探索者登録
「では、こちらの書類に必要事項を記入してください。」
美羽は、セリアに差し出された書類をみる。
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探索者登録票
氏名
年齢
職業
レベル
得意スキル
私は、探索者規定にのっとり、
探索者に登録します。
署名 指印
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と書かれていた。
「こちらの欄を埋めてください。スキルに関しては、一つ以上書いてあれば問題ありませんが、いくつか書いていただけると、仕事のあっせんの際、より最適な依頼をお勧めすることができます。また、こちらからの信頼も得ることができます。最後の署名と、指印を押していただいて登録完了です。書類を処理したのち、登録証をお渡しさせていただきます。」
セリアに言われ、美羽は各欄を埋めていく。
「おい、得意スキルは、『剣術』『鑑定』『四元素魔法』『収納』『生活魔法』にしておけ。『龍属性魔法』は、本来人族が覚えられる魔法じゃない。公に知られれば面倒ごとに巻き込まれることになるぞ。お前自身がもっと強くなって、名を知られてからにしておけ。」
シルクに言われ、得意スキルの欄はその通りに書いた。最後に、署名と指印を押して書類を提出した。
「はい、では、こちらを処理してまいります。少々お待ちください。シルク様、拠点の変更登録の書類をお渡しいたしますので、お待ちの間ご記入をお願いいたします。」
セリアは、シルクにいちまいの書類を渡すと、美羽から受け取った書類を持って奥のほうに引っ込んでいった。
「まぁ、ちょっと待ってなよ。あれだけ書けば、ちゃんと探索者になれるから。ここでの用が済んだら宿に行くぞ。」
シルクに言われ、クラン支部の中を見渡していた。同じような姿をした、探索者たちが同じようにカウンターで、依頼や素材のやり取りをしているほかに、商売人の見た目をした人たちが、多くの書類を提出していたり、自分の作った薬や、武器などをカウンターで見せている生産者、騎士のような、統一された鎧を装備している一団がいたりなど、様々な人たちがいた。
「お待たせしました、美羽様。こちらが、美羽様のクラン証になります。登録情報の更新は、自身の魔力を5分間流すことでできます。しかし、職業の変更は教会か、クラン支部でのみ可能です。教会では、一人一つの職業を変更するのに100ルクス必要になります。クラン支部では、初回に限り無料でできます。それ以降は、一回につき100ルクス必要になります。転職回数は、クラン証に記録されます。
クラン証に記録されるのは、
・本人のステータス(自身の魔力を流すことで更新可能)
・探索者ランク
・依頼の受注回数
・依頼の成功回数
・依頼の失敗回数
・犯罪行為前後5分間の周囲の映像
・魔物討伐数(クラン支部で報告後リセット)
・転職回数
となります。探索者登録はこれに手終了となります。」
セリアは、クラン証を受け取り、最後の説明を聞く。その後、セリアは、シルクから書類を受け取り、その情報を登録していく。
10分後、すべての登録が終わり、二人はクラン支部を出た。
町に繰り出した二人は、そのまま宿屋『猫の尻尾亭』にやってきた。ドアを開け中に入ると、一人の女の子が受付をしていた。その子を見て、美羽は固まっていた。
「いらっしゃいませ。お二人様の宿泊ですか?」
その女の子は、頭に犬のような耳を付けており、カウンターに近づけば腰のあたりから尻尾が生えているのが見て取れた。
「ああ、二人部屋のベッド二つで頼む。」
シルクは、美羽を放っておいて宿泊の手続きをする。受付の犬耳の女の子は、
「わかりました。では、300ルクスになります。」
シルクは代金を支払う。犬耳の女の子は、番号の書かれた木札を渡してくれる。
「お食事は、隣の酒場で摂ることができます。この木札を見せれば半額で食べることができます。また、お風呂に関しては、一人部屋1時間200ルクス、二人部屋1時間300ルクスとなります。あと、延長される場合は、朝のうちに申し付けください。」
美羽とシルクは、説明を聞いてから木札に書かれた部屋に入っていった。
「さて、少し休んだら食事をとりに行こう。明日は、依頼をこなしてみよう。」
シルクは、装備を外しながらそう話しかけてくる。
「...あの、どうしてここまでいろいろしてくれるんですか?あなたに、何のメリットもないでしょう?」
美羽は、気になっていたことを聞いてみる。シルクは、真剣な表情になり、
「まぁ、隠しておくこともないしな。いいだろう、教えてやる。まず、俺は人族じゃない。龍族だ。」
唐突に、人間じゃない宣言をしてきた。
「は?はぁ。どうして龍族が人の姿をしてるんですか?」
「ふむ、まずは、俺のステータスを見せたほうが話が進みそうだな。」
シルクはそう言って、自分のステータスを美羽に見せてきた。
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シルク・カーミライト・ドラグニル
称号 白銀龍の王
LV 136
AT 58000
DF 57800
MA 69800
MD 67900
SP 48020
IN 75300
HP 108900/108900
MP 104800/104800
スキル
龍属性魔法(MAX)
四属性魔法(MAX)
剣術(MAX)
収納(1800/5000)
聖属性魔法(MAX)
龍の威圧(MAX)
眷属契約(MAX)
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「何ですか!?このぶっ飛んだステータスは!!?」
美羽は、それを見て驚きを隠せなかった。シルクは、そのステータスを消し、
「いったろ。俺は龍族。俺が旅をしているのは、この世界で、魔物たちが活発に活動を始めたからだ。ただ、活発になったのなら気にしないのだが、どうやら理性のある行為の魔物たちはその影響が出ていないんだ。理性のない、下位の魔物しか影響が出ていないんだ。しかも、魔物の王である、『魔王・レイナ』も、その現象にてんやわんやしているようだ。俺は、その原因を探しているのだ。その途中で、お前と出会ったというわけだ。」
シルクは、そこで言葉を区切った。しかし、美羽は、
「それはわかりました。しかし、その話から、私にいろいろ世話を焼いてくれる理由がわかりませんが?」
そう、美羽の世話を焼く理由が説明の中になかったのだ。
「それはな。本当なら、この町でクラン登録を済ませたら、最低限の金だけ渡してサヨナラのつもりだったのだが、お前が、迷い人であることと、スキルにある『龍属性魔法』が原因だ。迷い人は、世界に何か異変が訪れた時に現れると言い伝えがいくつかの種族に伝えられている。そして、『龍属性魔法』は、先ほども言ったが、本来龍族以外は習得できない。だから、気になって様子を見ようと思ってな。」
「はぁ。そうですか。なんか釈然としませんが。私がその原因かもしれないということですね。何ができるかわかりませんが、私ができることがあれば協力させてもらいます。ここまでいろいろしてもらってるので、少しでも恩返しをしたいです。」
美羽は、胸の前でこぶしを握る。
「まぁ、期待してるよ。じゃ、飯を食いに行こうか。」
二人は、部屋を出て隣の酒場に向かった。