1 転生します
背が高く黒髪の凛とした顔立ちの少年は、いつものように夕食の買い出しに駆り出されていた。家を出てしばらく歩いたところにある大きな交差点を歩いている。
そんな彼があと数十秒後に死ぬということをこの時の少年はまだ知る由もない。
「明日から俺も高校生だな、何のクラブに入ろうかな?やっぱり陸上かな?」そういいながら歩いていると、目の前にある大通りの歩行者専用の信号が点滅しているのが目に入った。
「やばっ、間に合え!」
俺は中学時代、地区優勝を果たしたこの自慢の走りで信号を渡りきる...直前に気が付いた。
「あっ、死んだ...」
ドンっ!!
薄れゆく意識の中、俺はまるで流れ星に向かって言うように祈った。「異世界に行きたい、最強になりたい、魔法使いたい、あとかわいい...」そこで俺は力尽きた。最後まで言わせてくれよ。と思いながら...
俺は目をあけても、何も見えない真っ暗な世界が続いている。ここはどこだろう?俺は、死んだのか?様々な疑問が脳裏をよぎっていく。
「あなたはもう一度、別の世界の住人として生まれ変わることを望みますか?」
天使のように澄んだ声がダイレクトで俺の頭の中に呼び掛けてきた。来たーーー!絶対これ、あれだよね!あれしかないよね!
そんなの、答えは決まってるよ。「はい」しかないでしょ!
「それでは、あなたを異世界へ転生します。異世界へ転生させるにあたり、一つだけ問題が生じます。」
「問題?」
「はい。それは、あなたの基本アベレージが現在とは真逆になるということです。」
「えっと...それは例えば、普段からテストで100点ばかり取ってる人は、転生されれば0しか取れないっていうこと?」
「はい。その例えはいかがなものかと思いますが原理としてはそうなります。25点の人は75点、40点の人は60点です。しかし、50点の人は変わらず50点です。」
まじか!これほどまでにこの「まじか」という言葉が使いやすいと思ったことはない。
「そのアベレージは増えることはないの?」
「それについては、現実世界と同じく学力は勉強することによって上がりますし、体力は鍛えることによって上がります。」
おお、なんかめんどくさいけど、上がらないよりはましか。
「わかった。じゃあ、パパッと転生してくれ!」
「かしこまりました。あと...」
「えっ、まだあるの?」
「いえっ、それじゃあ最後にいくつかの選択肢から転生する世界を選択していただきます。」
結局あるんじゃん。まあ、いいけど。それにしても転生する街を選べるってのはありがたい。
「それじゃあ、こちらをタップしてください。」
そう言って差し出されたのは、石板―—じゃなくて『タブレット』だった。ハイテクすぎるだろ!?
とりあえず、『タップ』と表示されたボタンを押す。
すると、[ルーレット スタート]と言って、人生ゲームのルーレットと全く同じものが画面上で回り始めた。
「さあ、もう一度タップしてください!」
なにそのテンション、あとルーレットに表示された数字。絶対、何かのランクだよね!もうなんでもいい...
俺は、再び『タップ』を押した。
俺の目の前にあるルーレットは、カチカチと音を立てながら止まった。
「さあ決まりました。あなたの転生される世界は...三番です!!」