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フランムendC-2 謝る


「ごめんなさい!」


私は気絶させたフランムに謝り、せめて布をかけてやろうと近づいた。


「……油断し過ぎだろう」


狸寝入りしていたフランムに右手で左手首を掴まれてしまう。


「いやっ!」


彼が起き上がる前に幸い自由な右手でそれを払い除けて立ち上がる。


「……か弱い姫と思っていたが、それなりに反発するのだな」

「フランム様、いいえ貴方は私を使いアンヴァート皇帝を陥れようとする敵……」


近づいた私も馬鹿だったが、彼はわざと気絶したフリをして私の反応を試した。

人の良心を利用した最低の行為に、もはや同情の余地などないらしい。


「ドアを開けたままなど不用心だな……」


リグルスはフランムがいることに気がついていないのか、そのまま扉の施錠をした。


「これでお前は逃げられないな……」


このまま、ここに留まっていては拉致があかない。


「近づいたらここから飛び降りるわ!」


割らなかったほうの窓を開き、背から落ちる体勢をとる。


「……馬鹿な真似は止めろ」

「私をいたぶるなり、殺すなり好きにすればいい!」


本当は飛び降りる気はないが、気が狂ったような演技をする。


「きゃ!!」


なにやら爆発音がして、城が軽く地響きする。驚いて、掴まっていた手を滑らせた。


「演技が下手だな」

「あ、ありがとう?」


彼に手を引かれ、助かってしまった。


「助けないほうがよかったか」


私はさっきから演技とはいえ殺せと言ったりお礼を言ったり支離滅裂よね。


「……というか貴方、私を捕まえて何をしたいの」

「……」


フランムはオルヴェンズにプライドを穢されて腹を立てたと言っていた。

それがどうも、胡散臭いのである。


「私を使ってオルヴェンズに仕返ししたいのなら捕えるより彼の目の前で殺すくらいしないと意味がないわ」


――なぜ私がそんな提案をしているのだろう。それにとても余計なことを言った気がする。


「この際だから話してやろう」

「なにを?」


この口ぶりだとどうやら私の聞くべき話らしい。


「俺はフランムではないんだ」

「え?」


そう言われて目の前の相手が何者なのかわからなくなる。


「つまりそれはどういうこと?」

「俺の名はフレイム=ハーゲンティ」


あの豹変すらまだのみ込めていないのに、その上更に彼がフランムではない事など予想もしていなかった。


「それでは私とはじめて会った純朴なフランム=ハーゲンティは貴方と別にいるのね」


こちらの悪人と純粋な彼が同一人物なんて、やっぱりおかしいもの。


「いいや……城の菓子は美味かったな」

「じゃあフランムは存在しない偽りの貴方の名なのね」


彼は二つの人格を意図して使い分けしている。そういうことなのだろう。


「いいやフランムという人物は実在する。家名は違うが、俺にとても良く似た顔だ」


そちらには会っていないのに、ややこしい話をされた。


「更に言えばオルヴェンズ皇帝に恨みがあるのは俺じゃない」

「じゃあフレイム、貴方がフランムの名を語り私に縁談を持ちかけオルヴェンズが破談にしたのになぜ恨みがないの?」


知りたいことだけを聞いてみた。


「契約において名を明かせないがある男が皇帝オルヴェンズを長年恨んでその陥落を目論みあたためられた計画をとうとう実行した」


私怨なら戦でオルヴェンズのせいで死にかけたか、彼の即位の為に殺された者が生きていたとか?


「皇帝オルヴェンズは貴女に縁談を持ちかけられると破談にして楽しむ悪癖があると契約者に聞いた」

「つまり破談になると知りながら、大義名分を自然に偽装したのね?」


ひとまずフレイムが私に手だししない意味がわかった。


「というか……!」


オルヴェンズは今まで私の縁談をわざと破談にして楽しんでいたなんて、ふつふつと怒りがわいてきた。


「なぜいきなり険しい顔に……?」


これはフレイムからしたらくだらない話なので、嘘をつく意味がない。

だから本当なのだと断言できる。


「ちょっとオルヴェンズに文句を言いたくなったの!」

「……は?」


今の今まで私が結婚できなかった理由がなんとも腹立たしくて苛立ちがおさえられないのだ。


「絶対に生きて帰ってやるんだから!!」



【capacity 淑女の顔も100まで】

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