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第三章-2 指導する才はあるのだけど……

 今は触れない方がいいだろうと思い、俺は思い切って異世界から来た人だと町長に告白してセイスキャンへの行き方を尋ねることにした。始めこそは驚いていたが、そもそも見たことの無い服装をした男が町に来た時点で誰もが只者じゃないと理解していたようだ。ずぶ濡れになったせいで洗濯をする必要性があった時も、どのように扱えばいいのか尋ねてくる始末だったし。

 定期便は昔に無くなっていたが、幸運なことにセイスキャンから来た行商人がその時丁度訪れていた。一泊後に再度セイスキャンへ出発すると言う吉報があったため、俺は迷わずそこに頼み込みに行った。幸いにも町長と行商人が懇意であり、尚且つ勇者(状態は保証できない)と言う護衛がつくという条件に行商人は快く許諾してくれた。


 そして、翌日。兎が人参を齧るような感じでパンを食べれるくらいまでステラさんが回復してくれたと判断して、俺はお世話になったヘインスの町の人達に別れを告げ、セイスキャンへ向かうことにした。


 道らしき道なき道中は魔物の襲撃の危険があると言われていてたが、幸いにもそれが現実に起きることは無かった。行商人曰く、何度も通っているうちに魔物の動向が分かるようになり、いつどこが安全なのかを少しずつではあるが理解したとのだと言う。

 このだだっ広い草原の何を目印に行路を決めているのかは分からないが、恐らく長年の勘と言う奴だろう。

 その内峠が現れる。その合間を突っ切るのかと思われたが、行商人はここで野営を張ると決めた。


「こういう狭い所は罠を張りやすいんだ。よくあるのは挟み撃ちだな。数で押すか岩などで道を塞ぐかするのは常套手段です。幸い今回は勇者様がいらっしゃいますが――挟み撃ちをされてしまえば勇者様一人でも二人を守り切れるのは難しいでしょう」


 罠を張る。

 その表現からしてそれはたぶん人間のことだろう。知性のある魔物が行うこともあるかもしれないけど、そこは問題じゃない。敵であることに変わりはない。

 それに対抗する術に対し、勇者と言う護衛がいる(少し間があったけど)にしても難しい理由を語った。思い出されたのは洞窟内での抗争。俺一人が囮になっただけでステラさんは全然実力を発揮できなかった。

 それは俺に限ったことではなく行商人の人が捕まったとしても同じ結果が生まれるだろうし、最悪二人とも捕まってしまえば更に状況は悪化してしまう。


 行商人は辺りが暗くなる前に焚火の準備を始めた。

 勿論俺も出来ることをするといい薪木を拾い集めた。

 その頃にはある程度ステラさんも回復(HPから考えると10%程度)していたので小さな枝木が落ちていない場合細い木を居合切りの如く伐採して燃料の足しにするお手伝いをした。

 俺たちは二人一組で順番に休むこととなった。比較的明るく視野が確保できる時間、ついでにレディーファースト、本音はもう少し休んでてほしかったので、ステラさんが休むこととなった。

 ステラさんが休んでいる間俺と行商人の二人で火の番と周辺警戒をした。

 なんの関わりもない二人だから気まずいだろうと思っていたが、色んな場所を旅する行商人にとって異世界は行こうにも行けない興味深い地域のようでその話を呼吸の隙を与えないスピードで問いかけてきた。

 マグウィード(行商人の名前。話が長くなるうちに教えてくれた)さんにはステラさんのような読心術は備わっていないので理解してもらえるのに骨が折れた。

 それでも多くの成果はあった。

 まず最初に、異世界から来た人がいるか、もしくは異世界に戻る手段が無いかということだが、残念ながら色んな国を渡り歩いたマグウィードさんでもそのことは一切分からなかった。

  次にこの世界のことについてだが、どうやら治安と呼ばれるものはそこまで良くはないようだ。

 魔物の存在は勿論だが、山賊や野盗も多い。その理由は人と魔物が対立するだけでなく、人と人の対立も多いからだと言う。

 マグウィードさんが蒔き木を火に投げ込み「国がいがみ合い、そのせいで町や村は無視され、耐えきれなくなった人達が賊に変わるんだ」とこぼした。

 国同士ですら争う。世界が変わってもそこは変わらないんだな。


  「それじゃ……勇者は誰の味方をするんですか?」


 魔物の味方で無いことは確かだ。

 しかし、国がいくつにも分かれ、それぞれの主張をする中で誰を支持し、どの国を討つことになるのか。


  「それは勇者次第です。国民を大切にするために魔物を倒してくれと願われる国の手伝いをするも、大切な漁場を独占し、海に出ようものなら海賊の如く襲いかかり船を沈める国を滅ぼしてほしいと願う国に遣えるか。金で雇われた大国につくか」

  「選べってことですか⁉ そうなると選ばれなかった、襲われることとなった国は」

  「当然恨むでしょうね。何が勇者だ人殺し――と言われながら相手の血と魂を抜くことになるのでしょう」

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