プロローグ テキトーな召喚術式2 主人公は巻き添え食らいました
第三者目線
「はあぁあああぁ~~」
この世の幸せの半分くらいが逃げていきそうな盛大な溜息をついた青年、黎明望。16歳、ぼっちである。身長170㎝、顔だちは整っているが髪はぼさぼさで髭すら剃っていない。コミュニケーション能力は多少滑舌が悪い程度である。
なぜか昨日から、身の回りの機器が次々に故障するという災難に見舞われている。
(まったくツイてないな・・・切符は使えなくなるわ、時計は機能しないわ、果ては電車のドアが閉まらなくなる。ついでに自動ドアが5回に1回くらい反応しない・・のはいつものことか。)フウ
彼は、勇者が召喚される予定だった場所を48時間前に通過していた。ちょうど召喚魔方陣に魔力が流され始めた時刻だ。その結果、召喚のエネルギーが電子機器にエラーを発生させていたのだ。最後の自動ドアが反応しないのはセンサーの誤作動と彼の服装などが原因である。
静電気というには大きすぎる発光現象が多発しているが原因がわからないのでスルーすることにしていた・・・
そして、召喚の時が来た。
突如、足元が光りだした。体が引きずり込まれる。
(今度はなんだ!?最近web小説でよく見る異世界召喚って奴か?いや、お約束の魔方陣らしきものは見えないな)チッ
この間、0.1秒である。思考能力はかなり高い―――とっさに目を瞑った。
(くっ―――)
そして、望の意識は暗転・・・しなかった。強烈な痛みが下半身を襲い、大急ぎで目を見開いた。いや、見開こうとした。
(右目と左目の感覚がおかしい!見えるものに若干のずれがあるようだ)
動かした手から発せられた光が右目に届いた0.2秒後に左目に到着するので、物が2重に見える。3D映画を眼鏡をかけずに見ている感じに近い。
なかなか痛みは治まらない。それどころか鈍った刃物で強引に切られたような感覚は右足首、左膝、右足、右脹脛、股、腰とどんどん駆け上ってくる。体が防衛のため意識を飛ばそうとしてくるが、理性で押しとどめて朦朧としながらもまだ自我をはっきり保とうとする。
―――προσκλησηl/<]不意に、謎の文字?らしいものが浮かんできた。
[s/vF%&z+88y=~~rΓ^n;?\'!■■■―言語理解能力の付与を実行 成功]
[SUB5 システム言語理解能力の剥脱 失敗]
[再試行:システム言語理解能力の剥脱 失敗]
[強制スキップ]
(なんだこれ。何か見えてきた。最初は訳がわからなかったけど、途中からわかるようになったのは“言語理解能力”のおかげか?)
恐らくそうだろう。一応、本来ならば人間の言語を分かる能力のみが与えられる予定だったが、ところどころ術式が吹っ飛んでいるので制限が外れたのだろう。
[SUB1 転移時の肉体の保護 一部失敗]
[エラー:続行不可能]
(さっきから体が痛いのは、保護がうまくいってないからか。なるほど。いや、なるほどじゃねーよ!!仕事しろよ召喚者ああぁ!!)
[深刻な問題が発生しました:error!!深刻な問題が発生しました:被召喚者の安全を確保できません]
[深刻な問題が発生しました:中止不可能です]
[ERROR:対象の術式は実行できません]
(召喚者ああああ!?このまま召喚されるのはヤヴァい!)
ヤバいじゃなくてヤヴァい。ここ大事、非常事態レベルが違う。
(止まれ止まれとマレエェエエェええ)
とっさに、その場でありったけの精神力を使って、足場をイメージした。途端に流れていた視界が止まったが次の瞬間、望はまた眼を閉じた。
混沌
饂飩・・うどんではない。
混沌。
上下や重力などそこにはなく、自分の場所ですら定かではない。おおよそ物質と名の付くものはそこにはなく、一瞬たりとも同じ姿を見せずに刻一刻と変化する。
遠い場所はもやがかかっているようで、手前の物質?空間?と区別が付かない。
まさにカオスをそのまま描いたような光景が広がっていた。派手な色彩の光が飛び込んでくるが、直線状のものはない。マーブル模様を5段階けばけばしくした様な感じだ。
(せめて、自分がどうなっているかぐらいは何とかわからないのか!?)
そんなことを考えつつ、落ち着こうと努力する。
(ヒッヒッフー・・はラマーズ法だし、素数を数える…2,3,5,7,11,13,17,19,23,29.31.37.39・・・おk落ち着いた。一人で暇だったからひたすら数列を数えていたのが役にたった。あれ、閉じた瞼から塩水があふれて・・)
現実逃避と自虐のコンボ!望の精神にクリティカルヒット!遠足の時に間違いなく一緒にいたのに弁当やおやつ交換時にガン無視された時間累計2000分越えた男は格が違った!!
追い打ちを仕掛けていくスタイルだが、聞こえていないのでオールオーケー。
(あれ、なぜか追加で涙が・・・)
おっと、オーラが伝わっていたようだ。思うだけならいいわけではないことを一つ学んだ・・・常識でしたねハハハハハ
目を閉じて涙をぬぐう。
次に望が目を開いたとき、混沌に満ちた空間には秩序が齎されつつあった。
第三者目線(笑)、メタいメタい。こんな調子でやっていきます・・・