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第四章-10 やれることをやってみたら成果は出るけど……

 ステラさんは笑いながら足をパタパタさせた。

 だいぶ昔の話だったのかな?


「やっぱり私はイシリオル家の人間なんですね。勇者だから手を差し伸べてしまうんです。それがどんな規模であろうとも、心苦しいことでも」

「そして、今までに無かったことでも」

「そうですね」

「でも、そのおかげで俺は今生きていられるんです。忘れてくれていたことに感謝しちゃいけないんですけど、本当に助かっています」


 彼女との出会いは衝撃的だった。

 圧倒的強さ。

 純真的優しさ。

 そして、悲惨的自己嫌悪。


 あのまま彼女が勇者を続けていたらどこかで大変な事になっていたと俺は思う。そこに突如俺が現れた。これは何か因果があるのだろうか?


「それはお互い様ですよ。私は勇者なんですけど、何人も救ってきたと同時に、――何人にも罵られました」


 ステラさんの溜息がこちらの右手をも撫でる。

 しかし、そのうち実際は何人が罵ったのだろうか? ヘインスの町では最終的に源泉への道泉は復旧不可能なまだに破壊されてしまった。それでも町の人達は山賊と言う脅威から免れることが出来たことを称賛してくれた。

 この件に関して、彼女は救ったと感じているかいないか。それについて彼女から正確な答えは出されていないが、二日間の言動と行動に大きく現れていた。


 彼女は背負い過ぎている。勇者と言うワンオペを。労働基準法を遥かに超える時間で。


「きゃっ!」


 荷馬車の車輪が大きな岩の上を通ったのか、大きな振動が馬車無い、そして俺たちを襲う。

 小さな悲鳴をあげると同時にバランスを崩したステラさんが俺の肩に頬を俺の右手に右手を押し付ける。


「ごめんなさい! えっ?」


 元の位置に戻ろうとする彼女の右肩に右手を回した。


「このくらいの距離なら全く問題無いから。まぁこれ位しか、できないけどさ」

「………………うん」


 そう言ってステラさんは静かに頷いてくれた。

 それから数分もしないうちに彼女から静かな寝息が聞こえた。

 ほら見ろ。勇者であっても疲れるんだ。

 だから、休む時は休んで、頼る時は頼んないとな。


 彼女を起こさないように俺は心の中で彼女を優しく叱責した。


 ガウムの宿でマグウィードさんにそのことをおちょくられたのは言うまでもなかった。


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