第九章-2 元に戻れはしたが……
俺とステラさんは壁をヘアースタイルの看板に緑のフェンス、ネオン管でできたお洒落な文字などで穴を埋めたパッチワークのようなビルに案内された。
「運が良かったわね。ネットポリスに捕まらなくて、何があったか知らないけど、あれだけ倒してれば生きて地下牢獄から出ることは出来なかったわ」
俺の手を引いていた女性がカラーサングラスを外す。
横から伸びていた黒い髪。品川という標識から予想できたように瞳は黒く、顔立ちも端整な大和撫子風の日本人だった。そこに吊り目で若干強気な姉御肌が加わった彼女は更にこう続けた。
「でも、あいつらを倒してくれたのには感謝するわ。あいつらどう見てもこのアジトを狙おうとしていたわ。仲間から連絡があって迎撃体勢を整えていたけど、いくら待っても奴らは来ない。そこであたしと数名で偵察に出たら、あんたたちがドンパチしてたわけ。あの様子からして奴らはだいぶ戦力を失ったみたいだから、次の侵攻までは時間を稼げそうね」
「はぁ……」
いきなりすぎる展開に俺は呆然とするしか無かった。
ステラさんに至っては端から端まで理解できていない模様で、今でもオロオロしている。俺だって理解できない部分が多いんだから、異世界出身の彼女が理解できないのは当たり前か。
なら、ここは俺が率先して前に出るしか無いな。
「助けて頂きありがとうございます。俺は望月恵太、こちらはステラ・イシリオルです」
「先ほどはありがとうございました! 私はステラと言います!」
「……ふむ」
俺らを見て不審な目をする女性。ステラさんの存在は異世界で言う俺みたいな存在なんだから仕方ないか。
ただ、女性の疑惑の目は俺にも向けられていた。
「あたしは咲倉。早速で悪いが聞かせてくれ。お前たちは一体ここで何をしているんだ?」
ま、まぁ……そうなるわな。
ステラさんは勿論のこと、俺だって今の世界ではそぐわない格好をしている。この二人の組み合わせを表すならコスプレイヤーとカメラ小僧となる。実際は異世界の勇者と異世界へ行って元の世界に戻れた原住民なのだが。
「言っても分かってくれないとは思いますが、彼女は異世界から来た少女で、俺は恐らくこの世界の、地球の過去からここに飛ばされてきました」
「信じ難いな」
一蹴された。まぁそうなるわな。
「でも、ここってケイタさんの世界で当ってるんですよね⁉」
「いや、俺がいたのは2019年だ。恐らくここは――咲倉さん。ここは何年ですか?」
聞くのが怖かった。
もし、俺がこの世界で何らかの行動を起こせば。或いは、俺がこの世界で何らかの教訓を得て、元の世界に戻った際に行動を起こすことによって世界が変わってしまうかもしれない。もしくは変えなくてはならない運命に立ち向かうことになるかもしれない。
「――――今はだな、3200年だ。西暦以外では言いようがない。見ての通り、日本は事実上壊滅状態だからな」
その願いを叶えるのは、俺の手には余る物だった。




