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幼きリーティアとフィナ

今日はヘイト要素は軽め?いや人によっては?


明日で、がっつり寝取られ描写とマリアの話を書いて鬱展開は終了になります。



 リーティア・アステル






 私が初めてレイと会ったのは3歳の頃だと母から聞いた。レイの乳母であった母に連れられて、オルロスト家の屋敷に連れていかれた。


 そこで、紹介された少年、それがレイだった。


 私は幼い頃、常にレイを連れ回して遊んでいた。あまりにもお転婆すぎた私はよく母に怒られていたが、レイもレイの両親も笑って許してくれた。


 どちらも優しくて良い人だったと思う。


 レイはどちらかと言うと外で遊ぶよりも家で本を読んだりしていることを好んでいたが、私がつまらないと言って引っ張ると、苦笑いしながらも私に付き合ってくれた。


 そんな日々の中、ある時からレイの貴族教育が始まった。


 毎日、家庭教師の先生が来て、剣術、学問、礼儀作法などを学んでいく。


 レイはその全てをどんどん習得していった。


 私も将来のレイの侍女として、学問や礼儀作法は母から学んだのだが、レイのように何でもうまくはいかなかった。特に学問! 頭が混乱して、わけがわからなくなる。


 私には机に向かって頭を捻るよりも、外で剣を振ったりするほうが性に合っていると思った。


 剣術の稽古があるレイが少し羨ましかった。


 私とレイが8歳になった頃、初めてレイの妹のフィナちゃんに会った。


 いや、今まで屋敷の中で何度も見かけていたのだけれど、目が合うとすぐに逃げてしまうし、レイと一緒に居ない時は常に自室にこもっているようだったので、話す機会がなかった。


 何でも幼い頃から両親が居なくて、極度の人見知りになってしまったみたいだ。


 そんなフィナちゃんが、何か心変わりをしたのか、私の前にも自分から出てきてくれるようになった。


「初めまして! レイの幼馴染のリーティアって言います」


「リーティア⋯⋯姉様」


 か細く震えるような声を、真っ赤になりながら何とか発するフィナちゃん。


 何この娘! 可愛いじゃない!


 フィナちゃんは見た目も態度も可愛らしくて、私はすぐに仲良くなりたいと思った。


「レイ! フィナちゃん借りいってもいい?」


 そう言うと彼は穏やかな笑みを浮かべ、もちろん、と言った。


「に、兄様も⋯⋯」


 しまった、急に近づきすぎて怯えさせてしまったかも? そう思ってレイの方を見るけれど、


「いいじゃないかフィナ、たまには女の子同士で遊んでおいで」


 大丈夫そうであった。フィナちゃんはレイの言葉を聞くと少し恥ずかしそうに俯いた後、


「じゃあ⋯⋯リーティア姉様、行きましょう⋯⋯お茶会の準備、してあるので⋯⋯」


 と、おずおずとしながらも私を案内してくれるフィナちゃん。


 私は1人っ子だったから、こんな妹が欲しかったの!


 フィナちゃんはたくさん可愛がってあげなきゃね!






