5 初めてのお買い物
僕は、〈女神〉が用意した案内役であるサラに促されるまま、この『始まりの村』でおそらく唯一の武器屋に来た。この流れからして、僕は初級装備を身に着けることになると思う。しかし、僕はお金なんか持っていない。そもそも、この世界の通貨も知らない。そんな僕には目もくれずに、僕を入り口の前にほったらかして、一人せっせと僕の装備を選んでくれている。
「これなんてどうですか?」
そういって、彼女が選んできたのは真っ黒のパーカー...いや、ローブのようなものだった。
「真っ黒...これって、僕に似合ってるの?」
僕が逆に聞き返す。
「はい。ケント様は、魔法属性に長けているようなので、魔法を発動させやすい効果があるこのローブが一番合っていると思います。」
見た目じゃなくて、効果の方で似合ってるってことね...いや、わかってたし!
それに、〈女神〉が僕に送ってきた僕のストレージにも『魔法』の欄があった。でも、無になっていたような...
「この世界に魔法があることは知ってるけど、僕も魔法を使えるの?」
「もちろんです。」
「でも、僕は使い方なって知らないし、魔法という物自体どんな効果があるのかもわからないんだけど...」
「そうですか。魔法は、固有魔法と汎用魔法があります。固有魔法は特定の個人にしか使えず、その逆に汎用魔法は誰にでも使えます。そして、魔法を得意とする方に師事するか、魔導書と呼ばれる魔法について書かれた書物を読むことによって、魔法を習得することが出来ます。」
そうか、やっぱり魔法というだけあって、普通には使えないんだな。
「しかし、今魔法が使えないとなるとケント様の装備を考え直さないといけませんね――」
そう言いながら、彼女はまた店の奥へと消えていった。
彼女の、装備に対する執念はすごいな...
そう思いながら僕も、装備を探していると、『武器』と書かれたコーナーがあった。そこには、槍・刀・銃など、前の世界とあまり変わらないものがたくさん置いてあった。その中から、僕は一つの武器を取り出した。反り返った白刃に金色の鍔、黒にうっすらと走る炎が描かれた鞘。そう、日本刀である。これは、いい刀だな。と、心の中でつぶやいた。(まあ、刀について全然詳しくないんだけどね...)
そんなこんなで、僕が武器を選び終えて、元いた入り口の前まで戻ると、彼女が両手にたくさんの甲冑やらローブやらを持って待っていた。よくこんなに持てるな。ていうか、これ全部着るの?
そんなこんなで、三時間ほどの試着を終え、僕はついに新しい装備を手に入れた。