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特訓の成果

 美羽が『コボルト』に向かっていく。あと5mまで距離を詰めたところで、相手に気づかれてしまった。美羽はそのままの勢いで、『コボルト』に水平斬りを繰り出す。が、『コボルト』は、その斬撃を後ろに跳んで躱すが、いきなりの襲撃に混乱しているようだった。


「さすがに、こんな直線じゃ倒せないよね。次は...」


美羽は、再び権を構え直すと『コボルト』に袈裟斬りを繰り出す。『コボルト』も、その斬撃をかわしながら反撃してくる。美羽の腹部を狙って殴りかかってくる。それを美羽は、体を回転させよけ、その勢いを利用して『コボルト』の背中に再び水平切りを浴びせる。


「グ、ギャァァァァァァ!!」


 断末魔の叫びをあげ『コボルト』は息絶える。そして、黒い霧となり霧散した。そのあとには、魔石だけが落ちていた。


「今回は、魔石だけなんですね。」


「そうだな。魔石だけってのはレベルに比べて個体の能力が低かったりすとたまにある。以前の牙を落とした個体が強かったんだろう。しかし、精神的にも余裕そうだな。」


 美羽の様子は、以前『コボルト』を倒した時や、依頼で『一角ウサギ』を討伐した時より、いくらかましに見えた。


「はい、まだ少し気持ち悪さはありますが、我慢できないほどではありません。」


「そうか、それはよかった。しかし先ほどの戦闘、なかなか見事だった。特に、斬撃をかわされた後の行動。とっさにしては、最善の行動だった。お前には、戦闘の才能でもあるのかね。」


 シルクは、美羽を誉める。美羽は苦笑いを浮かべ肩をすくめる。


「はは、戦いの才能を誉められても、複雑な気分ですね。私の下の世界では、人と戦うことはほとんどなかったのに。」


「まぁそう言うな。つまりは、お前はこの世界で生きていけるだろうということだ。この世界で、元の世界に戻ることを目指すならば、必要なことだと思うがな。」


2人は『コボルトの魔石』を美羽の『収納』スキルで回収し、他の魔物を探しに歩き出した。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

2人は草原をくまなく歩き、『ライフミント』『マナミント』『べリルの実』といった植物を採集ていく。


「これらの植物は、あとで、薬師に頼むと薬に調合してくれる。持っておいて損はないぞ。」


「わかりました。でも、この『ベリルのみ』って、私の下の世界の果物にとっても似てるんですよね。食べてみてもいいですか?」


「ああ、大丈夫だ。別に何か問題があるわけではない。ただ、食べすぎると水っ腹になるだけだ。」


 美羽は自分の『収納』スキルから、「ベリルの実」をいくつか出して口に入れていく。「ベリルのみ」は濃い紫色で人差し指の先ほどの大きさ。現実世界のブルーベリーのような見た目で、味も同じようなものだった。


「やっぱり、おいしい。」


 美羽は、もう一つを口に入れて咀嚼しながら、空を見上げる。


「?どうした。元の世界のことでも考えていたのか。」


 美羽の物憂げな表情に、シルクは声をかける。


「はい、私がいなくなってしばらくたちました。私が消えた世界がどうなっているのか。私の存在はどのような扱いになっているのか。どうして私はこの世界に来たのかが、まったくわからないのです。」


 美羽のいた世界に、このように異世界に転移してしまうという創作物はありふれていたが、自分が何の説明もなしに経験すると、これほど不安になることはないと実感していた。


「そうか。その感覚は俺にはわからん。しかし、お前の力にはなれるだろう。少なくとも、この世界でのお前の使命がわかるまでは。」


 シルクはそう言って、美羽の頭をなでる。美羽は、頬を赤らめながらされるがままになっていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2人はその後、夕暮れが近づくまで狩りと採集を続けた。その結果、

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ミズナミ ミウ

 称号 迷い人

 LV  15

 AT  160

 DF  132

 MA  138

 MD  111

 SP  129

 IN  102

 HP  39O/390

 MP  19O/19O

 スキル

 言語理解(MAX)

