6 装備お披露目
僕は、十八回目の試着でようやく女神が用意した案内役――サラから「OK」が出た。
僕も、まあまあこの服を気に入っている。というより馴染んでいる。ネイビーのアンダーシャツに赤の半袖Tシャツ。その上から、ライフジャケットのようなベスト。(このベストには、「収納魔法」という魔法が付与されていて、収納した物の重さを感じないらしい。つまり、一時的にコインロッカーに預けている感覚ということだ)下は、黒に金色のラインが入ったランニングシューズ。そして、装備屋のガラクタコーナーで見つけた見事な日本刀である。
ぶっちゃけ、この装備って僕が元の世界でいた時の普段着とそんなに変わってないんだよね...もちろん日本刀以外は。
まあ、そんなこんなで僕の初めての装備は決まった。あとはサラと合流してアルデンに向かうだけだ。それにしても、やっぱり時間かかりすぎたな。と、一人でそんなことを考えていると、サラがやってきて、「ケント様、装備類の支払いは済みましたので早速、アルデンに向けて出発しましょう。」と言った。
「いや、ちょっと待って!装備の代金を支払ったってどういうこと?確かに僕はお金を持ってないけど、さすがにそれは悪いよ。」
僕は、当たり前のように言った彼女の言葉に反論した。
「いえ、装備は〈女神〉によって用意されたお金を使いました。〈女神〉から、ケント様の装備を揃えるようにと指示されておりましたので。」
そうなのか...
「だったらいいけど...」
まあ、〈女神〉の加護ならありがたく受け取っておく。
その時、僕の持っているスマホから、通知音が流れた。それを見ると、『「装備」が更新されました』と表示されていた。僕は、そのタブを押した。
すると、装備を選ぶ前に〈女神〉に言われてインストールした〈ステータス〉のアプリが表示された。その内容は、僕がこの世界に転生されてすぐに〈女神〉から送られてきた『各種情報一覧』と同じだった。そして、その中の『レベル』と『HP』の間に「NEW」と表示されていた。そして、その『NEW』の下に『装備』の情報が載っていた。よく見ると他の能力とかも上がってるんですけど...
『ステータス
名前:ケント
レベル:1
「NEW」
装備:初級装備R
武器:秘剣「鬼丸」
HP:40
攻撃:65+100
防御:70+5
素早さ:10+50
知力:80
魔力:50
運:75
特技:なし
魔法:なし』
ちょっと!攻撃力と素早さすごく上がってるんですけど!てか、秘剣ってなに?絶対それのせいですよね!?
あと、さりげなく僕の装備だけど「初級装備R」って、結局決まってた種類の中から選択しただけか...
三時間もかける意味なかったじゃん。はぁ、と軽い溜息をついて話を切り替える。
「ねえ、秘剣って何かわかる?」
彼女なら絶対に何か知っているだろうという期待を胸に「秘剣」について尋ねた。
「もちろんです。現在、ガルナ王国の東に存在する魔王は三千年ほど昔、この世界を滅ぼそうとしました。そのため、世界中の勇者たちが魔王軍と戦い、多くの人たちが犠牲になり、魔王軍と人類との一進一退の戦いは約二百年にも及びました。そんな時、どこからともなく現れた勇者の一団がこれを退け、封印しました。その時、彼らが使っていた武器に魂が宿り、秘剣などと呼ばれるようになりました。」
「三千年も!?」
僕は、彼女の説明に対して、というより「三千年」というワードに対してとても驚いた。
「はい。秘剣にはそれぞれ特殊な魔法がかけられており、劣化することはありません。そして、ケント様の所有している『鬼丸』はその一団のリーダーであった人物が使用していたものです。」
「魔王を封印した勇者団のリーダーかぁ~」
僕は、少し不安になりながらも「鬼丸」の存在に興味がわいてきた。だって僕、男の子だもん。男の子は一度は夢を見るだろう。夢を見るだろう。大事なことだから二回言いました!
さあ。と仕切りなおし、「それでは、そろそろアルデンへ向かいましょう。」とサラが言った。
「そうだね。」
と一言だけ返して、僕はこの先訪れるであろう様々なイベントに立ち向かうべく、空に向かって「よしっ!」と気合を入れた。
僕の冒険はここから始まる。