リグルス endB する
国に有益な情報を持ち帰らなえれば、私がここにいる意味がない気がする。
「あなたの出身は?」
「プルテノだが、もう住んではいない。吾輩は放蕩息子というやつでな」
「言われてみれば、そんな気はするわ」
「それとフランポーネにコルネという妹がいるのだが、あいつの作るパンはうまいぞ」
もしかするとあのパンは妹さんのいるお店で買ってきたもの?
「ここはそれなりにいい土地だ。薬品の大敵である日光もなく格安」
彼のいう格安と私の想像するものが同じではないだろうけれど、プルテノが出身なのよね?
「研究職は物件の値段を気にするほどお金がかかるの?
あのお金持ちの国にいたのに、金銭感覚は庶民的なのね」
「金がなくなれば追い出されるだろう」
「ああ、放蕩息子……」
会話が続かず結局家族構成は妹が一人いるとしか掴めなかった。
このことは帰ってもオルヴェンズには言わないほうがいい。
今のリグルスの悪事と関係ないパン屋のお嬢さんだもの。
「実は言いそびれていたことがあるが、これは吾輩の独断だ」
「そうなの……?」
依頼主がいて、彼は私に用はないのだと思っていた。
「依頼人も仲間もいないが、狙うものが他にいるのだ」
彼は新聞を私に見せて、指をさしている。
「プルテノの銀行?」
「これ以上は知らないほうが精神衛生上にいい。
そしてあの国の生まれでない者には体質上で理解できないこともある」
「……それは、私がお金持ちになってプルテノ人として暮らせればわかる?」
「いいや、金銭であの国の民にはなれない。伝説上の吸血鬼やら妖精エルフのように遺伝子が根本的に違うんだ」
「リグルスは普通の髪の毛ね。でもプルテノ出身者ならその遺伝子があるの?」
「いいや、家族で父が城の仕事に就いていた時期に王の保護で住んでいただけで正式な国民ではなかった」
こちらに手のひらを見せて、一般的な人の手だろうと証明する。
プルテノの人の手など見たことがないからそう言われても反応に困る。
「あの遺伝子があれば金に困ることはないが、正式な者は国からは暗殺など外的要因で出られないからな」
「お金持ちだものね……」
私はその意味をよくある王族の権利争いのようなものだと考えていた。
それと私になんの関係……やはりオルヴェンズへの宣戦布告の一歩?
「銀行と私の関係がわからないわ。皇帝が銀行と関係があるの?」
「皇帝に喧嘩を売るつもりは毛頭ないな。落ちぶれ貴族令嬢が城にいるのが不思議なくらいだ」
混乱してきたわ。隠す必要がないのだから、本当に関係がなかったということね。
「私と銀行は関係ある?」
「yes」
「銀行とアンヴァートに関係がある?」
「関係ない」
「プルテノの王と私は関係ある?」
「関係ない」
「なら銀行だけということ」
「なんだろう。人狼ゲームやめてもらっていいか?」
【bakery はぐらかし】