 ―――――――――






 フィナ・オルロスト






 わたしの名前はフィナ。昔は違う名字を持っていたみたいだけれど、物心ついた時から、わたしはずっとフィナ・オルロストだ。


 小さな頃は、他人がとても怖かった。何でも、わたしの本当のお父さんとお母さんは、昔、馬車に乗っている時に野盗に襲われて死んでしまったみたいだ。


 夜、1人でお手洗いに行くのが怖くてお母さんを呼びに行こうとした時に、偶然聞いてしまった。


 わたしはお父さんとお母さんの事はあまり覚えていない。それでも、当時の恐怖心は心に残っていたらしく、他人を見ると怖くなってしまう。


 一緒に居て、安心できるのはオルロスト家のお父さんとお母さんと、レイ兄様だけだ。


 たまに見かける、リーティアという女の子も、もう少しで慣れそうだが、まだちょっとだけ怖い。


 一緒に居て、怖い思いをするのは、オルロスト家の使用人の人達だ。


 使用人の人達は、オルロスト家に引き取られた私のことを、災いを引き連れてくる呪われた子だ。とか陰で言っている。あの視線の中に居るのは耐えられない。


 でも、そんな時、わたしを助けてくれたのがレイ兄様だ。


 レイ兄様は私が自分のお部屋から出た時は一緒にいてくれるようになり、そうすると誰もわたしのことを見てヒソヒソしなくなった。


 レイ兄様のおかげでわたしは怖がらずに生活できるようになってきた。


 そんなある時、兄様がわたしに提案をしてきた。


「フィナ、俺以外にも友達を作ってみないかい?」


 そんなの嫌だ。わたしは兄様だけ一緒にいてくれればそれでいい。


「大丈夫、リーティアってわかるよね。あの子のところへ行くだけだから。いい子なのは知っているだろう?」


 知っている、リーティアさんはわたしを見ても嫌な視線や態度は取らなかった。むしろこっちと仲良くしてくれようとしていた。


 わたしはまだ怖かったので、兄様が一緒に来てくれるなら、と、約束してリーティアさんに会ってみることにした。


「初めまして! レイの幼馴染のリーティアって言います!」


 リーティアさんは溌剌(はつらつ)とした人で、お話をしていると、どこか安心できるような気がした。


 気がつけばわたしは、


「リーティア⋯⋯姉様」


 と、口に出してしまっていた。どうしよう? 迷惑だよね。


 そう思ったが、リーティアさんの反応はちょっと驚いたような顔をしてから、ぱあっと花が咲いたような笑顔になり、喜んでくれていた。


「フィナちゃん借りてってもいい?」


 リーティアさんが、興奮気味に兄様に聞いている。


 それを見てわたしはちょっと怖くなってしまった。咄嗟に助けを求める。


「に、兄様も⋯⋯」


 だけれどもその怖さは、今までの逃げたくなるような怖さではなくて、ちゃんとリーティアさんと友達になれるかな? という心配の怖さだった。


 そして、リーティアさんは「姉様」と呼ぶと喜んでくれるみたいだ。今度からは姉様と呼ぶことにしよう。


「いいじゃないか、フィナ、たまには女の子同士で遊んでおいで。」


 兄様も仲良くなれるよう促してくれる。


「じゃあ⋯⋯リーティア姉様、行きましょう⋯⋯。」


 頑張って誘うことができた。リーティア姉様を連れてお茶会のテーブルまで行く。


 でもあれ? 事前に準備したお茶会には席が二つしかなかった。


 もしかして⋯⋯全部、兄様の思い通り?


 何にせよ、兄様のおかげでお友達ができた。そうしてリーティア姉様も安心して一緒に居れる人となったのだ。






 ―――――――――






 リーティア・アステル






 あれから、5年が経ち、私とレイは13歳、フィナちゃんは12歳となっていた。


 それに、なんと言っても嬉しい事が起きていた。私とレイとフィナちゃんが婚約を結べていたのだ。


 もちろん家格の問題で、私は第二夫人以下になることにはなっていたが、レイと結婚できるなんて夢のよう。


 5年の間に、レイはますますかっこよくなっていた。学問も家庭教師の先生を驚かせる程だし、剣術は同年代でレイに勝てる人は誰もいない。礼儀作法だって完璧だ。


 こんな凄くて憧れる人が私の婚約者だなんて⋯⋯。


 同じく、フィナちゃんも婚約者だったけど、この5年で私とフィナちゃんは本当の姉妹のように仲良くなっていた。


 フィナちゃんとなら、同時に奥さんになったとしても、仲良くやっていけるだろう。


 そう浮かれながら、明日の準備をする。そうそう、明日はジョブ授与が行われる日だ。


 役に立つジョブが貰えるといいなぁ。






 ―――――――――






 神官の人が目を大きく見開いてこちらを見ている。


 一体どうしたのだろう? その神官の人は慌てて偉い人を呼びに行ってしまった。


 私に何か問題があったのだろうか? そんな疑問を抱いていると、私はすぐに神官長という人の部屋に呼ばれ、話すこととなった。


 部屋へ入ると、目の前には大きなお腹のおじさん。脇には神官の人が数人並んでいる。


 でも、みんなニコニコとしていて、息の詰まるような緊張感ではない。


 どうやら悪い話ではないみたい?


「君の名前を教えてくれるかな?」


 神官長さんが声をかけてくる。それもとても上機嫌に。


「はい、リーティア・アステルです」


「リーティアか⋯⋯では、リーティアさん、君のジョブ⋯⋯いや加護を教えてあげよう」


 加護? もしかして今、神官長さんは加護って言った?


