フランムendC-1 死んだふり
――私は死んだフリをすることにした。
「きゃあああああああああ」
身に付けていたブローチを怪我をしないようにカーテンごしに窓に叩きつけて割る。
扉近くで倒れたフリをして、フランムならば隙をついて逃げよう。
「なにごとだ!?」
フランムが倒れた私にかけよる。鳩尾へ拳を叩き込んだ。
「う……」
◆倒れているがどうしよう?
→[逃げる]
[謝る]
その場に倒れたことを確認し、私は城内を走った。
リグルスの声がしているが、逃げ場などない。
「こっちだよ!」
誰かが私の手を引いて森の外へ走った。
ようやく抜け出すとそこには馬車があり、誰かと顔を見る。
「フランム様!?」
私がさっき倒したはずなのに、しかもなぜ閉じ込めた当人に城から連れ出されているの?
「説明は後でします!」
「え、ええ」
馬車に乗って、彼から話を聞くことにする。
まず私を閉じ込めた男フランムではないのだといわれた。
「どういうことですか?」
「えっと……最近フィエールがグリテアを侵攻するという噂話がありましたよね?」
「ええ」
「あれを流したのは僕の双子の兄、フレイムなんです」
「それって……」
――つまり、私を閉じ込めたフランムは実は双子のフレイムだった?
「お察しの通りです」
まさか本によくある話を体験するとは思わなかった。
「改めて、私はフランム=プリパルドです」
「プリパルド……もしかして、グリテアの公爵家では?」
ジュプス大国のブリリアント家、ウィラネス公国のイエローケイク家、ヴィサナス王国のキノエビアン家に並ぶほど知名度のある公爵家の一つだ。
「兄はアンヴァート陛下が貴女の婚約者を探していたのを利用したのでしょう」
「……つまり、フランム=ハーゲンティ様は貴方ではないんですか?」
「はい、今日がはじめましてです」
「ええ……!?」
――あの純朴そうな彼はフレイムの演技ではじめから存在しないのだと知る。
「此度の件、グリテア及びプリパルド家の協力に感謝しよう」
「助けていただき、ありがとうございました」
あれから私はアンヴァート城へ無事に帰還できた。
「……貴女は可愛い方ですね」
「そ、そんな!」
私は気恥ずかしくなり、城内へ入った。
「アンヴァート陛下、私はいつでもお話を待っております」
「フン……」
一体なにを話しているのかしら。
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