桜舞う季節に
この小説にはBLが含まれています。
二年に上がって、保健室登校が決定して、遥君と知り合って仲良くなってしばらくして−−−四月の中旬。
私は遥君に遊びの予定という名のデートに誘ってみることにした。遥君が対人恐怖症って知ってても、私は遥君とデートをしたい。だから誘ってみることにした。
「ね、お花見行かない?」
課題もそこそこにして、休憩をしている遥君に、そう持ちかけた。
遥君はポッキーを口に加えたまま固まってしまった。
予想通りねの反応で少し傷つく。
そんなに固まらなくてもいいじゃんか。
「花見…ですか?」
「うん!お弁当持って、二人で!!」
期待の眼差しで見つめると、遥君はなぜか頬を赤くして頷いてくれた。
私は嬉しくて満面の笑顔を浮かべる。
「遥君とお花見〜♪♪」
上機嫌に笑いながら携帯でレシピを見る。
「なに見ているんですか?」
「ん?お弁当のレシピ」
私は色鮮やかなお弁当と作り方が載っているレシピを遥君に見せた。
「美味しそうですね」
遥君の言葉に、私は頷く。
私はその日、遙君と待ち合わせ場所と時間を決め、たわいもない話しをして学校を終えた。
*
週末、雲一つない晴天。
私は上機嫌のままお弁当を二つ作り、そして翠先生と紫吟先生を起こした。
服を一緒に決めてくれるって約束したから。
「紫吟先生、起きてー」
ゆさゆさと紫吟先生の身体を揺さぶる。
だけど起きない。
私は
「むー…」と唸る。
こうなったら最後の手段。
「紫吟先生、紫吟先生、戯飴先生が紫吟先生の為に家まで来てるよ」
「戯飴がですか?!」
わぉ。起きちゃったよこの先生。
私はよっぽど戯飴先生が好きなんだなぁと判断した。
ちなみに戯飴先生っていうのは、空手や柔道、そして合気道などを教えてくれる先生でクールでカッコイイんだよ。
私は紫吟先生に笑顔を向ける。
「起きてくれなかったから、嘘ついた」
紫吟先生は苦笑。
「あ、おはようございます。葵」
「おはよう♪翠先生起こしに行ってくるね!」
私は続いて翠先生の部屋に行った。
そして絶句。
なんで…どうして―――。
「どうして布団が二つなのに一つの布団で幸せそうに翠先生と珀羅先生が寝てるの?!というか、なんで珀羅先生がいるの?!んでもって私は突っ込みじゃない!!」
なんか朝から疲れた。
私が大声で突っ込みを入れたからか、翠先生と珀羅先生か起きた。
珀羅先生、かなり眠たそう。
翠先生の話しでは確か、珀羅先生は夜行性だったはず。
私は二人に挨拶をし、疑問を聞いた。
「どうして珀羅先生がいるの?」
「昨日の夜中に来た…」
は?夜中に?
私は翠先生を見る。
翠先生のパジャマが着崩され、鎖骨や首筋には何やら赤い……。
「はははは珀羅!!!!」
翠先生が鎖骨などにある赤い痕に気づき、顔を真っ赤にさせる。
私は無言で二人がいる部屋を後にした。
リビングには紫吟先生がすでに朝食を食べていた。
「翠〜、ハイネックを着ましょうね」
わざわざ二人がいる部屋に向けてそう言う紫吟先生。
翠先生が顔を真っ赤にしている姿が想像できるのが怖い。
「ごちそうさまでした。さて、服を決めるんでしたよね」
私は頷くと紫吟先生を部屋に入れた。
そして可愛いらしい色や大人っぽい色の服を出し、下はスカートやジーパン、そしてレディースを出した。
「どうしよっか…」
初めてのデートだからお洒落して遙君に褒めて欲しいんだけど…どうしよう…。
「葵、可愛いらしい服を着てみたらどうですか?」
「わかった」
私は黒いハイネックを着て、上にピンク色で袖が広がっていて黒いリボンがあるワンピースを着て、下に黒いレディースを履いた。
「し…紫吟先生…どうかな…?」
緊張しながら紫吟先生の前に立つ。
紫吟先生は
「可愛いですよ」と言ってくれた。
私はお礼を言うと、鏡の前で後ろ髪を一つに束ね、赤い蝶がついたピンで止める。 荷物をまとめた頃に遙君が迎えに来てくれた。
素晴らしいタイミングだね。
「おはよう!えと、どうかな…?」
恐る恐る聞くと、遙君は笑顔で
「可愛いですよ」
こう言ってくれた。
私が遙君の自転車の後ろに横向きで座ると、遙君が自転車をこいだ。
春の風が心地よくて、私は思わず微笑む。
「遙君、カッコイイね」
私がそう言うと、遙君は嬉しそうに
「ありがとうございます♪」と言った。
しばらくすると大きな公園に着いた。
人が多く、同じクラスの人達が何人かいるけど、私は気にせず遙君と一緒に座れそうな所を探す。
するといきなり声をかけられた。
「葵先輩に遙君!」
「葵ちゃんじゃない!」
振り返ると、そこには空ちゃんと乱水ちゃん。
「なになに!デート?!」
「え!マジ?!葵先輩やっるー♪」
きゃいきゃいとはしゃぐ二人。
て…テンション高いような……。
まぁ、楽しそうだからいいけど。
私は二人に別れを告げると適当な場所に座った。
「んー!気持ち良い〜!!」
風で舞う桜の花びらが綺麗で、私は上機嫌に笑う。
春は好き。だって桜が舞う姿が好きだから。
私は遙君にお弁当を渡す。
「はい♪頑張って作ったよ!」
ニコニコと笑いながら渡すと、遙君も笑いながら嬉しそうに受け取ってくれた。
遙君はお弁当のフタを開け、まわりに塩・コショウで味付けしたキャベツがついている目玉焼きを口に運ぶ。
私はうるさい心臓をどうにかして落ち着かせようと必死。
だって遙君に心臓の音が聞こえそうなんだもん。
遙君は口を開く。
まずいのかな…それとも美味しいのかな……。
「美味しいですよ!」
ニッコリと、満面の笑顔を浮かべながら遙君はそう言った。
「ほ…ほんと?」
「はい!ほら」
遙君は私の分の目玉焼きを食べやすいように切り、私の口に運んだ。
私は顔を赤くしながら食べる。
「美味しいでしょう?」
無言で頷く私。
うー。恥ずかしいじゃないか…。
「葵、可愛いですよ」
胸が、高鳴る。
‘葵先輩’ではなく、‘葵’と呼んでくれるだけで嬉しいだなんて。
私は無言のままお弁当を食べる。
恥ずかしくて、嬉しくて、何も言えない。
私と遙君が食べ終わると、遙君が私の髪で弄ぶ。
「葵の髪、綺麗で好きですよ」
ちゅっと、髪に軽く口づける遙君。
やばい…恥ずかしい!!
「葵――」
いきなり、抱きしめられた。
優しく、だけども力強く。
「ょう…くん…?」
遙君は耳元で囁いた。
私はその言葉に頷くしかなかった。
―――『俺が葵を護るから……』
桜の花びらが、私たちを優しく覆い囲むかの様に、大きく舞った―――。
私にしては珍しい、小説ですね。普段は、こういうのは書きませんから。シリアスばっかりですね(笑)さて、次はこの子たちの連載でも編集して書き上げましょうかね。