初報酬
ウリアムは、美羽の出方をうかがっていたが、美羽は、
「いいですよ。その代わり、今後もよろしくお願いしますね。」
美羽は、ウインクをしながら代金を受け取る。
「こちらこそ、一日でこれほどの数を討伐してくる探索者様です。よいつながりを持っておきたいものです。」
ウリアムも、笑顔で返す。そして、懐から一枚の書類を取り出した。
「こちらが、依頼達成の証明書です。これをクランに持っていけば、報酬が受け取れるはずです。」
美羽はそれを受け取り、ウリアムに別れを告げた。
クラン支部に戻る途中、シルクが話しかけてきた。
「美羽、さっきのやり取りだがな。」
「はい、何かダメなところありましたか?」
「うーん、だめってことでもないんだが、どうして、余分を基準外と同じ値段で売ったんだ?ほかの商人や、クランで買い取ってもらえば、もっと金になっただろ?」
シルクが質問してくる。美羽は、一度大きく深呼吸をして、
「それは、ウリアムさんに私のことを覚えてほしかったからです。確かに、お金は多いほうがいいかもしれませんが、ウリアムさんは行商人。もしかしたら、ほかの町なんかで出会うかもしれません。彼からしたら、私は多くいる探索者の一人になるわけですから、少しでも彼に恩を売っておいて、今度は助けてもらえばいい。
そんな感じに考えてましたけど、行けませんでしたか?」
美羽は、心配そうな顔でシルクを見つめる。シルクは、大きく息を吐き、
「なかなか大した先読みだな。普通の探索者たちは、そんなことは考えん。その日の稼ぎがどれだけになるかを真っ先に考える連中だからな。しかし、人のつながりを持っておく。これは、お前が、今後この世界で生きていくのにとても必要なことだろう。その考えを捨てることのないようにな。」
と、美羽の考えを誉めた。美羽は、少し微笑み、足取りを軽くしてクラン支部に向かった。
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クランに着くと、依然と同じように仕事をする人たちであふれていた。二人が列に並んで待っていると、
「あ、シルクさん、美羽さん、こちらにどうぞ。」
と、セリアが声をかけてくれた。
「悪いな。依頼を達成してきたので、その報告に来た。」
と、美羽に指示する。美羽はウリアムから預かった『依頼達成証明書』をセリアに渡した。
「......はい、確かに確認いたしました。では、これでこの依頼は達成されたので、報酬をお支払いいたします。」
と、セリアは一度裏に戻り、すぐに戻ってきた。その手には、硬貨と小瓶が乗った盆が持たれていた。
「では、こちら外来者より預かっていた報酬となります。ご確認ください。」
と、盆をカウンターに置き美羽とシルクに見せる。美羽は、その金額と小瓶を鑑定で確認し、
「はい、確かい記載されていた報酬を受け取りました。」
と、セリアに盆を返した。
「これで、依頼達成ですね。美羽さん、初めての依頼達成した感想はどうですか?」
セリアが、ニコニコ顔で聞いてくる。
「ええ、とてもうれしいです。でも、シルクさんにいろいろ教えてもらえたので、そのほうが私としてはためになりました。早く一人前になれるように頑張りますね。」
と、美羽は笑顔で返す。
「...その気持ちを忘れないで、でも、慎重に。焦って命を落とさないようにしてくださいね。」
そう言われて、二人はクラン支部を後にした。
二人は、宿に向かいながら話をしていた。
「美羽、お前には、剣術、魔法、二つの適性がある。今日は、依頼を受けてみて雰囲気を感じてほしかったが、明日以降は、お前のステータスを強化していこうと思っている。」
「と言われましても、どうしたらステータスが上がるのですか?」
シルクの方針に対して、美羽は質問を投げかける。
「まぁ、一番ストレートに言うと、レベルを上げる。これがわかりやすい。生物は、その行動をすることで経験値を得ることができる。例えば、剣を振ると、剣術スキルのレベルが上がったり、ATが上がりやすくなる。魔法を使えば、その魔法スキルが上がったり、MAが上がりやすくなる。そして、敵を倒すと、その敵が持っていた命の力を周囲の生物は吸収できる。それは、その戦闘に携わったもののみ得ることができる。たまたま近くにいたからと言って、得ることができるわけではないがな。」
「では、今日の『角ウサギ』や「ゴブリン」との戦闘でも私は経験値を得ていたということですか?」
「そういうことだ。そして、ここが重要なのだが、行動で得ることのできる経験値は、スキルを育てるがレベルが上がることはない。しかし、敵を倒して得た経験知は、レベル、スキルともに上昇する。そして、レベルを上げるまでに行った行動で、ステータスも上昇するということだ。だから、お前の今後の方針を後で聞くが、それによって、明日以降行う特訓を考えていこうと思う。」
と、シルクが話を切ったところで宿屋に到着した。二人は部屋に入ると、装備を外してラフな格好になると、食事をとりに隣に併設されている酒場に向かった。
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「ったく、酒の匂いに慣れてかないと、今後の生活耐えられんぞ。」
「そんなこと言ったって、こんなに恋アルコールの匂いなんて嗅いだことないんですよ。もう少し猶予をください。」
と、軽く言い合いしながら注文をする。美羽は、昨日と同じ『豚のステーキ』、シルクは『フレンジカウの厚切り』を注文したようだった。
「いっただきまーす。」
と、食事が到着するなり美羽は、かぶりつくように食べ始めた。
「おいおい、昨日とはずいぶん違う食べ方だな。」
肉の厚切りを一口サイズに切り分け、上品に口に運ぶシルクに言われ、
「仕方ないじゃないですか。なぜか今日はすんごくおなかがすいてるんですから。」
と、いいながらも食事の域を意を止めない美羽だった。シルクは、それを見て軽く笑いながらも食事を勧めていく。
途中、美羽は追加で『コケの唐揚げ』を注文して、それをも平らげていた。
「あ~、おなかいっぱいです!!」
と、満足そうな笑顔を浮かべていた。