表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

初討伐

 シルクは、依頼票をカウンターに持っていく。カウンターには、昨日、クランについて説明してくれ、登録の担当もしてくれたセリアが座っていた。


「あら、シルクさん。今日はどのようなご用件でしょうか?」


「ああ、この依頼を受注したい。可能か?」


 セリアの前に依頼票を出す。セリアはそれを受け取り内容を確認する。


「はい、角ウサギの角の納品ですね。美羽さんの肩慣らしにはちょうどよさそうですね。シルクさんほどのベテランさんがついていれば、こちらとしても問題ございません。頑張ってくださいね。」


 セリアは、二人にクラン証の提示を求め、二人はそれに応じる。セリアがクラン証を受け取り依頼票にかざすと、双方が光り、クラン証に依頼の情報がインプットされた。二人はクラン証を受け取ると、クランを出ていく。


「さて、まずは依頼人に確認にいくか。」


「わかりました。」


 美羽とシルクは、依頼人であるウリアムに会いに行った。


 ウリアムは、商業エリアの一角で露天販売をしていた。


「失礼、あんたがウリアムか?」


 シルクは、ウリアムに話しかける。


「ええ、私がウリアムですが、あなたは?」


「俺はシルク。探索者クランの依頼を受けてきたものだ。こっちは美羽。依頼内容の確認に来たんだが、邪魔だったか?」


「あ~、そうでしたか。では、少し場所を移しましょう。」


 ウリアムはそういうと、自分の露店を手早く解体して、近くにある喫茶店に二人を案内した。


「では、改めまして、私は行商人をやっております、ウリアムと申します。この旅は、私の依頼を受けて下さしましてありがとうございます。」


 ウリアムが改めて自己紹介をする。美羽とシルクもそれに倣う。


「では、依頼内容の確認ということで。私が納品いただきたいものは、『角ウサギの角』です。しかし、これは個体によっては長さが変わってしまうので、基準としましては、長さが25cm以上のものとさせていただきますが、それ以外のものも一本50ルクスにて買い取らせていただきます。あと、できれば傷はついていないものがよいので、そのようにお願いいたします。」


「なかなか、厳しい内容だな。これで2000ルクスってのは案外ぼったくりじゃないのか?」


 シルクが、少し発破をかける。


「ええ、確かにそう思いますが。しかし、基準以外のものも買い取らせていただきますので、それで手を打っていただきたいところです。」


 ウリアムは、笑顔を崩さずに答える。


「...あのぉ、もし、この依頼中にほかのものを採取してきたら、それも買い取っていただけますか?」


 美羽が、おずおずといった感じで、会話に参加する。


「おお、かまいませんが、私が必要とするもので、という範囲になりますな。といっても、物珍しさが行商の基本です。商品になりそうでしたら買い取りますよ。」


「わかりました。シルクさん、私、この依頼頑張ってみます。」


 美羽は、シルクに向き直る。シルクもため息を一つついたが、


「ああ、もともとこの依頼は、報酬ではなくお前の技術向上のためだからな。ウリアム、この依頼受けさせてもらう。期限は?」


「そうですね。今日を含めまして4日ですな。その翌日の早朝には出立いたしますので。」


 ウリアムの返事に、シルクは十分だと伝えると、


「これは、ここの代金だ。商人に借りを作るのは遠慮したいんでな。」


 と、銀貨3枚300ルクスを机の上に置き、美羽を連れて立ち上がる。


「これはこれは、手厳しいですな。依頼品納品の件、よろしくお願いいたします。」


 ウリアムは、その銀貨を受け取り、シルクたちを見送った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 シルクは、美羽を連れて街の外の草原にやってきていた。