 鑑定(MAX)

 剣術(22/25)

 四元素魔法(MAX)

 龍属性魔法(MAX)

 収納(10/5000)

 生活魔法(―)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

収納リスト

・コボルトの魔石×8

・コボルトの牙×8

・コボルトの爪×3

・コケの魔石×5

・コケのモモ肉×3

・コケのムネ肉×5

・コケの羽×3

・ライフミント×13

・マナミント×10

・べリルの実×10

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

となっていた。


「よし、今日はこれで終わりにしよう。」


「わかりました。」


美羽とシルクは、収集した素材を美羽の『収納』スキルにしまいこみ、セトリルの町に帰っていく。草食系の魔物達も、自分達の棲みかに戻っていく風景が心を落ち着かせる。


「今日はどうだった?美羽。」


「そうですね。以前よりも、命を奪う嫌悪感を抱かなくなりました。私の世界の常識が崩れていくようですが、間ぁ、慣れていけると思います。」


 美羽は、遠い目をして空を見上げながら答える。その目には、少し悲しみの感情が浮かんでいた。


「仕方ないだろう。この世界では、お前のいた世界の常識なんて通用しない。

 だがな、この世界での言い伝えが残っていてな。迷い人が現れると、世界が変革するんだ。だから、お前が来たことで、この世界の何かが変わるのかもしれないな。」


 シルクは、美羽の頭をなでる。美羽は、目を細めて受け入れている。町に着くまで、魔物が現れることもなく、二人はゆっくりと街に戻ってきた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 二人は街に着くと、狩りの成果を報告するために、クラン支部に向かった。クラン支部では、1日の終わりで、仕事の報告に来ている探索者たちでごった返していた。二人は、ある程度人がはけるまでベンチに座って待っていた。


 30分くらいして、人がまばらになってきたころ、美羽は退屈だったのか、うつらうつらとしている。


「お待たせしました、美羽さん、シルクさん。」


 と、いきなり声をかけられたため


「はい、私の出席番号は28番です。」


 と、美羽は思い切りおかしな返事をしてしまった。


「おいおい、何寝ぼけているんだ?シュッセキバンゴウってなんだ?」


 と、シルクに呆れられていた。美羽の顔は、真っ赤に染まっていた。


「さて、今日は依頼を受けずに、魔物討伐に言っていたとのことですが、成果はどうでしたか?」


 セリアに言われて、美羽は、魔物のドロップアイテムと魔石を『収納』スキルから取り出した。


「おお、なかなかの量ですね。お二人で討伐されたんですか?」


「いや、ほとんど美羽の収穫だ。俺は手を出していないしな。」


「おお、それはすごいですね。美羽さん、ついこの間登録したばかりなのに、これだけの量を納品できるのは、結構なスピードだと思いますよ。では、素材の買取金額ですね。

コボルトの魔石が8個で400ルクス

コボルトの牙が8個で400ルクス

コボルトの爪が3個で180ルクス

コケの魔石が5個で250ルクス

コケのモモ肉が3個で300ルクス

コケのムネ肉が5個で500ルクス

コケの羽が3個で300ルクス

ライフミントが13個で650ルクス

マナミントが10個で1000ルクス

 合計で3980ルクスですね。では、お金を準備するので少々お待ちください。」


 セリアは、代金を準備するために一度裏手のほうに下がっていった。


「はぁ、すごいですね。魔物の討伐も結構なお金になるんですね。」


「...一つ言っておくが、だれもがこんなに持ち込めるわけないからな?お前には『収納』スキルがある。普通はもってないから、どうしても持ち込む数に限りができてしまうんだよ。普通なら、今回の大体1/4くらいだろうな。」


 1日の収入が大体1000ルクスとなると、宿代が1泊大体300ルクス、食事が一食100ルクス、それ以外に雑費もあるだろう。そう考えると、駆け出しの探索者の収入は結構厳しい者なんだと、美羽はどこか他人事のように考えていた。





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