第三章-5 指導する才はあるのだけど……
セイスキャンに行くのは並大抵のことでは無かった。当初ヘインスの町にある定期便を利用しようとした意図がこの旅でよく分かった。
石造の建築が多く、活気が溢れ、路地にはタープのような物を張った露天に果物や野菜などを売っていた。中にはドーナツみたいな揚げ物をその場で作っている屋台のような物もある。
人の数も多く、ヘインスの町に住んでいた人達と同じエスニックな服を着ている人もいれば、オシャレなフードを被った人や宝玉を備えたお金持ちっぽい人たちが後ろに荷物持ちを従えて歩いていたり、見るだけで暑そうな重鎧を着ている人もいる。
流石都市。
と俺は感動して、俺は恥をかいた。
「ここはガウムと呼ばれる町でセイスキャンじゃありませんよ」
マグウィードさんは笑いながら答えた。
「セイスキャンにはここから更に三日もかかります。ケイタさんの世界にあるトラックならこんな所を飛ばしてすぐさまセイスキャンに行くことも可能ですが、私たちの世界ではそれが難しいんです。何より効率が悪いですからね」
「そうなんですか。いや……そうですよね」
俺はすぐ横に積まれた木箱を見た。
保存が効くように施された魚や肉、芋はともかく、何の保存法も施されていない野菜類を更に三日、約一週間近く幌を被せてあるとはいえ日光を布一つ越しに受け、温度に関しては避けようがなかった。これでは売り物になる前に腐ってしまう。
「ですから私はここで二日ほど留まろうと思います。勇者様やケイタさんには申し訳ありませんが、その間近場の宿で待っていただけないでしょうか? 或いは定期便を探しても構いませんし」
マグウィードさんは行商人である故の事情を詫びて、俺たちが次どうすればいいのか提案してくれる。
「いえ、俺はマグウィードさんを待ちます。ここまで一緒に来たんですからセイスキャンまで一緒に行きましょう。それに、昨夜の話の続きは気にならないのですか?」
俺はただの居候の相乗りであるにも関わらず鼻につくような言い回しでマグウィードさんに問いかける。それに対し、マグウィードさんは怒ることなく言い返す。
「お金と為替ですよね? お金が国によって違うとは珍しいですし、尚且つお金の価値がどんどん変わっていく仕組み何か非常に興味深いですからね」
経済学部の知識がマッチしたおかげでマグウィードさんは俺にかなりの興味を示してくれた。異世界への戻り方に関してももしかしたら何か手がかりを探してくれるかもしれない。行商人と言うこの世界における最強の情報ツールが俺の味方をしてくれることはこの上なく嬉しいことだ。
「それじゃ私は自身の生業に精を出します。あなたたちも頑張ってくださいね」
マグウィードさんは馬を嘶かせ走っていった。起きてたんだな、たぶん。
「あの……本当にやるんですか?」
ステラさんが不安を漏らす。
けど、ここの二日と言う期間を有効に使うとすれば帰る手段を探すよりもそっちに力を注いだ方が今後の役に立つと俺は考える。
「わかりました。では、ギルドに向かいましょう」
俺はステラさんの指示によって武者修行ならぬ冒険者修行に向かうこととなった。