「君の加護は、【剣の聖女】だよ⋯⋯驚いたかい?」


 どうやら本当に加護を貰えたようだ。お伽噺や絵本でしか聞いたことがない【聖女】の言葉に私の胸は踊る。


「急なことで、混乱しているかもしれないが、ひとまず君の事を皆に発表したい、大丈夫かな?」


「は⋯⋯はいっ!」


 そうして、私は【剣の聖女】として皆に挨拶をすることになった。


 その時のレイの顔は面白かった。普段はキリッとしているか、優しげに笑っているのに、その時ばかりは変な顔をしてびっくりしていた。


 その後、私は教会に残り剣の修練をすることになった。


 レイと離れることは辛いが、【聖女】なのだから仕方がない。未だ、話を聞くことはないが、その内魔王が、復活する可能性がある、将来、皆を私が守ってあげないと!


 そう考え、1人王都に残った私は剣の修練を始めるのであった。 






 ―――――――――






 フィナ・オルロスト






 去年、リーティア姉様が【剣の聖女】になり、王都へ残ってしまった。


 一番の親友であるリーティア姉様と離れ離れになるのは辛かったが、兄様や、リーティア姉様を通じて新しくできた、オルロスト領のお友達がわたしを慰めてくれたので、ぎりぎり耐えることが出来た。


 そんな出来事から一年、今年はわたしがジョブを授与される番となった。


 レイ兄様もリーティア姉様も良いジョブを貰っている。もし、わたしだけ役立てづらいジョブを授かったら、また陰口を言われてしまうかもしれない。


 でもたぶん、大丈夫だ。なぜなら、わたしの婚約者となったレイ兄様や、一緒に妻となる予定のリーティア姉様が居るから。


 二人ともわたしのことを大切にしてくれているので、悪いジョブでもきっと守ってくれるだろう。


 そう簡単に結論づけて、わたしはレイ兄様と共に馬車に乗る。


 そして、王都の教会に向かうのであった。






 ―――――――――


「またも⋯⋯」「二年続けて現れるとは⋯⋯」


 何やら私にジョブ授与を行った神官さんたちがザワザワとしている。


 どうしたんだろう? まさかすごく使えないジョブだったのかな? と、涙ぐみそうになっていると、


「大切な話があるんだ。ついてきてくれるかい?」


 と、神官さんに言われた。


「は、はい」


 もちろん断ることなんて怖くてできない。わたしは大人しくついて行く事にした。


 通された部屋に居たのはちょっと太ったおじさん。わたしはこの人を知っている。去年リーティア姉様を聖女だと発表した神官長さんだ。


「フィナちゃん⋯⋯だね? 去年、神官のジョブを授かったレイ君の妹さんの。」


 どうやら神官長さんは兄様を知っているようだった。


 それに神官長さんは私の事を嫌な目で見ていない。むしろ期待しているような視線を送ってくる。


「それで、フィナちゃん君のジョブなんだが⋯⋯」


 ぎゅっと目を瞑る。悪い空気ではないが、何を言われるか分からないので怖い。隣に兄様が居てくれたらいいのに。


「おめでとう、君は【術の聖女】の加護を授かったよ」


 神官長さんの言葉に反応が遅れる、もしかして今、【聖女】と言っただろうか? それなら⋯⋯


「リーティア姉様と⋯⋯同じ?」


「ああ、そうだね。彼女⋯⋯【剣の聖女】リーティアと同じように、君も【聖女】だよ」


 その言葉を聞き、わたしはほっと安心する。


 よかった、役に立たないジョブじゃなかった。


 だが、それもつかの間、今度はとても不安になってくる。わたしに【聖女】なんて務まるだろうか?


 「とりあえず、皆に報告しないといけない。皆に挨拶してくれるかな?」


 神官長がそう言って【術の聖女】のお披露目となるのであった。


 結論からいって、わたしも王都に残る事になった。


 兄様と話した時、兄様は、


 「俺も寂しいけれど、リーティアを支えてあげて欲しい」


 と言っていた。そうだ、兄様も色々と我慢しているのかもしれない。それをわたしのワガママで台無しにするわけにはいかない。なんて言ったってわたしは人類の希望である【聖女】の一人なんだから。


 リーティア姉様と協力して、さっさと【聖女】の務めを果たしてしまおう!


 こうして、わたしとレイ兄様は離れることとなった。


 大丈夫、今度はリーティア姉様と一緒だから。一人では無いんだ。






 ―――――――――






 それから程なくして、王国に魔王復活の予言と、勇者召喚成功の報告が出回った。











幼い頃の二人の話でした。


明日は感想欄でも様々な予想がされているマリアの話⋯⋯と、私的に最大の鬱展開です。


よろしければブクマ、ポイント評価お願いします!

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