第三章-3 指導する才はあるのだけど……
マグウィードさんの視線と俺の視線が自然と同じ方を向く。疲れはてているのか、俺たちが彼女の家系の話をしているにも関わらず起きる気配はない。
彼女の精神が敏感すぎるのはもしかしたらその使命にも関係しているのかもしれない。
俺もこの世界にこなければ、一年後そのような立ち位置に立たされていた可能性が大いにあった。就職し、社会人として責任ある仕事をし、けじめと責任を持つこととなっていた。
彼女は、俺とそこまで年が変わらないステラさんは俺よりも重い重圧に耐えなければならないのか。
「ケイタさんにこんなことを言うのは酷でしかありませんが。私としてはケイタさんの依頼がずっと続いてくれないかと考えてしまいます。他人の感情に大きく揺れてしまい、自身を追い込んでしまう彼女です。もし、非情な決断を迫られるときになったら、自身の胸を貫きかねないのではないかと不安になってしまうのです」
ステラさんは今のところ言動だけでしか自身を批難していない。
が、ずっとこのままであると確証はない。
もし、俺が彼女の不注意で死んでしまったとしたら、武士のように腹を裂いてしまうのでは無いか。
それに、彼女は何かしら因果を繋げたがるよくない性格がある。
だから――もし、俺が俺の不注意で死んでしまうことがあっても、ステラさんは同じ結末を歩いてしまうかもしれない。
「おや、そろそろ時間ですね。異世界の話は貴重な経験でした。セイスキャンに到着するまではまだまだ時間があります。次はそうですね――異世界の仕事について教えていただけないでしょうか?」
マグウィードさんは行商人と言うだけあって物流に興味があり、移動手段、トラックや船、飛行機など、後は冷蔵、冷凍技術などにも激しく食いついて、どれだけの時間を図れる物か分からないけど、手のひらサイズの大きな砂時計の砂が無くなるほどに話し合ってしまった。
マグウィードさんはステラさんに近づいてステラさんの肩を揺する。次はマグウィードさんとステラさんが起きている番で、俺が寝る番だ。
そして最後は俺とステラさんが番をすることになっている。そうすれば騎手であるマグウィードさんは起き始めになっている。騎手さえしっかりしていれば馬によって歩は確実に進められるので、俺たちは幌の中で休めると言う算段でこの順番にしたらしい。
「大丈夫でしたか? 何か、ありませんでしたか?」
目を擦りながら俺たちの心配をするステラさんに俺たちは大丈夫だったと伝える。
「では、お休みください。何か緊急な事態があれば起こします」
マグウィードさんが俺の右肩に手をおいて語りかけた。
俺はその言葉に頷いてマグウィードさんが用意してくれた触り心地のよいカーペットのような生地に体を横にする。ヘインスの町のベッド、野宿は地球の自室にあるベッドと比べるとかなり質が落ちる。けども、三日目になると安眠するまでに時間はかからなかった。勿論その中には疲弊があったのも言うまでもない。
一瞬にして脳が考えるのを諦める。
それでも、ある決定を俺は海馬の一番信頼できる場所に保存することにした。




