3 僕の能力
僕のスマホがまた震えた。〈女神〉からの着信である。僕は、しぶしぶ通話ボタンを押した。
「ヤッホー!私、私!思い出してくれた?」
ん?デジャブか、デジャブなのか?なんだか二度目のような気が...
「はい、なんとなくですが...」
「そう、なら心配ないね!それじゃあ、あなたの基本アベレージとステータスの一覧表送るね!」
そう言って、僕の元にまた一通のメールが届いた。
『各種情報一覧
名前:ケント
レベル:1
HP:40
攻撃:65
防御:70
素早さ:10
知力:80
魔力:50
運:75
特技:なし
魔法:なし 』
ほとんどの能力が半分を上回ってる。これって、喜べばいいのか悲しめばいいのか...
そうしている間に、本日三度目の着信が入った。
「ヤッホー!メール見てくれたかな?」
「すみませんが、いい加減普通に会話できませんか?それとも、あなたまで能力が逆になりましたか?」
「ひっ、ひどい...ぐすん。」
何が、「ぐすん」だよ。と、言いたくなったが、冷静に対処することに決めた。
「そんなことより、僕のステータスについて、何点か疑問があるのですが。」
「そんなことよりって...まあ、いいわ。それで疑問って?」
「まず、HPについてですが、この世界って普通の世界ですよね?それが何でそんな数値まで表示されているのですか?」
「あれ、言ってなかったっけ?そこ、ゲームの中だよ!」
・・・はあ?
「ちょっと待って?あなた、なんだと思って今まで話してたの?」
「ふつうの、前の世界にとっては別の世界って意味だと思っていましたが。」
「じゃあ、今言ったから。そこゲームの世界だよ!それでいい?あと、HPが全部なくなったらペナルティーがあるか――」
思わず切ってしまった。そうか、ゲームの世界か。どうりでおかしいと思った。
だって、『始まりの村』なんて普通の世界じゃ絶対に見つからないし、こんなに長時間電話していても誰一人として、この村に来ない。それどころか、村の人と目すら合わない。
まあ、つべこべ言ってても仕方ない。おそらく、この始まりの村に入ったら何かしらあるだろうし...
そう思いながら、僕は『始まりの村』と書かれた看板の前を通って村への、そして、僕の新たな人生への第一歩を踏み出した。