彼女の威厳を傷つけてしまったかもしれない。ただ、今後の為にも、今は咲倉さんと話す時間が必要だ。

 この世界の抜け道を。そして、情勢を詳しく。

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