異世界での朝
まぶしい朝日に照らされ、美羽はその目を開けた。そこには、大きくし水をたたえた湖があり、その景色に、美羽は心を奪われていた。ふいに、後ろから声がする。
「湖がそんなに珍しいか?」
後ろを振り返ると、昨夜、美羽をリザードマンから助けてくれた青年が何やら料理をしていた。
「えっと、あなたは?」
「おお、そういえばまだ名乗っていなかったな。俺の名はシルク。ずっと北のほうからある目的のために、ずっと旅をしている。お前は?」
青年は、シルクと名乗り、美羽に名前を聞いてくる。
「あ、すいません。私は水波美羽といいます。あの、助けていただいてありがとうございます。」
「礼には及ばない。当然のことをしただけだ。」
そう言って、彼は作っていた料理を出してくれた。分厚い肉を石で焼いて、それをパンにはさんだ雑なサンドイッチだったが、美羽はそれを受け取り、食べた。
「もぐもぐ、おいしいですね。これ。」
美羽は食べながら、少しずつ瞳に涙を浮かべ、最後には泣きながら食べていた。
「う、ひぐ、わ、だ、じ、生きてて、よかった。よかったよぅ~」
美羽が泣き止むのを、シルクはずっと何も言わずに見守っていた。
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「すみません、見苦しいところを...」
美羽が落ち着いて、サンドイッチを食べ終わったところで、申し訳なさそうに謝った。
「なに、気にするな。あんたくらいの年の女の子なら当たり前の反応だ。」
シルクは、軽く笑いながら食後のお茶を飲んでいる。美羽にも作ってあり、彼女もそれを口にする。
「あの、変なこと聞いてもいいですか?」
「何だ、藪から棒に...」
「あの、私、この世界の人間じゃないんです。気が付いたらあの森にいて、何が何だかわからないうちにあの化け物に追い掛け回されて。あなたが助けてくれなければ、私は死んでいたでしょう。ここはどこですか?」
美羽は、シルクに問いかけた。シルクは、少し驚いた顔をしたが、すぐに真剣な顔つきになって、
「なるほど、あんた、どっかちがうと思ってたが『迷い人』か。なら納得だ。この世界は『レヴァリア』。あんたの世界がどんなところか知らないが、この世界では、昨日のような魔物と日々戦うものもいる。俺が旅をしているのは、この世界の魔物たちが今までに比べて狂暴になってきたからだ。その原因を探していたのだが...」
シルクは、世界について説明してくれた。しかし、美羽は今後どうしたらいいかがわからない。それを聞くと、
「う~む、ならば、町に行って探索者になるのが、一番わかりやすいかもしれんな。それに、探索者になれば、もしかしたらあんたがこの世界に来た意味を見つけられるかもしれん。どうだ?」
シルクは提案してくれるが、そもそも、美羽は、この世界の常識がまだわかっていなかった。
「すみません、シルクさん。私、まだこの世界のこと、何も知らないんです。その探索者というものについて、教えてくれませんか。」
シルクは、そうだな。と答えてから、
「確かにあんたは、異世界人だからな。この世界にも疎い。忘れてたぜ。
じゃあ、最初にステータスをのことを教えるか。ステータスを見たいと思いながら、ステータスと言ってくれ。」
シルクに言われ、少し恥ずかしかったが、美羽はステータスと声を発した。すると、目の前に半透明の板が現れた。
「キャッ。なんですかこれ?いきなり現れましたよ?」
「それが、ステータスだ。そこに様々な数値や、スキルなどが表示されているはず。それによって、お前の得意なこと、不得意なことがわかる。どんなステータスなんだ。俺にも見せてくれ。」
シルクは、美羽のステータスを覗き見る。そして、そこに書かれている能力を見て唖然とする。
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ミズナミ ミウ
称号 迷い人
LV 10
AT 120
DF 110
MA 115
MD 100
SP 100
IN 80
HP 250/250
MP 150/150
スキル
言語理解(MAX)
鑑定(MAX)
剣術(20/25)
四元素魔法(MAX)
龍属性魔法(MAX)
収納(0/5000)
生活魔法(―)
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「なんで、四元素魔法と龍属性魔法がMAXなんだよ!!!?」
シルクの驚きはそこだった。美羽のステータスは、同レベルの者からすれば、4~5倍になっており、そこも驚くポイントなのだが...。
「うわ~、まるでゲームみたい。私も魔法が使えるんですね!!?」
当の本人が、すごいキラキラした目でシルクを見るので、シルクも驚きが消え苦笑いを浮かべてていた。
「はぁ~、いいか、お前さんのステータスはいろいろおかしい。あんまり他人に見せないようにしろよ。ステータスの簡単な説明をするぞ。
まずは称号、これは、本人の現在の立場だ。これが複数あるやつもいる。
次にレベル、ステータスの総合的なランクみたいなものだ。これが高いほうが、より強いという証明みたいになる。
AT、これが攻撃力。攻撃する際の力だな。あとは、筋力にも影響している。
DF、これが防御力。守るときの力だ。これが高いと、けがもしにくい。
MA、これは魔法攻撃力。これが高いと、魔法の威力や効力が上がる。
MD、これが魔法防御力。魔法による攻撃やデバフを受けにくくする。
SP、これは素早さだ。これが高いほど早く動けるし、息も上がりにくくなる。
IN、これは衝撃力。この数値が高いほど、瞬間的な衝撃が強くなる。
HP、これは生命力だ。これがなくなると死ぬ。
MP、これが魔力。魔法を使ったり、スキルを使うときに必要だ。
ステータスについてはこんなもんだ。なんか質問あるか?」
「いえ、今のところ大丈夫です。」
シルクの説明についていける美羽。彼女は元の世界では、いくつものオンラインゲームで何個ものアカウントをカンストさせたことがあるため、特にわからないことがなかった。スキルにしてもある程度推測できている。
「そうか。なら、スキルの説明をするぞ。スキルってのは、行ってみればその奴の才能だ。それがあるのとないのでは、技術に大きな差が現れる。たとえば、お前も持ってる剣術だが、剣術スキルの熟練度が1でもあると、スキルを持ってないものと比べて明らかな差が生じる。お前のスキルは、
言語理解は、あらゆる言語を理解し、読み書きできるスキルだ。
鑑定は、あらゆるものの詳細を知ることができる。生き物に使えば、その者のステータスを見ることもできるぞ。
剣術は、剣を操る技術。
四元素魔法は、火、水、風、土の四元素の魔法を使える。
龍属性魔法は、龍族しか使えない魔法を使うことができる。
収納は、その分母の種類だけ、モノを収納できる。一種類の上限はない。
生活魔法は、生活に必要な魔法が使える。火種や、水の生成なんかだな。
なかなか、お前のステータスはぶっ壊れてるけど、この世界で生きていくのなら文句なしに優秀だよ。お前は。」
最後の言葉は、褒められたのか、けなされたのか、美羽にはわからなかった。
「色々教えてくれて、ありがとうございます。」
「なに、俺からしたら面白いもん見れたしな。それに、迷い人には親切にしておけってのが、俺の国の言い伝えでな。だから、気にすんな。
あとな、お前どうせ町のことわからんだろうから、案内して、クランで登録するまでは面倒を見てやるよ。」
シルクは自分から世話をすると申し出て、美羽はそれを受け入れた。