「よし、これから角ウサギを探すぞ。角ウサギってのは、間ぁ、角が生えたウサギだ。角の長さは個体によって変化するが15cmから35cmくらいの間で、体は普通のウサギくらいの大きさだ。だが、性格は共謀で肉食。得物を見つけたら、その角を使ってものすごいスピードで突っ込んでくる。そして突き殺すんだ。といっても所詮はウサギだ。普通なら子供でもよけれる。だから、お前の訓練にちょうどいい。しかも、肉はうまいしな。」


 シルクは角ウサギについて説明してくれた。


「う~、ウサギを殺すんですか。ちょっと罪悪感が...」


 美羽は、元の世界では飼育委員を進んでするほど動物好きで、休みの日には、親に頼んで動物園に行くのが趣味だった。


「なに言ってるんだ?言っとくがやらなきゃやられる世界なんだぞ。もっと割り切れ。といっても難しいかもしれんが。ほら、噂をすれば一匹来たぞ。」


 シルクが指さす先には、一匹の角ウサギがいた。すでに美羽たちに気づいているらしく、唸り声をあげて威嚇している。


「ほら、奴さんはやる気満々だぞ。お前も剣と盾を構えな。」


 そう言いながら、シルクも自分の剣を構える。美羽も、それに倣って剣を構える。角ウサギは、威嚇をやめ、一直線に美羽に突っ込んできた。


「っ、ああ!」


 その突進を何とか盾を構えて防ぐと、角ウサギは盾にぶつかった衝撃で弾き飛ばされていた。


「そうだ。まずは盾で攻撃を防ぎ、敵の隙を作るんだ。」


 シルクの指示を聞き、再び盾を構える美羽。角ウサギは、再び美羽に突進を繰り出す。その軌道にしっかり盾を合わせていき、再度攻撃をはじく。


「いいぞ、その調子だ。そして、攻撃をはじいたら、そのすきに剣で攻撃する。次のタイミングでやってみろ。」


 シルクに言われ、美羽はもう一度盾を構える。角ウサギは、再び美羽に突進を繰り出すので、先ほどと同じように攻撃を防ぐ。角ウサギは弾き飛ばされ、大きな隙を作る。


「やぁぁぁぁぁ!」


 美羽は声をあげながら、角ウサギの腹部に目がけて剣を突き立てた。


「ギュニャ~~~!!」


 角ウサギは、断末魔の声を上げて息絶えた。


「よくやった、美羽。初戦では大したもんだ。」


 シルクが、美羽に対してねぎらいの言葉をかける。


「はぁ、はぁ、はぁ......」


 しかし、美羽は、心臓の鼓動が収まらないようで、荒い息を繰り返していた。


「おい、大丈夫か?」


 シルクも、少し心配になったようで、美羽の肩を支えるようにして立たせる。少し収まってきたようで、


「すみません、シルクさん。まだ、命を奪うのには慣れないです。」


 と、小さくつぶやいた。


「仕方ないさ。もともとの価値観てのは、そうすぐに変化するもんじゃない。難しいかもしれんが、少しずつ慣らして行け。だが、今日の借りはまだ続けるぞ?」


「はい、よろしくお願いします。」


 美羽は、何とか声を張り上げシルクにむきなおる。シルクもうなずき返し、


「よし、じゃあ、次の得物を探しに行く前に、この角ウサギを解体していこう。」


 そう言って、ポーチからサバイバルナイフのようなものを取り出す。


「いいか、よく見てろよ。」


 と、美羽に指示を出してから、角ウサギの角を持ち首を落とす。


「ひっ、!!?」


 小さく悲鳴を上げる美羽。しかしシルクは止まらず、


「まず、首を落としたら、足を持って血を抜くんだ。でないと、血が体の中に残って、肉がまずくなる。」


 そう言って、足を持ち上げ血が首から流れていくのをずっと待つ。美羽も、顔を白くしながらそれを見ている。やがて、血が流れなくなったところで、


「次に、皮をはぐんだ。最低でも、これくらいの技術を付けないと、探索者にはなれないぞ。」


 シルクに真顔で言われ、美羽は、顔面蒼白にしながらもうなずいた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